評価分科会名: 爬虫類・両生類分科会
1. 判定対象種情報 日本固有
| ⽬名 | 有尾目 | 科名 | オオサンショウウオ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Caudata | Family | Cryptobranchidae |
| 和名 | オオサンショウウオ | ||
| 学名 | Andrias japonicus (Temminck, 1836) | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 判定基準: B2ab
| 基準A: ― | 基準B: VU | 基準C: ― | 基準D: ― | 基準E: ― |
B2. 生息地面積が2000 km²未満であると推定されるほか、次の兆候が見られる。 a) 生息地が過度に分断されているか、10以下の地点に限定されている。 【過度に分断】 多くの河川において、人工の堰堤や護岸が移動の障壁となっており、各個体群は孤立化の一途をたどっている。また、外来のチュウゴクオオサンショウウオの侵入により、在来のオオサンショウウオとの交雑が生じている。その結果、遺伝的に純粋なオオサンショウウオは交配が難しくなり、小集団化している。以上の孤立化・小集団化により、絶滅のリスクが高まっている。 b) 出現範囲、生息地面積、生息地の質、生息地点数、成熟個体数のいずれかに継続的な減少が推定・予測される。 【判断理由】 近年の台風や洪水被害の増加から、河川改修や法面工事が多く施工され、オオサンショウウオの生息や繁殖に用いられる巣穴が減少していることは間違いない。
3. 概要
本種は現存する世界最大の両生類であり、特別天然記念物に指定されているが、河川の改修などによって好適な生息環境が狭められている。加えて、地域によっては外来種チュウゴクオオサンショウウオとの交雑による遺伝子汚染が予想以上に進んでいる。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
全長は600~700 mm程度のものが多いが、最大1,500 mm以上になる。頭部は偏平で大きく、体には多数の小さなイボをもつ。体側から四肢の後面にかけて皮膚の襞がある。鋤骨歯列は浅いハの字型。四肢は短く後肢は5趾性。尾は著しく側偏する。背面は一般に暗褐色で、不規則な黒色の斑紋をもつ。近縁種チュウゴクオオサンショウウオは、吻が偏平で頭が大きく、体の黒斑が大きくて独立しており、体のイボは小さくて二つずつ並ぶことで区別される。両者の間に生じる雑種個体はチュウゴクに似ることが多いが、識別の難しい個体もいる。
【生活史】
成体は周年活動を行うが、繁殖期を除いては夜行性で人目につきにくい。 繁殖は年1回、通常8月下旬~9月にかけて、河川の岸にできた深い横穴でなされる。大型のオスは繁殖巣穴を占拠後、掃除してメスの集来を待ち、ここに他のオスが侵入すると闘争が起こる。しかし、メスが穴に入って産卵が行われ始めると、周辺に待機していた複数のスニーカーオスも穴に入るという。1メスの産卵数は400~500個と言われる。変態までに4~5年を要する。繁殖個体の平均年齢は不明であるが、変態後、野外では最低10年は生存が確認され、飼育下では51年生存したという記録がある。変態後は単独で生活し、若い幼生はカワゲラ幼虫など、水生の小さい節足動物を食べる。成体はサワガニ、各種淡水魚を食べ、ヘビやカワネズミを食べた例も知られる。
【生息・生育環境】
中部、近畿地方では比較的大きな河川を中心に、中国、九州地方では小河川に生息していることが多く、繁殖場所などの微細な環境要求は異なるものと思われる。繁殖場所となる横穴は、奥から湧水が流出していることが不可欠と見られる。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_中標高地】森林,河川源流域,河川上流域,河川中流域,湖・ダム湖 【陸域_平地部】河川中流域,河川下流域,農業用水路,小河川 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (2)里地里山・田園地域,(4)河川・湿地地域 |
【分布域】
自然分布は岐阜県以西の本州と、四国、九州地方の一部のみと考えられる。和歌山県下に生息しているものは人為的に移入されたものの子孫といわれ、同様の例が過去に各地であった可能性は高い。青森県から鹿児島県まで野外での捕獲例があるが、それらは人為による導入と考えられ、外来種チュウゴクオオサンショウウオの誤認であることも多い。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
多くの地点で、かなり昔から河川改修などの人為的な生息環境の破壊を受けてきた。本州の分布域のうち、少なくとも愛知、京都、滋賀、奈良、三重、岡山、広島では人為移入された外来種チュウゴクオオサンショウウオとの自然下での交雑が生じており、遺伝汚染が進んでいる。交雑個体は岐阜・大阪・兵庫でも見つかっているが個体群が維持されているかは不明である。
【生息・生育地の現況】
生涯のほとんどを河川で過ごすため、各河川に生息する個体群は分断されていると思われる。また、多くの河川で、人工の堰堤や護岸が移動の障壁となっている。京都、三重、岡山などでチュウゴクオオサンショウウオとの交雑が進み、京都市の一部では純粋種は壊滅に近い。
【個体数の現況】
地域個体群別の推定個体数とその時代的変化は不明であるが、調査された河川の例では、三重県下で流域長約6,000 mの区域に150個体、兵庫県下で約3,000 mに490個体、広島県下では約3,500 mに50個体の、変態後の個体の生存が確認されている。
存続を脅かす要因
かつては食用とされていたが、現在では法的に保護されているため個体自体の捕獲または採取は原則としてないはずである。しかし、実際には食用習慣は続いている可能性がある。もっとも重要なのは、堰堤やダムの建設、護岸工事など、河川の改変による生息地の消失である。それに加えて、近畿地方の一部では外来種チュウゴクオオサンショウウオと競合し、交雑した結果、純粋なオオサンショウウオが絶滅に瀕している事実が判明してきた。こうした交雑個体の存在は、最近では西は広島、東は愛知までの地域で知られている。
| 要因の区分 | (過去) | 河川開発,ダム・河川工作物建設,捕獲・狩猟/園芸採取,競争/競合(外来種による),交雑(外来種による) |
|---|---|---|
| (現在) | 河川開発,ダム・河川工作物建設,捕獲・狩猟/園芸採取,競争/競合(外来種による),交雑(外来種による) |
特記事項
現存する世界最大の両生類であり、化石種と形態的にあまり違いのないこと、近縁種は中国大陸や北米に隔離分布することなどから、有尾類の進化や生物地理を探るうえで、非常に重要な種である。鈴鹿山地の東西で遺伝的に異なることを除き、地域間での遺伝的多様性は高くない。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | オオサンショウウオ | Andrias japonicus | VU |
| 第4次 2019 | オオサンショウウオ | Andrias japonicus | VU |
| 第4次 2018 | オオサンショウウオ | Andrias japonicus | VU |
| 第4次 2017 | オオサンショウウオ | Andrias japonicus | VU |
| 第4次 2015 | オオサンショウウオ | Andrias japonicus | VU |
| 第4次 | オオサンショウウオ | Andrias japonicus | VU |
| 第3次 | オオサンショウウオ | Andrias japonicus | VU |
| 第2次 | オオサンショウウオ | Andrias japonicus | NT |
| 第1次 | オオサンショウウオ | Megalobatrachus japonicus | R |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【福井県】県域絶滅,【岐阜県】絶滅危惧Ⅱ類,【愛知県】絶滅危惧ⅠB類(EN),【三重県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【滋賀県】絶滅危惧種,【京都府】絶滅危惧種,【大阪府】VU,【兵庫県】Bランク,【奈良県】絶滅危惧種,【和歌山県】絶滅(EX),【鳥取県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【島根県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【岡山県】絶滅危惧Ⅰ類,【広島県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【山口県】絶滅危惧ⅠA類(CR),【徳島県】絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN),【愛媛県】情報不足(DD),【高知県】情報不足(DD),【福岡県】絶滅危惧ⅠA類(CR),【熊本県】情報不足(DD),【大分県】絶滅危惧ⅠA類(CR)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
国指定特別天然記念物,都道府県条例指定種【京都府】
5. 参考⽂献
生駒義博(編),1973.日本ハンザキ集覧.津山科学教育博物館,津山.478 pp. 松井正文,2017.チュウゴクオオサンショウウオが在来のオオサンショウウオに与える影響.地域自然史と保全,39(1): 13-19. 松井正文,2000.オオサンショウウオ.改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物─レッドデータブック─(爬虫類・両生類),pp. 101.環境庁,東京. 松井正文,2009.外来生物クライシス.小学館,東京.254 pp. 松井正文・西川完途・吉川夏彦.2010.京都賀茂川産チュウゴクオオサンショウウオの現状(I).爬虫両棲類学会報,2010 (1):77-78. Matsui, M., Tominaga, A., Liu, W. -Z., Tanaka-Ueno, T., 2008. Reduced genetic variation in the Japanese giant salamander, Andrias japonicus (Amphibia: Caudata). Mol. Phyl. Evol., 49: 318–326. 小原二郎,1985.大山椒魚.どうぶつ社,東京.236 pp. 栃本武良,1995.オオサンショウウオ.日本の希少な野生水生生物に関する基礎資料(II),pp. 42 2-428.日本水産資源協会,東京. 栃本武良,2005.オオサンショウウオの生態,松井正文(編),これからの両棲類学,pp. 28-39.裳華房,東京. 栃本武良,2005.オオサンショウウオの保全,松井正文(編),これからの両棲類学,pp. 204-215.裳華房,東京.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Andrias japonicus has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Andrias japonicus is listed as VU under criteria B2ab.
B2. Area of occupancy estimated to be less than 2,000 km², and estimate indicating at least two of a-c: a. Severely fragmented or known to exist at ten or fewer locations. b. Continuing decline, observed, inferred or projected, in any of the following: (i) extent of occurrence (ii) area of occupancy (iii) area, extent and/or quality of habitat (iv) number of locations or subpopulations (v) number of mature individuals
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Mid-altitude area】Forest, River headwater, Upper river basin, Middle river basin, Lake/Dam 【Terrestrial/Freshwater area_Plain】Middle river basin, Lower river basin, Agricultural ditch, Small river |
|---|---|
| Threat types | River development, Dam/River structures construction, Hunting and collecting animals/Gathering plants, Competition (with alien species), Hybridization (with alien species) |
| Law designation status for conservation | Nationally Designated Special Natural Monument. Prefectural Ordinance-Designated Species【Kyoto】. |
| 執筆者: | 西川完途(京都大学)・松井正文(京都大学) |
| Author: | Kanto Nishikawa and Masafumi Matsui |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月
©西川完途(京都大学)