評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報 日本固有
| ⽬名 | ツル目 | 科名 | クイナ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Gruiformes | Family | Rallidae |
| 和名 | ヤンバルクイナ | ||
| 学名 | Hypotaenidia okinawae (Yamashina & Mano, 1981) | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧ⅠA類(CR) 判定基準: C2a(ii)
| 基準A: ― | 基準B: ― | 基準C: CR | 基準D: ― | 基準E: ― |
C.個体群の成熟個体数が250未満であると推定される。 【推定根拠】 個体数調査をもとに算出されている各年度のヤンバルクイナの推定個体数のうち、成熟個体は、その4分の1程度と推定される。その理由としては、以下等が挙げられる。 ・本種のオスは半数程度が1歳で繁殖開始すると考えられており、メスは大部分が2歳で繁殖開始すると考えられている。一夫一妻で繁殖し、雌雄が交代で抱卵する種であるため、概して2歳以上の個体が繁殖に参加すると考えられること。 ・本種の推定個体数は、繁殖期後である秋から冬の現地調査の結果から得られたものであるため、推定個体数のうち、翌年には繁殖しない幼鳥の割合が比較的大きいと考えられること。また、次の繁殖期までに一定数の個体が死亡すると考えられること。 推定個体数に変動がみられることから、誤差も考慮し、予防原則の視点にたち、推定個体数(95%信頼区間)の下限から成熟個体の羽数を算出した。2020年以降の推定個体数(95%信頼区間)の下限は1,000羽を下回る年も複数見られており、成熟個体はおよそ250羽未満と推定される。 加えて、以下の2. かつa (ii) に該当する事由がある。 2. 成熟個体数の継続的な減少が観察、もしくは推定・予測される。 【判断理由】 現在沖縄島北部で実施されている、本種の保護策として有効なマングース防除事業が仮に実施されなくなると、マングースによる捕食等によりヤンバルクイナの個体数や生息域が大幅に減少していくことが予測される。 a) 個体群構造が次に該当 ii) 1つの下位個体群中に90%以上の成熟個体が属している。 【判断理由】 本種はやんばる地域のみに生息するため、1つの個体群に全ての成熟個体が属する。
3. 概要
1981年に発見された無飛力のクイナで、沖縄島北部のみに生息する。外来種のフイリマングースやノネコ、ハシブトガラスなどによる捕食の影響を受けている。外来種の防除事業と本種の人工繁殖が進められている。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
全長は約35 cm。雌雄同色であるがオスがやや大型。上面は暗オリーブ褐色で顔は黒色。目の後ろに白線がある。下面は黒色で白色の横縞模様がある。嘴、脚、虹彩は赤色。
【生活史】
留鳥として周年生息する。繁殖期は4~7月で、地上に営巣する。一腹産卵数は3~5卵。昆虫類、甲殻類、両生類などの小動物を主食とする。樹上をねぐらにする。
【生息・生育環境】
常緑広葉樹林の林床や周辺の草原に生息する。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_低標高地】森林 【陸域_平地部】森林 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (1)奥山自然地域,(7)島嶼地域 |
【分布域】
主に沖縄島の北部(国頭村、大宜味村、東村)の通称やんばる地域に分布する。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
1985年の分布域の面積は約320 km²で、南限は大宜味村塩屋湾の南側であったが、1990年頃から南限付近での生息が見られなくなった。1997年頃には南限はさらに謝名城~福地ダムのラインまで北上し、2000年には大宜味村、2005年には東村でほぼ見られなくなり、国頭村のみの分布となった。近年では、マングース防除事業の進捗に伴い、徐々に大宜味村や東村側へ分布域が拡大し、フイリマングース対策として設置された塩屋と福地ダムを結ぶ第1北上防止柵以北で主に確認されている。2023年には、名護市で初めてヤンバルクイナが確認された。
【生息・生育地の現況】
マングース北上防止柵以南ではフイリマングースが多数生息しており、沖縄島全体でのフイリマングース根絶の見込みは立っていない状況である。やんばる地域では、マングース北上防止柵付近でフイリマングースが捕獲されているほか、ノネコが生息している。また、沖縄島中部地域ではタイワンスジオ、タイワンハブといった外来ヘビ類が定着しており、マングース北上防止柵付近まで分布を拡大していることから、ヤンバルクイナへの影響が危惧される。交通事故によるヤンバルクイナの死亡事例も多数発生している。
【個体数の現況】
推定個体数は1985年には1,500~2,100羽とされていたが、その後次第に減少し2005年には580~930羽と約60%の減少となった。2006年以降はやや回復傾向が見られ、2010年には845~1,350羽、2023年には1,345羽と推定されている。これはフイリマングースの防除事業の効果によるものと考えられる。しかしながら、沖縄島におけるフイリマングース根絶の見込みは立っていないほか、毎年20件以上の交通事故が確認されており、実際にはそれ以上の交通事故が発生していると考えられることから、リスクは軽減していない。
存続を脅かす要因
捕食者である外来種フイリマングースは、野生化したネコやイヌによる食害とともにもっとも直接的に本種の存続を脅かしている原因である。さらに、個体数の増加がみられるハシブトガラスや、沖縄中部に定着したタイワンスジオなど新たな外来種の存在にも注意が必要である。交通事故死、雛が側溝に転落することによる衰弱死なども存続を脅かす要因として挙げられる。
| 要因の区分 | (過去) | 森林伐採,交通インフラ建設,ダム・河川工作物建設,交通事故,捕食(外来種による),捕食(在来種による) |
|---|---|---|
| (現在) | ダム・河川工作物建設,交通事故,捕食(外来種による),捕食(在来種による) |
特記事項
本種は日本で唯一の無飛力の鳥類であり、フイリマングース、ノネコ等の地上性の外来捕食者の影響を非常に強く受ける。そのため、評価にあたっては予防原則の視点にたち、成熟個体数について検討した。 また、国外に生息する近縁種のムナオビクイナ(Hypotaenidia torquatus)やカラヤンクイナ(Aptenorallus calayanensis)などとの分類、進化上の比較は、沖縄の鳥相の起源解明に重要である。また、無飛力のクイナとしては、最北に分布すると考えられている。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | ヤンバルクイナ | Gallirallus okinawae | CR |
| 第4次 2019 | ヤンバルクイナ | Gallirallus okinawae | CR |
| 第4次 2018 | ヤンバルクイナ | Gallirallus okinawae | CR |
| 第4次 2017 | ヤンバルクイナ | Gallirallus okinawae | CR |
| 第4次 2015 | ヤンバルクイナ | Gallirallus okinawae | CR |
| 第4次 | ヤンバルクイナ | Gallirallus okinawae | CR |
| 第3次 | ヤンバルクイナ | Gallirallus okinawae | CR |
| 第2次 | ヤンバルクイナ | Gallirallus okinawae | EN |
| 第1次 | ヤンバルクイナ | Rallus okinawae | E |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【沖縄県】絶滅危惧ⅠA類(CR)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
国内希少野生動植物種,保護増殖事業,国指定天然記念物,鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
花輪伸一・森下英美子,1986.ヤンバルクイナの分布域と個体数推定について.昭和60年度特殊鳥類調査,pp. 43-61.環境庁,東京. Harato, T. and K. Ozaki, 1993. Roosting behavior of the Okinawa Rail. J. Yamashina Inst. Ornithol., 25: 40-53. 環境省那覇自然環境事務所,2011.平成22年度ヤンバルクイナ生息状況把握調査業務報告書,那覇市.48pp. 環境省沖縄奄美自然環境事務所,2024.令和5年度ヤンバルクイナ生息状況把握調査報告書(令和5年度沖縄島北部地域マングース防除事業業務).那覇市.77pp. 環境省やんばる野生生物保護センター,ロードキル情報.https://www.ufugi-yambaru.com/archives/category/roadkill 尾崎清明・馬場孝雄・米田重玄・金城道男・渡久地豊・原戸鉄二郎,2002.ヤンバルクイナの生息域の減少.山階鳥類研究所研究報告,34: 136-144. 尾崎清明,2005.ヤンバルクイナの分布域と個体数の減少.遺伝,59: 29-33. 尾崎清明,2009.「飛べない鳥」の絶滅を防ぐーヤンバルクイナー.山岸哲(編),日本の希少鳥類を守る,pp. 51-70.京都大学学術出版会. 尾崎清明,2010.ヤンバルクイナの保全生物学的研究.東邦大学大学院理学研究科博士学位論文,92pp. Yamashina, Y. and T. Mano, 1981. A new species of rail from Okinawa Island. J. Yamashina Inst. Ornithol., 13: 1-6. 山階鳥類研究所,1996.ヤンバルクイナシンポジウムー研究・保護の現状と将来の展望ー.山階鳥類研究所,我孫子.44pp.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Hypotaenidia okinawae has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Hypotaenidia okinawae is listed as CR under criteria C2a(ii).
C. Population size estimated to number fewer than 250 mature individuals and: 2. A continuing decline, observed, projected, or inferred, in numbers of mature individuals and: a. Population structure in the form: (ii) at least 90% of mature individuals in one subpopulation.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Low-altitude area】Forest 【Terrestrial/Freshwater area_Plain】Forest |
|---|---|
| Threat types | Dam/River structures construction, Vehicle collision, Predation (by alien species), Predation (by native species) |
| Law designation status for conservation | Nationally rare species of wild fauna and flora. Conservation and reproduction programs. Nationally Designated Natural Monument. Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 尾崎清明(公益財団法人山階鳥類研究所) |
| Author: | Kiyoaki Ozaki |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月