いきものログ

ムツゴロウ

脊椎動物門   硬骨魚綱   スズキ目   ハゼ科
ムツゴロウ Boleophthalmus pectinirostris
分布
有明海・八代海
朝鮮半島・中国本土・台湾・香港
ランク
絶滅危惧IB類(EN)
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 ムツゴロウは、国内では九州の有明海(諫早湾北岸の金崎町~宇土半島戸口町)と八代海(不知火町二本松~球磨川河口)の海岸や干潟に生息する、ハゼの仲間です。ひょうきんな顔つきや、干潮時に海水の引いた干潟で全身泥まみれになりながら、胸ビレをまるで肢のように使って前進する姿は非常にユーモラスで、テレビ番組や雑誌等でも取り上げられることも多く、比較的有名な魚類といえるでしょう。
 大きさは約14cmで、サイズに雌雄差はありません。体は全体に暗灰色で、緑青色の斑点を全身に散布します。眼は頭頂部に突出し、口は著しく下方についています。
 平坦で遠浅の干潟を好み、河口域にも生息しています。水陸両方で生活を送り、高潮時は泥中の巣孔に潜み、干潮時には干潟上で活動します。巣孔の周りには、オスメス共に縄張りを作ることが知られています。食物は、主に干潟の表面部分に付着している珪藻類羽状目です。産卵期は5~7月で、オスによる求愛ジャンプと呼ばれる行動と、メスの徘徊行動が見られます。産卵は泥中に掘られた横穴状産卵室の天井面に行われ、約1週間で孵化します。稚魚は河川感潮域で過ごし、約1ヶ月で干潟に定着します。生後約2年で成熟します。
 かつて国内最大級の生息地のひとつであった諫早湾奥部は、干拓事業により湾が閉め切られて干潟が消失し、ムツゴロウ個体群も絶滅したと考えられています。一方、佐賀県では漁獲規制が行われるなど保護対策が講じられていて、有明海唯一の禁猟区である六角川河口域では生息密度が非常に高く、保護事業の効果が上がっています。

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