評価分科会名: 爬虫類・両生類分科会
1. 判定対象種情報 日本固有
| ⽬名 | 有尾目 | 科名 | イモリ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Caudata | Family | Salamandridae |
| 和名 | オキナワイボイモリ | ||
| 学名 | Echinotriton andersoni (Boulenger, 1892) | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧ⅠB類(EN) 判定基準: B1ab
| 基準A: ― | 基準B: EN | 基準C: ― | 基準D: ― | 基準E: ― |
B1.出現範囲が5000 km²未満であると推定されるほか、次の兆候が見られる。 a) 生息地が過度に分断されているか、5以下の地点に限定されている。 【過度に分断】 沖縄島の生息地は中北部と南部に分断されているほか、瀬底島、渡嘉敷島の生息地も隔離されている。特に沖縄島南部では、生息地点も道路やゴルフ場、住宅地などにより過度に分断された状態にある。 【地点数】5地点以下 b) 出現範囲、生息地面積、生息地の質、生息地点数、成熟個体数のいずれかに継続的な減少が推定・予測される。 【判断理由】 沖縄島南部では、最近ではまとまって個体数がみられる地点は、極めて狭い範囲である。そうした生息地も宅地開発、道路建設で徐々に減少しつつある。それ以外の地域でも、生息地の破壊や路上での轢死が多く、個体数の減少が続いていると考えられる。
3. 概要
沖縄島、瀬底島、渡嘉敷島の平野部から山地にかけて分布する。アマミイボイモリが独立種として分割されたことに伴い、沖縄諸島のみに分布する種となり、混乱を避けるためにオキナワイボイモリという和名が提唱された。12月頃に繁殖期が始まって、精包の授受を陸上で行い、2月から5月に水際の陸上に産卵する。現在は那覇を中心とする市街地近くでは分布の記録がないが、過去には分布域が連続していた可能性もある。存続に影響する大きな要因は、宅地開発、道路整備、ダムや河川改修、森林伐採による生息環境の悪化と考えられ、良好な生息環境に道路ができることに起きる轢死も存続を脅かす要因になっている。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
全長は120~210 mm、頭胴長57~94 mm。背面、腹面、側面の基色は、黒色で体背面の肋骨末端の突起部分に小さいがよく目立つ赤色から濃い褐色の斑点をもつ。尾の腹面部、総排出孔、前後肢の掌も赤褐色を呈する。幼生は、孵化した時点から灰色の基色に黒斑をもち、頭部は丸身を帯び沖縄諸島で同所的に分布するオキナワシリケンイモリの幼生よりも大型になり、体型も太い。変態が近づくと、上陸個体の体色に近づき、体全体の大部分が黒色になる。
【生活史】
2月から5月に平野の湿地や池、手掘りの水路、山地の池や水路、水たまりなどの水際の陸上に産卵する。多くの場合、卵は落ち葉や土壌の下に隠された状態で発見されるが、時として遮蔽されずむき出しの状態で見つかることもある。ただし、卵表面は粘着性が高く、多くの場合、土が付着しており、卵の外からはっきりと胚を確認することは難しい。孵化まで1か月はかからない。孵化した幼生は降雨時などに自力で水場にたどり着く。多くの地域では夏ごろまでに変態を完了する。10月ごろまで幼生がみられる地域もある。上陸した幼体は数年をかけて成熟サイズに至ると考えられる。12月ごろには繁殖期が始まり、徘徊する雄を見かける頻度が高くなる。精包の授受も陸上で行われる。
【生息・生育環境】
平野部から山地の畑地、公園、森林などのさまざまな環境に生息するが、いずれの場所でも産卵場所として利用する水場が近くにある。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_低標高地】森林,草地,田地・畑地,湿地・湿原・細流,ため池・池沼 【陸域_平地部】森林,草地,田地・畑地,湿地・湿原 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (1)奥山自然地域,(2)里地里山・田園地域,(7)島嶼地域 |
【分布域】
沖縄諸島の沖縄島、瀬底島、渡嘉敷島の平野部から山地にかけて分布する。これまで絶滅した地域の確かな情報はないが、沖縄島ではその分布域が中北部と南部のごく一部地域に限られており、那覇を中心とする市街地近くでは本種の分布の記録はない。過去には、分布域が連続していた可能性もある。沖縄島南部、渡嘉敷島での生息密度は低いのに対して、沖縄島北部の生息密度は比較的高い。瀬底島では1990年ごろまでは高密度で分布していたようであるが、主要な産卵場所がコンクリートで固められたことなどにより、現在の密度はあまり高くないと思われる。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
過去には、沖縄島南部でもより多くの地点で発見されているが、現在、過去に記録のあった場所でも長期間見つかっていない地点が多くある。沖縄島南部での減少には、生息環境の悪化が関係している可能性が高く、那覇に近接するため、宅地開発や大規模な道路の建設で、生息地が減少していると考えられる。沖縄島北部でも道路での轢死が頻繁に確認されており、過去に大量の轢死体が発見されていた地域で現在発見が困難になっている地点も知られている。
【生息・生育地の現況】
大規模な幹線道路、林道の建設、宅地開発、大規模施設の建設に伴い、生息場所となっていた環境が破壊された場所も多い道路建設や観光地としての公園の整備が本種の生息環境を破壊している可能もある。沖縄島中北部では、生息地が道路に隣接する地域が多く、繁殖期になると多くの個体が轢死している。
【個体数の現況】
沖縄島南部、渡嘉敷島はもともと生息個体数が少ない。沖縄島南部では、さらに開発の影響で、近年の発見個体数は極めて少なく、安定して生息が確認されている場所は非常に狭い限られた地域である。瀬底島でもこの30年で個体数が激減していると思われる。沖縄島中北部では、現在でも比較的高密度に生息している地域が多く残されているが、生息環境は年々悪化しており、また路上での轢死が頻繁に起きている。
存続を脅かす要因
最も存続に対して影響の大きな要因は、宅地開発、道路整備、ダムや河川改修、森林伐採による生息環境の悪化と考えられる。さらに良好な生息環境に道路ができることに起きる轢死が本種の存続を脅かす要因になっている。
| 要因の区分 | (過去) | 森林伐採,圃場整備,草地開発,土地造成,交通インフラ建設,交通事故 |
|---|---|---|
| (現在) | 森林伐採,圃場整備,草地開発,土地造成,交通インフラ建設,交通事故 |
特記事項
長い間、沖縄県と鹿児島県の個体群は単一種イボイモリEchinotriton andersoniと扱われてきたが、両者の遺伝的、形態学的差異が顕著であることを根拠に、2022年に鹿児島県の個体群は別種アマミイボイモリEchinotriton raffaelliiとして分けられた。これに伴い、狭義Echinotriton andersoni は沖縄県の固有種となり、また和名も変更された。沖縄県の天然記念物に指定されている。比較的最近分類変更があっため、地方自治体のレッドリストや保護に係る法令指定、各種文献等では、分類変更前のタクソン(広義イボイモリ)として扱われている場合があることに注意が必要。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | イボイモリ | Echinotriton andersoni | VU |
| 第4次 2019 | イボイモリ | Echinotriton andersoni | VU |
| 第4次 2018 | イボイモリ | Echinotriton andersoni | VU |
| 第4次 2017 | イボイモリ | Echinotriton andersoni | VU |
| 第4次 2015 | イボイモリ | Echinotriton andersoni | VU |
| 第4次 | イボイモリ | Echinotriton andersoni | VU |
| 第3次 | イボイモリ | Echinotriton andersoni | VU |
| 第2次 | イボイモリ | Echinotriton andersoni | VU |
| 第1次 | イボイモリ | Echinotriton andersoni | R |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【沖縄県】絶滅危惧Ⅱ類(VU)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
国内希少野生動植物種
5. 参考⽂献
Dufresnes, C. and A. Hernandez, 2022, Towards completing the crocodile newts’ puzzle with all-inclusive phylogeographic resources. Zool. J. Linn. Soc., zlac038. Honda, M., M. Matsui, A. Tominaga, H. Ota, and S. Tanaka, 2012. Phylogeny and biogeography of the Anderson’s crocodile newt, Echinotriton andersoni (Amphibia: Caudata), as revealed by mitochondrial DNA sequences. Molecular Phylogenetics and Evolution, 65 (2): 642-653. Igawa, T., H. Sugawara, M. Honda, A. Tominaga,S. Oumi, S. Katsuren, H. Ota, M. Matsui, M, Sumida, 2020. Detecting inter- and intra-island genetic diversity: population structure of the endangered crocodile newt, Echinotriton andersoni, in the Ryukyus. Conservation Genetics, 21: 13 -26. 富永篤,2019.消滅しつつあるイボイモリの生息地.九州両生爬虫類研究会(編),九州・奄美・沖縄の両生爬虫類 カエルやヘビのことをもっと知ろう,pp. 200-201.東海大学出版部,平塚. 富永篤・奥代遼,2016.イボイモリをとりまく状況と保全にむけた課題.爬虫両棲類学会報,2016 (2): 50-56. 富永篤・松井正文,2021.イボイモリ.日本爬虫両棲類学会(編),新日本両生爬虫類図鑑,pp. 29-30.サンライズ出版,彦根. 富永篤,本多正尚,太田英利. 2011. 渡嘉敷島のイボイモリ(両生綱: 有尾目)の分布について.AKAMATA, 22: 12-14.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Echinotriton andersoni has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Echinotriton andersoni is listed as EN under criteria B1ab.
B1. Extent of occurrence estimated to be less than 5,000 km², and estimates indicating at least two of a-c: a. Severely fragmented or known to exist at five or fewer locations. b. Continuing decline, observed, inferred or projected, in any of the following: (i) extent of occurrence (ii) area of occupancy (iii) area, extent and/or quality of habitat (iv) number of locations or subpopulations (v) number of mature individuals
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Low-altitude area】Forest, Grassland, Farmland, Wetland/Marsh/Stream, Reservoir/Pond 【Terrestrial/Freshwater area_Plain】Forest, Grassland, Farmland, Wetland |
|---|---|
| Threat types | Logging and wood harvesting, Field preparation, Grassland development, Land development, Transportation infrastructure construction, Vehicle collision |
| Law designation status for conservation | Nationally rare species of wild fauna and flora. |
| 執筆者: | 富永篤(琉球大学)・松井正文(京都大学) |
| Author: | Atsushi Tominaga and Masafumi Matsui |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月
©富永篤(琉球大学)
©富永篤(琉球大学)