評価分科会名: 爬虫類・両生類分科会
1. 判定対象種情報 日本固有
| ⽬名 | 有尾目 | 科名 | イモリ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Caudata | Family | Salamandridae |
| 和名 | アマミシリケンイモリ | ||
| 学名 | Cynops ensicauda ensicauda (Hallowell, 1861) | ||
2. カテゴリー判定: 準絶滅危惧(NT) 判定基準: ②③
| 基準A: ― | 基準B: VU未満 | 基準C: ― | 基準D: ― | 基準E: ― |
生息状況の推移から見て、種の存続への圧迫が強まっていると判断されるもの。 具体的には、分布域の一部において、次の傾向が顕著であり、今後さらに進行するおそれがあるもの。 ②生息条件が悪化している。 【判断理由】 生息地の大部分は良好な状態で保たれているが、市街地付近には現在はほとんど見られなくなっている。森林内でも林道整備、基地建設、森林伐採が行われており、局所的には生息地が破壊されている。世界自然遺産に登録された地域であり、観光やエコツアーなどでの森林環境の利用が増加しており、これに伴う環境の破壊、轢死の増加が懸念される。 ③過度の捕獲・採取圧による圧迫を受けている。 【判断理由】 最近の有尾類の飼育ブームの飼育動物として頻繁に採集されて、安価な価格で売買されており、他の種よりも高い捕獲圧にさらされている。長寿命な動物であり、再生産力はあまり高くない動物と考えられ、捕獲圧による影響は大きい。
3. 概要
本種は奄美諸島の5島に広く分布しているが、市街地ばかりでなく森林でも生息環境が悪化している。加えて、飼育・販売目的で大量に採集され、販売されているため、個体数が激減している。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
成体の頭胴長はオスが50~75 mm、メスで60~80 mm程度。背面は黒褐色で、背側部に朱色から橙色ないし黄色の不連続な線状の模様を持つことが多い。灰色の細かい多数の斑点が背面に現れることもある。腹面は朱色から橙色ないし黄色で、黒褐色の不規則な斑紋がある。四肢の指の下面も橙色ないし黄色。
【生活史】
一年を通して湿潤な林床や草地、湿地の水中などに生息し、繁殖はため池などの止水や流れの遅い流水で、おもに11~6月の間に行われる。この時期オスは水中でメスを待ち、メスが現れると儀式的な行動を通して精子の入った袋(精包)をメスに渡す。幼生はふ化後3~4ヶ月で変態・上陸するが、成熟までには数年を要すると思われる。沖縄諸島のオキナワシリケンイモリとは遺伝的にも形態的にも大きく分化している。
【生息・生育環境】
奄美諸島の計5島に分布する。生息環境は低地の湿地、池、水田から山地の渓流までと幅広い。土地開発にともなう生息域・繁殖場所の縮小、側溝等の敷設にともなう繁殖集団の分断・墜落死亡個体の増加、観賞・飼育用としての売買目的の成熟個体の乱獲などが、個体数減少の主な原因と考えられる。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_低標高地】森林,草地,田地・畑地,耕作放棄地,農業用水路,湿地・湿原・細流,河川源流域,河川上流域,河川中流域,湖・ダム湖 【陸域_平地部】森林,河川中流域,河口域 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (2)里地里山・田園地域,(4)河川・湿地地域,(7)島嶼地域 |
【分布域】
奄美諸島の6島(奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、枝手久島、江仁屋離)の合計809.2 km²に低地から山地まで幅広く分布していた。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
奄美諸島の自然環境は良好な状態で保たれているところが多いが、市街地付近には現在はほとんど見られない。
【生息・生育地の現況】
大部分の生息地は良好な状態で保たれているが、森林内でも林道整備、基地建設、森林伐採が行われており、局所的には生息地が破壊されている。世界自然遺産に登録された地域であり、観光やエコツアーなどでの森林環境の利用が増加しており、これに伴う環境の破壊、轢死の増加が懸念される。市街地付近では水路のコンクリート化が見られ、生息環境は少なくなっている。また、最近の有尾類の飼育ブームの飼育動物として頻繁に採集されて、安価な価格で売買されており、他の種よりも高い捕獲圧にさらされている。
【個体数の現況】
もともと生息地では個体数の多い種ではあるが、現在も比較的多くの個体数が維持されているが、長寿命な動物であり、再生産力はあまり高くない動物と考えられ、捕獲圧や轢死、環境破壊による影響は大きい。
存続を脅かす要因
森林内の林道整備、基地建設、森林伐採による生息地破壊。観光やエコツアーに伴う環境の破壊、轢死。飼育動物としての採集と売買による高い捕獲圧。最近の有尾類の飼育ブームの飼育動物として頻繁に採集されて、安価な価格で売買されており、他の種よりも高い捕獲圧にさらされている。
| 要因の区分 | (過去) | 土地造成,交通インフラ建設,捕獲・狩猟/園芸採取 |
|---|---|---|
| (現在) | 土地造成,交通インフラ建設,捕獲・狩猟/園芸採取 |
特記事項
これまでは、沖縄県産の別亜種と区分せずに、種シリケンイモリCynops ensicaudaとして扱われることが多かったが、沖縄諸島との遺伝的分化程度が大きく、形態的な違いも明瞭なことから、最近では基亜種アマミシリケンイモリCynops ensicauda ensicaudaとして扱われるようになった。比較的最近分類変更があっため、地方自治体のレッドリストや保護に係る法令指定、各種文献等では、分類変更前のタクソン(広義シリケンイモリ)として扱われている場合があることに注意が必要。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | シリケンイモリ | Cynops ensicauda | NT |
| 第4次 2019 | シリケンイモリ | Cynops ensicauda | NT |
| 第4次 2018 | シリケンイモリ | Cynops ensicauda | NT |
| 第4次 2017 | シリケンイモリ | Cynops ensicauda | NT |
| 第4次 2015 | シリケンイモリ | Cynops ensicauda | NT |
| 第4次 | シリケンイモリ | Cynops ensicauda | NT |
| 第3次 | シリケンイモリ | Cynops ensicauda | NT |
| 第2次 | シリケンイモリ | Cynops ensicauda | NT |
| 第1次 | ― | ― | ― |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【鹿児島県】準絶滅危惧
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
指定なし
5. 参考⽂献
太田英利・岡田滋,2003.爬虫類・両生類.鹿児島県環境生活部環境保護課(編),鹿児島県の絶滅のおそれのある野生動植物 動物編.鹿児島県レッドデータブック,pp. 82-116.財団法人鹿児島県環境技術協会,鹿児島. 田中聡,1994.瀬底島におけるイボイモリとシリケンイモリの生態についての予備観察.沖縄生物教育研究会誌,26: 13-21. 田中聡,2005.シリケンイモリ.沖縄県文化環境部自然保護課(編),改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(動物編)-レッドデータおきなわ-,pp. 140-141.沖縄県文化環境部自然保護課,那覇. Tominaga, A., H. Ota, and M. Matsui. 2010, Phylogeny and phylogeography of the sword-tailed newt, Cynops ensicauda (Amphibia: Caudata), as revealed by nucleotide sequences of mitochondrial DNA. Mol. Phylogenet. Evol. 54: 910-921.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Cynops ensicauda ensicauda has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Cynops ensicauda ensicauda is listed as NT under criteria ②③.
The species that is considered to be under increasing pressure for survival, as indicated by habitat status trends, specifically with the following notable tendencies in parts of its distribution that are likely to continue. ②Habitat conditions are deteriorating. ③There is significant pressure from over-harvesting.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Low-altitude area】Forest, Grassland, Farmland, Abandoned farmland, Agricultural ditch, Wetland/Marsh/Stream, River headwater, Upper river basin, Middle river basin, Lake/Dam 【Terrestrial/Freshwater area_Plain】Forest, Middle river basin, Estuary |
|---|---|
| Threat types | Land development, Transportation infrastructure construction, Hunting and collecting animals/Gathering plants |
| Law designation status for conservation |
| 執筆者: | 富永篤(琉球大学)・松井正文(京都大学) |
| Author: | Atsushi Tominaga and Masafumi Matsui |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月
©富永篤(琉球大学)
©富永篤(琉球大学)