評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報
| ⽬名 | フクロウ目 | 科名 | フクロウ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Strigiformes | Family | Strigidae |
| 和名 | ワシミミズク | ||
| 学名 | Bubo bubo borissowi Hesse, 1915 | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧ⅠA類(CR) 判定基準: A2 D
| 基準A: CR | 基準B: ― | 基準C: ― | 基準D: CR | 基準E: ― |
A2.過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて、80%以上の減少があったと推定され、その原因がなくなっていない、理解されていない、あるいは可逆的でない。 【比較年】 10年(世代時間不明) 【過去の状況】 北海道北部、中央高地、知床半島などで繁殖情報があるが、連続して繁殖する生息地は北海道北部の1カ所のみが明らかになっていた。 【近年の状況】 連続して繁殖する北海道北部の1カ所では、2006年の繁殖を最後に確認されておらず、2011年に成鳥1羽が確認された後、定着個体が確認されていない。 D.成熟個体数が50未満であると推定される個体群である。 【推定根拠】 定着性の強い鳥類だが歴史的にも繁殖地がほとんど見つかっていない。連続して繁殖する北海道北部の1カ所では、2006年の繁殖を最後に確認されておらず、2011年に成鳥1羽が確認された後、定着個体が確認されていない。
3. 概要
ユーラシア大陸と北アフリカに分布する大型のフクロウで、日本では北海道に分布する。1994年に北海道北部で繁殖地が特定され、それ以降繁殖が継続していたが、2006年を最後に絶え、2011年以降は個体も確認されていない。環境変化は大きくないため、個体群の安定には北方圏からの分散個体供給が鍵である。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
大型のフクロウで、全長58〜71 cm。翼開長152〜180 cm。メスはオスよりも大きく、体の大きさの地理的変異は大きい。体色は褐色で、黒斑があり、地理変異が大きい。虹彩が橙色で趾に羽毛がある点でシマフクロウ(Ketupa blakistoni blakistoni)と識別できる。
【生活史】
種としての食性は幅広く、おもにネズミ類、ウサギなどの哺乳類や海鳥などの鳥類を食べるほか、両生類や爬虫類も捕食する。大部分の生息域で年間を通して強い定着性とテリトリー性を維持する。一腹産卵数は1〜6卵。国内での繁殖観察例は1巣とわずかであるが、1月中旬から雌雄の鳴き交わしが始まり、2月中旬から交尾、3月下旬〜4月上旬に産卵し、5月上旬に孵化。6月下旬から7月中旬頃に巣立つ。毎年繁殖し、最大2羽の雛が生育するが、多くの年でそのうち1羽が巣立ち前に落鳥し、巣立ち後も死亡や衰弱で保護される個体がほとんどである。巣内のペリット調査では、ユキウサギ、キツネ幼獣、カイネコ、エゾヤチネズミなどの哺乳類、ノスリ、カラス、エゾライチョウ、ヒメウなどの鳥類が確認されている。分散は、道北の繁殖地で標識された幼鳥が10数年後に220 km離れた知床半島で感電死した1例のみ有る。
【生息・生育環境】
おもに崖の岩棚で営巣するが、国外では倒木や地上、ワシ類の古巣を用いた事例もある。林縁、灌木草原や農耕地など開けた環境で採餌するので、崖があり、森林帯の周囲に開放地のあるような環境に生息する。国内での繁殖情報地は、海岸、内陸の丘陵地、高標高の中央高地など幅広いエリアの崖地である。国内分布の地理環境は国外大陸の環境に類似するが、最も大きな差異は、国内の生息地は湿潤で、森林の林床はササが繁茂し採餌が困難であること、また草地は開墾された牧草地であり、大陸のような自然植生の草地及び生態系ではないことが挙げられる。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_中標高地】森林 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (1)奥山自然地域,(2)里地里山・田園地域,(5)沿岸域 |
【分布域】
種ワシミミズク(Bubo bubo)は西はスカンディナビアから東はサハリンまでのユーラシア大陸、アフリカ北部に広く分布する。日本では亜種Bubo bubo borissowiが北海道に分布。北海道北部、中央高地、知床半島などで繁殖情報があるが、連続して繁殖する生息地は北海道北部の1カ所のみが明らかになっていた。しかし、繁殖は2006年を最後に確認されておらず、2011年に成鳥1羽が確認された後、定着個体が確認されていない。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
既知の北海道北部1か所の繁殖地では2006年を最後に繁殖しなくなり、2011年以降は北海道においては定着個体の確認がない。
【生息・生育地の現況】
営巣地点の岩棚に捕食者であるクロテン、アライグマの利用痕跡あり。
【個体数の現況】
2011年まで確認されているのは1つがいであったが、直近10年間は定着個体の確認無し。
存続を脅かす要因
本種の存続を脅かす要因として次の要因が考えられる。①個体群が小さく、種レベルで世界分布域の端に位置し、海峡により大陸やサハリンなどから分散渡りによる新規個体の供給が少ないことや、温暖化によりオホーツク海の結氷が後退し北方からの分散移入の機会が減少している可能性があることにより個体群の更新が進まないこと。②クロテンやアライグマによる雛の捕食の可能性があること。③鳥類を多く捕食するため鳥インフルエンザによる影響の可能性があること。④北海道の1980年代までの開拓および強度森林伐採による攪乱環境の創出に伴う小型哺乳類の一時的隆盛が、1990年代以降の農地造成や人工林成長に伴い衰退し、採餌環境が変化したこと。⑤ごみリサイクルの推進により、ごみ処分場のネズミ類が減少し、採餌環境が変化したこと。
| 要因の区分 | (過去) | 感染症/病原菌,捕食(外来種による),捕食(在来種による),遷移進行・植生変化/自然遷移,分布・産地局限,その他(北方からの分散移入の減少、餌資源の減少) |
|---|---|---|
| (現在) | 感染症/病原菌,捕食(外来種による),捕食(在来種による),遷移進行・植生変化/自然遷移,分布・産地局限,その他(北方からの分散移入の減少、餌資源の減少) |
特記事項
1994年における繁殖確認を受け、1997年12月に種の保存法に基づく国内希少野生動植物種に指定された。巣立ち率の悪さに対応し2004年から2010年にかけて廃鶏を利用した給餌事業を行ったが、鳥インフルエンザの懸念から2010年に中止。以後積極的な保護策は実施されていない。個体数が少ないため生息調査が効率的に行えず情報待ちの状態。 現在は生息数が非常に少なく、既知繁殖地もいったん消失したと考えられる。ただし広域の分布調査は行われていない。モニタリングの継続が重要である。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | ワシミミズク | Bubo bubo | CR |
| 第4次 2019 | ワシミミズク | Bubo bubo | CR |
| 第4次 2018 | ワシミミズク | Bubo bubo | CR |
| 第4次 2017 | ワシミミズク | Bubo bubo | CR |
| 第4次 2015 | ワシミミズク | Bubo bubo | CR |
| 第4次 | ワシミミズク | Bubo bubo | CR |
| 第3次 | ワシミミズク | Bubo bubo | CR |
| 第2次 | ワシミミズク | Bubo bubo | CR |
| 第1次 | ― | ― | ― |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【北海道】絶滅危惧ⅠA類(Cr)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
国内希少野生動植物種,鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
藤巻裕蔵・山本純郎・早矢仕有子・竹中健,1997.ロシア沿海地方にワシミミズクとシマフクロウを訪ねて.野生生物保護行政,(11): 10-15. 早矢仕有子,1997.極東地域におけるワシミミズクBubo bubo 標本の由来および形態・形質.山階鳥類研究所研究報告,29: 73-79. 日本鳥類保護連盟,1995.平成6年度ワシミミズク生息実態調査報告書. 日本鳥類保護連盟,1996.平成7年度ワシミミズク生息実態調査報告書. 日本鳥類保護連盟,1997.平成8年度ワシミミズク生息実態調査報告書. 日本鳥類目録編集委員会,2000.日本鳥類目録改定第6版.日本鳥学会,帯広.345pp. 山階芳麿,1941.日本の鳥類と其の生態 第二巻.岩波書店,東京.1080pp.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Bubo bubo borissowi has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Bubo bubo borissowi is listed as CR under criteria A2 D.
A. Reduction in population size based on any of the following: 2. An observed, estimated, inferred or suspected population size reduction of ≥80% over the last 10 years or three generations, whichever is the longer, where the reduction or its causes may not have ceased OR may not be understood OR may not be reversible. D. Population size estimated to number fewer than 50 mature individuals.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Mid-altitude area】Forest |
|---|---|
| Threat types | Disease, Predation (by alien species), Predation (by native species), Successional progression/Vegetation change/Natural succession, Limited distribution, Other |
| Law designation status for conservation | Nationally rare species of wild fauna and flora. Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 竹中健(シマフクロウ環境研究会) |
| Author: | Takeshi Takenaka |
| 協力者: | 小西敢(浜頓別クッチャロ湖水鳥観察館) |
公開年月:2026年3月