評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報
| ⽬名 | チドリ目 | 科名 | カモメ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Charadriiformes | Family | Laridae |
| 和名 | オオセグロカモメ | ||
| 学名 | Larus schistisagus Stejneger, 1884 | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧ⅠB類(EN) 判定基準: A2
| 基準A: EN | 基準B: ― | 基準C: ― | 基準D: ― | 基準E: ― |
A2.過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて、50%以上の減少があったと推定され、その原因がなくなっていない、理解されていない、あるいは可逆的でない。 【比較年】 10年(世代時間不明) 【過去の状況】 モニタリングサイト1000調査の対象となっている大規模な営巣地および研究機関等により長期的な営巣数モニタリングが行われている営巣地合計6箇所のデータを集計した。利用可能な最新のデータから遡って約10年前(世代時間不明)の繁殖個体数はおよそ5,600と推定された。 営巣地および各地の調査時期:知床半島(2010年)、大黒島(2012年)、モユルリ島(2010年)、ユルリ島(2010年)、利尻島(2012年)、天売島(2009年) 【近年の状況】 上記の営巣地における利用可能な最新の繁殖個体数データを集計した。すべての営巣地において、1990年代以降に繁殖個体数は急減しており、約10年前(世代時間不明)からの繁殖個体数減少率はそれぞれ13~99%であり、6箇所すべての営巣地を平均すると67%であった。 営巣地および各地の調査時期:知床半島(2020年)、大黒島(2021年)、モユルリ島(2019年)、ユルリ島(2019年)、利尻島(2023年)、天売島(2020年)
3. 概要
かつては国内で普通に見られていた本種の、大規模な営巣地および長期的な営巣数モニタリングが行われている地点のほぼ全てにおいて、1990年代以降に個体数の急減が生じており、2000年代以降減少は加速している。これら主要な営巣地における3世代前からの繁殖個体数減少率は65%以上と推定される。個体数減少原因とされる捕食者(ノネコ、ドブネズミ、キツネやオジロワシ)、餌資源(浮魚類)の減少、人為的撹乱は現在除去されていない、またはより深刻になっており、今後も継続的な個体数減少が予想される。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
大型のカモメ科で、全長64 cm、翼長44.2 cm、嘴峰長56.0 mm、翼開長1.35 m、体重1265 gであり、オスの方がメスより大きく、体重はオス1336 gメス1123 g、嘴長はオス58.4 mmメス52.2 mmである。
【生活史】
雑食性。2~3月に繁殖地に飛来し、4月末から5月中旬に2~3卵を産み、25〜30日で孵化する。孵化してから45日以上で巣立つ。繁殖期にはイワシ類やイカナゴなどを自力で採餌するが、漁港で、又は漁船から投棄された底魚(ホッケ、メバル類、タラ類)、人間が投棄した大型魚類のアラ等もよく食べる。貝類やヒトデも食べるほか、人間の残飯も利用する。ウトウやウミネコなど他の種類の海鳥の卵やヒナも食べる。繁殖を終えると南下する個体が多い。
【生息・生育環境】
ほとんどの個体が海岸から沿岸海上に周年生息する。人やキツネ等の捕食者が近づけない孤島、崖地、離岸防波堤、建物の屋上などで主に集団繁殖する。枯れ草など巣材を集めた巣を作る。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_海岸部】田地・畑地,湿地・湿原,河川下流域,河口域,ため池・池沼,砂浜・礫浜,海崖・岩浜・岩礁(磯),汽水域,塩沼地・塩性湿地・河口干潟,潟・汽水湖,陸封潮溜まり(アンキアライン池・洞窟) 【海域(沿岸)_潮間帯 表層】海面,干潟 【海域(外洋)_表層】海面 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (4)河川・湿地地域,(5)沿岸域,(6)海洋域,(7)島嶼地域 |
【分布域】
主たる繁殖分布域は、沿海州、オホーツク海、カムチャツカ半島、サハリン、千島列島、北海道、本州北部の沿岸域である。越冬期は繁殖地に留まる個体と南下する個体がおり、日本では北海道から関東地方で多数が、それ以南で少数が越冬する。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
主要な繁殖地(100つがい以上が営巣した)としては、北海道では利尻島、礼文島トド島、天売島、知床半島、ユルリ・モユルリ島、大黒島、 網走港、紋別港、音標ゴメ島、浜中町霧多布周辺、釧路周辺、根室落石漁港、本州では青森県大間弁天島や陸奥弁天島がある。そのほか北海道沿岸や東北沿岸に繁殖地が散在するが、いずれも営巣規模は数巣~数十巣と多くはない。
【生息・生育地の現況】
北海道における主要な営巣地の環境に大きな変化はない。近年、それまでに営巣が確認されていなかった漁港の防波堤上や周辺の建物屋上などに営巣が見られるようになっている。
【個体数の現況】
北海道における主要な繁殖地の多くで、個体数が急減している。知床半島では2000年代に1500巣程度の繁殖があったが2010年代には半減し、2020年には325巣にまで減少した。大黒島では1997年には160巣(調査区画内)の繁殖があったが2000年代に半減し、2021年にはわずか1巣が確認されているのみである。モユルリ島では1990年代に最大223巣(調査区画内)が記録されたが2000年代以降激減し、2022年にはわずか22巣になった。ユルリ島では2007年に230巣(調査区画内)を記録したが以降激減し、2022年はわずか9巣になった。天売島では1990年代から2000年代にかけて1000巣程度の繁殖があったが、以降減少して2010年代には150~500巣程度に推移した。利尻島では2000年代に300~550程度の営巣があったが、2010年代以降は140~300程度に減少した。釧路周辺では1990年代に130巣程度繁殖があったが2016年には32巣に減少した。一方、礼文島トド島では2018年に428巣、根室落石漁港で2019年に279巣、網走港では2013年に493巣、同年紋別港で336巣、霧多布周辺で2010年代に330巣程度の繁殖が確認されるなど、漁港などで比較的大規模な繁殖が新たに確認されている。
存続を脅かす要因
イエネコやドブネズミによる捕食と撹乱、カラスによる卵や雛の捕食、およびオジロワシによる捕食や撹乱が確認されている。オジロワシによる捕食の影響程度は不明であるが、本種の繁殖地にオジロワシが長時間滞在することで親鳥が営巣や繁殖を放棄した事例は確認されている。餌となりうるホッケやイワシ類、イカナゴ等の魚類、あるいは投棄魚の減少なども考えられる。地域によっては人間による巣や卵の採集や撤去がなされているほか、繁殖地への立ち入りによる営巣の妨害も生じている。
| 要因の区分 | (過去) | 捕食(外来種による),捕食(在来種による),その他(人間による巣や卵の撤去、営巣の妨害),不明 |
|---|---|---|
| (現在) | 捕食(外来種による),捕食(在来種による),違法採集,その他(人間による巣や卵の撤去、営巣の妨害),不明 |
特記事項
特になし
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | オオセグロカモメ | Larus schistisagus | NT |
| 第4次 2019 | ― | ― | ― |
| 第4次 2018 | ― | ― | ― |
| 第4次 2017 | ― | ― | ― |
| 第4次 2015 | ― | ― | ― |
| 第4次 | ― | ― | ― |
| 第3次 | ― | ― | ― |
| 第2次 | ― | ― | ― |
| 第1次 | ― | ― | ― |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【北海道】準絶滅危惧(Nt),【岩手県】留意,【愛知県】準絶滅危惧(NT)(越冬),【岡山県】準絶滅危惧,【長崎県】情報不足(DD),【熊本県】情報不足(DD),【大分県】準絶滅危惧(NT)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
長谷部真,2015.北海道北西部の港におけるオオセグロカモメの人工物上での巣数.利尻研究,34: 33-35. 環境省自然環境局生物多様性センター,2015.重要生態系監視地域モニタリング推進事業(モニタリングサイト 1000)海鳥調査 第2期とりまとめ 報告書.環境省,富士吉田. 環境省自然環境局生物多様性センター,2023.2022年度モニタリングサイト 1000小島嶼(海鳥)調査報告書.環境省,富士吉田. 環境省自然環境局生物多様性センター,海鳥コロニーデータベース. http://www.sizenken.biodic.go.jp/seabirds/ Olsen, K. M. and H. Larsson, 2004. Gulls of Europe, Asia and North America (Helm Identification Guides), pp. 349-362. Helm, London. 佐藤文男,2022.日本の海鳥の現状と保全の課題―環境省モニタリングサイト1000海鳥調査から―.山階鳥類学雑誌,54: 3-53. Senzaki, M., A. Terui, N. Tomita, F. Sato, Y. Fukuda, Y. Kataoka and Y. Watanuki, 2019. Long-term declines in common breeding seabirds in Japan. Bird Conservation International, doi:10.1017/S0959270919000352. 渡辺義昭,2020.北海道オホーツク海沿岸における2013年の海鳥営巣数と2014年から2019年までのオオセグロカモメの営巣数増加.利尻研究,39: 27-31. 矢萩樹,2016.釧路市の港におけるオオセグロカモメの営巣状況.釧路市立博物館紀要,36: 31-34. 矢萩樹・貞國利夫,2017.釧路海岸における海鳥の繁殖記録.釧路市立博物館紀要,37: 45-48.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Larus schistisagus has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Larus schistisagus is listed as EN under criteria A2.
A. Reduction in population size based on any of the following: 2. An observed, estimated, inferred or suspected population size reduction of ≥50% over the last 10 years or three generations, whichever is the longer, where the reduction or its causes may not have ceased OR may not be understood OR may not be reversible.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Beach】Farmland, Wetland, Lower river basin, Estuary, Reservoir/Pond, Sandy beach/Pebble beach, Sea Cliff/Rocky beach/Reef, Brackish water, Salt marsh/Intertidal mudflat (including mangrove wetland), Lagoon/Brackish lake, Anchialine pool/Anchialine cave 【Marine area (Coastal area)_Intertidal zone, Surface water】Sea surface, Intertidal mudflat 【Marine area (Open sea)_Surface water】Sea surface |
|---|---|
| Threat types | Predation (by alien species), Predation (by native species), Illegal harvesting of biological resources, Other, Unknown |
| Law designation status for conservation | Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 風間健太郎(早稲田大学) |
| Author: | Kentaro Kazama |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月
©風間健太郎(早稲田大学)
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