評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報
| ⽬名 | コウノトリ目 | 科名 | コウノトリ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Ciconiiformes | Family | Ciconiidae |
| 和名 | コウノトリ | ||
| 学名 | Ciconia boyciana Swinhoe, 1873 | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧ⅠB類(EN) 判定基準: D
| 基準A: ― | 基準B: ― | 基準C: ― | 基準D: EN | 基準E: ― |
D.成熟個体数が250未満であると推定される個体群である。 【推定根拠】 足環により個体識別されている生存個体を対象とする。 1)リリース個体のうち、その個体の野外生まれの子が3歳以上に到達したことがある個体。 2)野外生まれで3歳以上の個体。 1)と2)の合計値を雌雄別々に計数し、雌雄の個体数の偏りを考慮して雌雄のうち少ない方の個体数を2倍した値を成熟個体数としたところ、126羽であった。
3. 概要
タンチョウ、アオサギと間違えられる大型の鳥である。日本の在来個体群は1971年に野生絶滅したが、現在でも大陸から少数個体が飛来・越冬している。2005年から開始された再導入計画で、2023年には日本の野外個体群は約370羽に増加している。世界的に絶滅のおそれのある本種の保全のためには、日本での存続可能な個体群の復活が鍵となり、そのためには、主な生息環境である里地・里山の自然環境の保全、再生、創出などが必要である。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
全長約110 cm、翼開長約200 cm。体部は白色、風切り羽は白の混じる黒色、嘴は黒色、脚は朱色。長い嘴、頸と脚を持つ。近縁種のナベコウ(Ciconia nigra)は体部が黒褐色、近似種のタンチョウ(Grus japonensis)は脚が黒色、アオサギ(Ardea cinerea)は体部が灰色である。
【生活史】
雌雄とも多くは孵化後4年目で繁殖を始め、一夫一妻で繁殖し、造巣、抱卵、育雛を雌雄が共同で行う。卵は抱卵開始後31~35日で孵化し、雛は最初の孵化から63~74日間巣に留まる。大陸の繁殖地では、4月中旬から下旬に産卵し、5月下旬から6月上旬に孵化し、7月下旬から8月上旬に巣立ちする。若鳥は集まって群れをつくり一緒に行動する。成鳥も含めて9月中旬から10月中旬に渡りを開始する。一方、越冬地では、10月中旬から12月に飛来し、翌年の3月初旬まで滞在する。日本の在来個体群では、大陸の個体群よりも早く2月中旬に造巣を始め、3月下旬から4月上旬に産卵し、4月下旬から5月上旬に孵化し、6月下旬から7月上旬に巣立ちしていた。また、はっきりした渡りは確認されていないが、冬季には個体数が少なくなる傾向があった。
【生息・生育環境】
餌となる魚類、両生類、甲殻類などが生息し、営巣地となる立木のある湿地を主な生息環境とする。大陸では、湿原、池沼、河川などに生息し、日本では、里山に囲まれた水田・河川のある里地に生息していた。2005年に再導入されて以降も水田・河川のある里地を主な生息環境としている。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_平地部】森林,田地・畑地,湿地・湿原,河川下流域 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (2)里地里山・田園地域,(4)河川・湿地地域 |
【分布域】
ロシアの極東南部と中国の東北部で繁殖し、中国の主に揚子江の中流域や韓国、台湾、日本などで越冬する。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
大陸では、2000年ごろから中国の越冬地での繁殖が確認されるようになっている。日本では、ソビエト連邦(現ロシア)から導入された野生個体や中国の動物園から導入された個体などを始祖とする飼育個体群が形成された。この飼育個体群を用いて、2005年から兵庫県で再導入が実施され、2015年からは福井県や千葉県野田市でも行われた。2006年に繁殖を始めた野外個体群は、2023年には12府県で繁殖している。また、2017年までに全ての都道府県で飛来が確認された。ごく少数ではあるが、日本に飛来する大陸産野生個体の中には、周年滞在するものも出現し、2009年には、再導入個体と繁殖を始めた。
【生息・生育地の現況】
大陸では、伐採・野火などによる営巣木の減少、干拓・排水・ダム建設・過大漁獲などによる餌生物の減少、農薬・原油・重金属などによる環境の汚染、道路建設、電線の設置、農業・漁業などの人間活動による攪乱などによって、本種の生息環境は減少・悪化している。日本では、湿原、湖沼、ため池などの干拓、排水や河川の護岸、直線化などによって水辺環境が減少・悪化し、また、谷津田や薪炭林の放棄などによって、本種の生息環境であった里地・里山が荒廃している。さらに、重要な採餌環境であった水田においても、圃場整備による乾田化、排水路との落差、水路のコンクリート三面張りや農薬の使用などによって、餌となる水生動物が絶滅・減少している。
【個体数の現況】
世界の個体数は約3,000羽と言われ、生息環境の減少・悪化や密猟などによって、減少傾向にあると推定された。その後新たに実施されたセンサスでは、10,300羽とされている。兵庫県立コウノトリの郷公園によると、2023年には国内の12府県で繁殖し約370羽に達している。
存続を脅かす要因
日本には、もともと在来の個体群が存在していたが、明治時代に、狩猟による乱獲で各地のコウノトリは次々と姿を消し、兵庫県の但馬地域と福井県の若狭地域にその分布は限られてしまった。その但馬地域では、非狩猟鳥や天然記念物に指定されて、一時、その個体数は回復したものの、生息環境の消失や悪化などにより再び減少し、それに伴う近親婚の増加と有機水銀を含む農薬の体内蓄積などによって、1971年に、日本産コウノトリは野生下で絶滅した。
| 要因の区分 | (過去) | 森林伐採,湖沼開発,河川開発,湿地開発,圃場整備,農薬汚染/化学物質汚染,捕獲・狩猟/園芸採取,近交弱勢,その他(乱獲、河川改修、農薬の使用、圃場整備) |
|---|---|---|
| (現在) | 森林伐採,湖沼開発,河川開発,湿地開発,圃場整備,農薬汚染/化学物質汚染,捕獲・狩猟/園芸採取,近交弱勢 |
特記事項
まず、主な生息環境である里地・里山の自然環境の保全、再生、創出などに取り組むことが望まれる。また、ロシア極東地方と中国東北部に主な繁殖地があり、そこから離れた朝鮮半島、日本列島でもかつて繁殖地が存在していたことと、現在、中国中南部の越冬地でも繁殖を始めるという習性から、本種は「局所個体群」が集まった「メタ個体群」という空間的・遺伝的構造をもつことで種を維持していたと考えられる。野生個体群の絶滅を防ぐためには、かつての繁殖個体群の復活、個体群の保全や個体の追加、生息適地への新たな個体群の創設などの取組みが重要になってくる。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | コウノトリ | Ciconia boyciana | CR |
| 第4次 2019 | コウノトリ | Ciconia boyciana | CR |
| 第4次 2018 | コウノトリ | Ciconia boyciana | CR |
| 第4次 2017 | コウノトリ | Ciconia boyciana | CR |
| 第4次 2015 | コウノトリ | Ciconia boyciana | CR |
| 第4次 | コウノトリ | Ciconia boyciana | CR |
| 第3次 | コウノトリ | Ciconia boyciana | CR |
| 第2次 | コウノトリ | Ciconia boyciana | CR |
| 第1次 | コウノトリ | Ciconia ciconia boyciana | E |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【北海道】絶滅危惧ⅠA類(Cr),【岩手県】絶滅危惧Ⅰ類,【山形県】絶滅危惧ⅠB類(EN),【埼玉県】絶滅(EX)(繁),【千葉県】消息不明・絶滅生物(X),【石川県】絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN),【福井県】県域絶滅危惧Ⅰ類,【愛知県】準絶滅危惧(NT)(越冬),【滋賀県】要注目種,【京都府】絶滅危惧種,【兵庫県】Aランク,【鳥取県】絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN),【島根県】情報不足(DD),【岡山県】絶滅危惧Ⅰ類,【山口県】絶滅危惧ⅠA類(CR),【愛媛県】情報不足(DD),【高知県】注目種,【福岡県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【熊本県】要注目種(AN),【大分県】絶滅危惧ⅠA類(CR),【沖縄県】絶滅危惧ⅠA類(CR)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
国内希少野生動植物種,国指定特別天然記念物,鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
BirdLife International, 2012. Ciconia boyciana. In: IUCN 2012.IUCN Red List of Threatened Species. Version 2012.2.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Ciconia boyciana has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Ciconia boyciana is listed as EN under criteria D.
D. Population size estimated to number fewer than 250 mature individuals.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Plain】Forest, Farmland, Wetland, Lower river basin |
|---|---|
| Threat types | Logging and wood harvesting, Lake development, River development, Wetland development, Field preparation, Pesticide/Toxic chemical pollution, Hunting and collecting animals/Gathering plants, Inbreeding depression |
| Law designation status for conservation | Nationally rare species of wild fauna and flora. Nationally Designated Special Natural Monument. Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 内藤和明(兵庫県立大学) |
| Author: | Kazuaki Naito |
| 協力者: | 大迫義人(兵庫県立大学) |
公開年月:2026年3月
©兵庫県立コウノトリの郷公園
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