評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報
| ⽬名 | カモ目 | 科名 | カモ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Anseriformes | Family | Anatidae |
| 和名 | サカツラガン | ||
| 学名 | Anser cygnoid (Linnaeus, 1758) | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧ⅠA類(CR) 判定基準: D
| 基準A: ― | 基準B: ― | 基準C: ― | 基準D: CR | 基準E: ― |
D.成熟個体数が50未満であると推定される個体群である。 【推定根拠】 モニタリングサイト1000の結果では、2004-2020年の17年間で、数年おきに1~4羽の観察記録がある。日本鳥類目録改訂7版では迷鳥とされているが(日本鳥学会 2012)、戦前にはまとまった個体数が飛来していたようである。過去の飛来数については情報が少ないが、近年はモニタリングサイト1000を含めて、ガンカモ類の飛来数のモニタリング体制は比較的充実していて、近年の飛来情報は不足していない。戦前は日本が越冬地の一つであったことを考慮すると、もともと我が国に飛来していた鳥で、近年生息数が著しく少なくなった種と考えられ、情報不足(DD)とするよりは、絶滅危惧種として個体数の基準Dで評価するべきであると考えられる。
3. 概要
東アジアに分布が限られている種。最近の調査で、主な群れはロシア、中国、モンゴル国境周辺のトランスバイカリア地方で、その他の一部はアムール川下流域で繁殖し、前者は主にポーヤン湖(中国)などへ渡り、後者は主に韓国を経由して中国へ渡ることが判明した。繁殖地域では、狩猟圧と乾燥化による湖沼消滅などの影響を受け危機的な状況にある。日本は越冬地のひとつであり、1920年代まではほぼ全国から記録があり、定期的な渡来があったが、現在では年1~数羽が記録される程度にまで減少した。他のガン類と同様に平野部の湿地や農地、牧草地などで植物質の食物を採食する。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
全長87 cm。大型のガン。全体に暗褐色で、顔の上半分、後頸などは暗灰褐色。喉から前頸、腹面は白色、頬はやや橙色を帯びている。嘴は黒色で、成鳥は額に細い白線がでる。脚は橙色。
【生活史】
東アジアに分布が限られている種。最近の調査で、主な群れはロシア、中国、モンゴル国境周辺のトランスバイカリア地方で、その他の一部はアムール川下流域で繁殖し、前者は主にポーヤン湖(中国)などへ渡り、後者は主に韓国を経由して中国へ渡ることが判明した。繁殖地域では、狩猟圧と乾燥化による湖沼消滅などの影響を受け危機的な状況にある。日本は越冬地であり、1920年代まではほぼ全国から記録があり、定期的な渡来地(最後の渡来地は東京湾)もあったが、それも1950年までで、以降はごくまれな観察される程度である。1947年に狩猟鳥から除外されたが間に合わず、この時期以降、日本では本種はほとんど見られなくなった。
【生息・生育環境】
平野部の湿地や農地、牧草地などで植物質の食物を採食する。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_平地部】田地・畑地,湿地・湿原,河川中流域,ため池・池沼,潟・湖・ダム湖 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (4)河川・湿地地域 |
【分布域】
過去には、日本が越冬地のひとつであり、茨城県、千葉県、東京都、福島県、岐阜県などから記録があり、関東地方の水田、湖沼地帯で多く見られたという記述がある(柳沢 1975)。具体的な観察情報としては、1923年12月に埼玉県で約40羽の群れ、千葉県新浜では1926年に86羽、1927年に90羽、1928年に100羽以上見たとされ、秋9月下旬に渡来して、5月に飛去するという記述がある(黒田 1939)。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
1990年以降では、北海道、宮城県、新潟県、鳥取県、島根県、山口県、福岡県、熊本県、沖縄県などで各1~数羽が記録されているのみだが、2012~13年の越冬期には14羽の群れが鳥取県で観察された。
【生息・生育地の現況】
定期的な渡来地はない。
【個体数の現況】
年に1~数羽渡来するかしないか、程度である。
存続を脅かす要因
不明。
| 要因の区分 | (過去) | 不明 |
|---|---|---|
| (現在) | 不明 |
特記事項
本種は、日本鳥類目録改訂第8版では Accidental VisitorおよびIrregular Visitorとされていることから、「鳥類分科会における基本的事項」に照らすと本来は評価対象とならないが、もともと我が国に飛来していた鳥で、近年生息数が著しく少なくなった種と考えられることから、鳥類分科会の議論の結果、評価対象に含めることとした。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | サカツラガン | Anser cygnoides | DD |
| 第4次 2019 | サカツラガン | Anser cygnoides | DD |
| 第4次 2018 | サカツラガン | Anser cygnoides | DD |
| 第4次 2017 | サカツラガン | Anser cygnoides | DD |
| 第4次 2015 | サカツラガン | Anser cygnoides | DD |
| 第4次 | サカツラガン | Anser cygnoides | DD |
| 第3次 | サカツラガン | Anser cygnoides | DD |
| 第2次 | サカツラガン | Anser cygnoides | DD |
| 第1次 | サカツラガン | Anser cygnoides | V |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【北海道】情報不足(Dd),【山形県】準絶滅危惧(NT),【千葉県】消息不明・絶滅生物(X),【新潟県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【福井県】要注目,【兵庫県】要調査種,【山口県】絶滅危惧Ⅱ類(VU)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
環境省自然環境局,2020.モニタリングサイト1000 ガンカモ類調査 2004~2017年度 とりまとめ報告書.環境省生物多様性センター,山梨. 呉地正行ほか,2004.ガン類の現状,私たちの自然,500: 10. 黒田長禮,1939.雁と鴨.修教社書院,東京. 日本鳥学会,2012.日本鳥類目録改訂第7版.日本鳥学会,三田. 嶋田哲郎.2021.知って楽しいカモ学講座(森本元監修).緑書房,東京. 上村佐知子,1996,サカツラガン.私たちの自然,411: 18-21. 柳沢紀夫,1975.サカツラガン.山階鳥類研究所(編)「この鳥を守ろう」それが人の生命をまもる,pp. 92-94.学習研究社,東京.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Anser cygnoid has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Anser cygnoid is listed as CR under criteria D.
D. Population size estimated to number fewer than 50 mature individuals.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Plain】Farmland, Wetland, Middle river basin, Reservoir/Pond, Lagoon/Lake/Dam |
|---|---|
| Threat types | Unknown |
| Law designation status for conservation | Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 嶋田哲郎(公益財団法人宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団) |
| Author: | Tetsuo Shimada |
| 協力者: | 牛山克巳(宮島沼水鳥・湿地センター) |
公開年月:2026年3月
©伊藤利喜雄