評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報 日本固有
| ⽬名 | タカ目 | 科名 | タカ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Accipitriformes | Family | Accipitridae |
| 和名 | カンムリワシ | ||
| 学名 | Spilornis cheela perplexus Swann, 1922 | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧ⅠA類(CR) 判定基準: C2a(ii)
| 基準A: ― | 基準B: ― | 基準C: CR | 基準D: ― | 基準E: ― |
C.個体群の成熟個体数が250未満であると推定される。 【推定根拠】 生息確認調査では、総個体数でも最大数で約120個体である。成熟個体数は確認個体数の7割から8割程度。 加えて、以下の2. かつa (ii) に該当する事由がある。 2. 成熟個体数の継続的な減少が観察、もしくは推定・予測される。 【判断理由】 今後、観光・経済活動の進展にともなう交通量の増大が見込まれるため、車との衝突件数も増えると予測される。また、餌の捕食地となる湿地、水田、草地の減少も予想される。 a) 個体群構造が次に該当 ii) 1つの下位個体群中に90%以上の成熟個体が属している。 【判断理由】 石垣島と西表島間の距離は約20 kmのため、相互の移動は容易と思われるため、唯一の下位個体群にすべての成熟個体が含まれる。
3. 概要
八重山諸島に生息する大型の猛禽類で、水田など湿地帯や草地をともなう林縁部を主な生息環境とする。推定個体数は約120羽以上で、繁殖については断片的な情報しかない。主な採餌環境である森林に接した湿地や水田が畑や牧場などに変わり、生息環境が悪化しつつある。交通事故の事例が増加している。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
全長約55 cm、翼長はオスが約34 cm、メスが約37 cm、額、頭上、後頭の羽が黒色で白斑があり、長い冠羽になっている。顔、背、翼の上面は褐色で、雨覆羽には白色の斑がある。喉と腹は褐色で、暗色の横縞と白色の横縞と斑がある。尾は褐色で、先端と中央に幅の広い黒褐色の帯がある。目の周囲、上嘴の付け根、脚は黄色である。色や斑の大きさは個体差が大きい。
【生活史】
営巣期は1月下旬の造巣を開始し、4月初旬に産卵する。卵数は1卵、抱卵はメスのみが行い5月中旬から下旬に孵化する。抱卵期間から育雛初期はオスが食物を運ぶとされる。7月下旬にヒナは巣立ち、枝移りを始める。10月には若鳥が親と離れて独立する。食物はカエル、トカゲ、ヘビなどの両生類や爬虫類、カニなどの甲殻類、昆虫類で、湿地周辺の樹木や電柱に静止して獲物を待ち、飛び降りて捕獲する。
【生息・生育環境】
森林に接した開けた場所で採餌し、森林をねぐらや休息地、営巣場所として利用する。西表島では、冬期には森林の周辺部にほとんどの個体が移動する。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_低標高地】森林,草地,田地・畑地,湿地・湿原・細流,ため池・池沼 【陸域_平地部 海岸部】森林,草地,田地・畑地,耕作放棄地,湿地・湿原,河川下流域,河口域,農業用水路,小河川,汽水域,塩沼地・塩性湿地・河口干潟 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (2)里地里山・田園地域,(4)河川・湿地地域,(7)島嶼地域 |
【分布域】
種カンムリワシ(Spilornis cheela)は、インドから中国南部、インドシナ半島、マレー半島、スリランカ、ジャワ、中国(台湾)、八重山諸島などのアジア大陸南部とその周辺の島々に分布し、21亜種に分けられる。本亜種は分布の北限にあたる八重山諸島に生息する日本固有の亜種である。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
八重山群島の石垣島、西表島に周年生息する。与那国島でも少数の目撃記録があるが、まれに飛来する程度である。石垣島と西表島では全域で記録があるが、山地帯の山麓部で森林と湿地や草地が混在する場所に生息し、山地帯中央での確認はほとんどない。
【生息・生育地の現況】
生息が記録されている環境は、水田周辺、休耕田、放牧地など湿地や草地をともなう樹林地やマングローブ林で、まれに砂泥質の海岸でも見られる。西表島、石垣島ともに林縁と湿地や水田、休耕田、草地での出現頻度が高く、主要な生息環境は隣接して湿地や草地を持つ森林と言える。森林内部では観察されることが少ない。
【個体数の現況】
環境庁(1982)では56~85羽(成鳥最大65羽、幼鳥20羽)、花輪ほか(1985)では西表島で77羽(成鳥60羽、幼鳥13羽、不明4羽)、石垣島では10~16羽(成鳥最大12羽、幼鳥最大4羽)としている。日本野鳥の会八重山支部(1998)は、1998年1~2月の調査で、西表島で104羽(成鳥76羽、幼鳥15羽、不明13羽)、石垣島では91羽(成鳥72羽、幼鳥10羽、不明9羽)を記録した。2012 年以降、環境省により非繁殖期に低地林外に出現するカンムリワシを対象に生息状況等調査が実施され、石垣島で24~62個体、西表島で38~66個体の範囲で推移しており、生息数の増加及び減少のどちらの傾向も認められず、生息数は維持されていると判断されている。
存続を脅かす要因
生息地である湿地とその周囲の森林が農業用地に変わりつつある。水田や湿地は採食環境として重要であるが、近年は水田が放棄され減少している。近年では交通事故の確認件数は、交通量の多い石垣島では年平均で7.4件(2008 年から2021年)、西表島では平均4.1件(2012年から2021年)である。これは、あくまで環境省等に連絡があったことで把握できた件数であり、実際にはより多くの交通事故が発生していると考えられる。
| 要因の区分 | (過去) | 森林伐採,湿地開発,圃場整備,草地開発,交通事故,管理放棄 |
|---|---|---|
| (現在) | 森林伐採,湿地開発,圃場整備,草地開発,ゴルフ場,交通事故,管理放棄 |
特記事項
種カンムリワシの中では北限に分布する亜種である。もっとも近くの台湾島に分布するものは本亜種より大型で、形態的な変化やその生息環境との関連性など生物地理学上の興味が持たれる。Mayr and Cottrell(1979)では同一の亜種とされている。なお、本種の保護対策として、森林と接した湿地や草地の保全と、交通事故対策として道路への看板設置などで運転者への注意の喚起が有効である。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | カンムリワシ | Spilornis cheela perplexus | CR |
| 第4次 2019 | カンムリワシ | Spilornis cheela perplexus | CR |
| 第4次 2018 | カンムリワシ | Spilornis cheela perplexus | CR |
| 第4次 2017 | カンムリワシ | Spilornis cheela perplexus | CR |
| 第4次 2015 | カンムリワシ | Spilornis cheela perplexus | CR |
| 第4次 | カンムリワシ | Spilornis cheela perplexus | CR |
| 第3次 | カンムリワシ | Spilornis cheela perplexus | CR |
| 第2次 | カンムリワシ | Spilornis cheela perplexus | CR |
| 第1次 | カンムリワシ | Spilornis cheela perplexus | E |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【沖縄県】絶滅危惧ⅠA類(CR)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
国内希少野生動植物種,国指定特別天然記念物,鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
花輪伸一・樋口行雄・高良武信,1985.八重山諸島におけるカンムリワシの生息状況.昭和59年度特殊鳥類調査,pp. 1-28.環境庁,東京. 原戸鉄二郎,1987.西表島におけるカンムリワシの食性と巣立ち雛の行動.沖縄島嶼研究,(5): 49-58. 環境庁,1982.カンムリワシ:八重山群島における生息状況.昭和56年度特殊鳥類調査,pp. 53-75.日本野鳥の会,東京. カンムリワシリサーチ,2012.平成21年度カンムリワシ生息状況等調査報告書.環境省沖縄奄美地区自然保護事務所. 前川聡,2010.石垣島カラ岳周辺における猛禽類の生息状況と新石垣空港の建設、供用開始に伴う影響について.WWFジャパン,東京. Mayr, E. and G. W. Cottrell, 1979. Checklist of the Birds of the World, 1. Museum of Comparative Zoology, Cambridge, Massachusetts. 547pp. 日本野鳥の会八重山支部,1998.カンムリワシ生息実態調査検討報告書.日本野鳥の会八重山支部,石垣市.66pp. 日本野鳥の会八重山支部,2004.平成15年度カンムリワシ生息状況等調査報告書.環境省沖縄奄美地区自然保護事務所. 日本野鳥の会八重山支部,2005.平成16年度カンムリワシ生息状況等調査報告書.環境省沖縄奄美地区自然保護事務所. 沖縄奄美自然環境事務所・沖縄森林管理署・西表森林生態系保全センター・沖縄県・沖縄県教育委員会・石垣市・石垣市教育委員会・竹富町・竹富町教育委員会,2023.カンムリワシ保全方針.沖縄奄美自然環境事務所,那覇市. 庄山守,1983.カンムリワシに関する若干のメモ.八重山野鳥の会創立10周年記念誌,pp. 48-44.八重山野鳥の会,石垣市.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Spilornis cheela perplexus has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Spilornis cheela perplexus is listed as CR under criteria C2a(ii).
C. Population size estimated to number fewer than 250 mature individuals and: 2. A continuing decline, observed, projected, or inferred, in numbers of mature individuals and: a. Population structure in the form: (ii) at least 90% of mature individuals in one subpopulation.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Low-altitude area】Forest, Grassland, Farmland, Wetland/Marsh/Stream, Reservoir/Pond 【Terrestrial/Freshwater area_Plain, Beach】Forest, Grassland, Farmland, Abandoned farmland, Wetland, Lower river basin, Estuary, Agricultural ditch, Small river, Brackish water, Salt marsh/Intertidal mudflat (including mangrove wetland) |
|---|---|
| Threat types | Logging and wood harvesting, Wetland development, Field preparation, Grassland development, Golf course development, Vehicle collision, Abandonment of management |
| Law designation status for conservation | Nationally rare species of wild fauna and flora. Nationally Designated Special Natural Monument. Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 金井裕(公益財団法人日本野鳥の会) |
| Author: | Yutaka Kanai |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月
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