評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報
| ⽬名 | ペリカン目 | 科名 | サギ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Pelecaniformes | Family | Ardeidae |
| 和名 | アマサギ | ||
| 学名 | Bubulcus ibis coromandus (Boddaert, 1783) | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧ⅠB類(EN) 判定基準: A2
| 基準A: EN | 基準B: ― | 基準C: ― | 基準D: ― | 基準E: ― |
A2.過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて、50%以上の減少があったと推定され、その原因がなくなっていない、理解されていない、あるいは可逆的でない。 【比較年】 10年(世代時間不明) 【過去の状況】 全国鳥類繁殖分布調査における1990年代(1997-2002年)の現地調査1947地点のうちの確認地点数は117地点であった。 【近年の状況】 全国鳥類繁殖分布調査における2010年代(2016-2021年)の現地調査1947地点のうちの確認地点数は38地点であった。
3. 概要
本州以南に夏鳥として渡来し、複数種から成るサギ類コロニーに最も遅く加わって繁殖する。水田やその周辺の畦畔、草地で、昆虫を中心にカエル、ザリガニ等の小動物を食べる。1990年代頃まで各地で多くの個体数が認められたが、その後、確認地点数や個体数が顕著に減少している。要因はわかっていないが、アオサギが新規形成した混合コロニーにおいてアマサギが必ずしも構成種とならない例が見受けられるようになってきている。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
全長46~56 cm、翼長25 cm、翼開長90 cm、体重375 g。雌雄同色。非繁殖期はほぼ全身白色。繁殖期には雌雄とも頭部から首と背中にオレンジ色(亜麻色)の飾り羽が伸びるが、飾り羽の出ない個体でも繁殖する場合はある。嘴と目先の裸出部、虹彩は黄色で、求愛期には朱色。脚は暗緑色から黒色。幼鳥は成鳥の非繁殖期に似る。シラサギ類の中で最も小型で、嘴や首、脚が短い。
【生活史】
日本では主に夏鳥で、本州では4月〜5月頃に渡来。集団繁殖性で、複数種で構成されるコロニーで繁殖し、留鳥のサギ類(アオサギ、ダイサギ、コサギ、ゴイサギの全て又はいずれか)が形成したコロニーに夏鳥のチュウサギが参入したのち、最後に参入する。繁殖期は4〜9月頃。一夫一妻で繁殖するが、つがい外交尾も知られる。雌雄とも抱卵・育雛する。巣は皿状で、小枝を組み合わせ、樹林や竹林の中ほどにかける。一腹卵数は2~7卵で、4卵のことが多い。卵は淡青緑色で無斑、楕円形(長径約45 mm、短径約32 mm)。産卵は1~2日に1個のペースで、初卵から抱卵し、抱卵期間は約24日。ヒナは非同時孵化し、巣上での育雛期間は約20日で、巣立ち後もしばらくはコロニー内で親から給餌を受ける。巣立ち率を下げる要因として、餌を巡るヒナ間競争や兄弟殺しが知られる。繁殖後の分散は8月頃から始まり、10月中旬頃まで各地で集団ねぐらをとって過ごした後、群れでフィリピンなど南方へ渡るが、国内でも西南日本など暖地を中心に越冬する。
【生息・生育環境】
平野部の水田、草地、河原、湖沼等。水辺を中心に生息するが、他の集団繁殖性サギ類と比べると畦畔や草地など乾いた場所を好んで採食する。海岸や干潟、河川ではほとんど採食しない。繁殖期は平地の樹林や竹林に他の集団繁殖性サギ類と混合でコロニーを形成して繁殖し、夜間もコロニーでねぐらをとる場合が多い。非繁殖期には河川や湖沼の岸の樹上や杭上、湿地等で集団ねぐらをとる。山間部はほとんど利用しない。イナゴ、バッタ等の昆虫や、カエルをよく食べ、トカゲ等も食べる。素早く歩きながら採餌し、水田ではトラクターの後ろをついて回りながら飛び出してきた昆虫等を捕らえる。数羽から十数羽の小群でまとまって採餌することが多い。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_平地部】草地,田地・畑地,耕作放棄地,市街緑地,河川下流域 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (4)河川・湿地地域 |
【分布域】
19〜20世紀に世界的に分布を拡大し、熱帯から温帯域に広く分布する世界で最も多いサギ。日本でみられるのは亜種Bubulcus ibis coromandusで、日本から朝鮮半島南部、中国南部、東南アジア、インド、オーストラリアで繁殖する。越冬期もほぼ同じ範囲でみられるが、日本や朝鮮半島、中国南部の個体は南へ渡る。国内では主に本州以南の水田地帯のある平野部を中心に分布している。他に亜種 Bubulcus ibis ibisがヨーロッパの一部と、アフリカ及び南北アメリカに広く分布する。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
1970年代と比べ、1990年代には東北地方へ分布がやや拡大した。その後は国内での分布に大きな変化はない。
【生息・生育地の現況】
住宅地付近に形成されたコロニーでの人との軋轢(鳴き声や糞による迷惑被害)や、河川敷に形成されたコロニー周辺での河川改修によって、営巣林が伐採される場合が見受けられる。越冬地での現況は不明である。
【個体数の現況】
1980年の全国アンケート調査では、37県・79ヶ所のコロニーで確認された集団繁殖性サギ類のうちアマサギは10%(約4,800個体)で、ゴイサギ、コサギに次いで3番目に個体数の多い種だった。1991~92年の全国調査でも、現地調査が行われた国内主要3地域のコロニーにおいてアマサギは22.1%を占めた。その後は全国規模の個体数調査は行われていないため、全国の個体数現況は明らかではないが、全国鳥類繁殖分布調査では1990年代と2010年代にほぼ同じコースを調査できた全国1,947地点のうち、アマサギの記録は117地点から38地点に大きく減った。茨城県のサギ類コロニーにおけるアマサギの推定個体数は2002〜2012年にかけて減少傾向で、約4,000個体から約2,000個体に半減した。
存続を脅かす要因
アマサギはバッタ等の昆虫や陸生のアマガエルをよく食べるため、水田の水生の小動物を主食とするチュウサギと比べて、水田の圃場整備による餌生物の減少の影響は受けなかったとされている。19〜20世紀の世界的な分布拡大からも、新たな生息地を見出し適応する能力に長けるとみられているが、国内で確認地点数や個体数が顕著に減少している原因はわかっていない。アマサギは集団繁殖性サギ類の中で最も集合性が強く、夏鳥で渡来が遅いためコロニー選択は他種が形成したコロニーに最後に参入するかたちであることから、アオサギの増加によるコロニー形成プロセスの変化等の影響を受けやすい可能性も考えられる。また、集団繁殖性サギ類に共通の要因としては、住宅地近隣に立地したコロニーでの人との軋轢による追払いや営巣林の伐採に伴う繁殖成功の低下の懸念がある。
| 要因の区分 | (過去) | 不明 |
|---|---|---|
| (現在) | その他(人との軋轢(営巣林伐採や追払い)),不明 |
特記事項
集団繁殖性サギ類ではアオサギ、及びダイサギの個体数が全国的に増加している。それに伴う大きな変化として、繁殖開始が最も早く単独性が強いアオサギがコロニー形成を先導するようになり、アオサギの好むスギ等の高木のある樹林がコロニー場所として選ばれるケースが増えてきている。アマサギのコロニー選択は、留鳥の他のサギ類が形成したコロニーに後から参入するかたちであるため、アマサギの個体数変化には他種も関わっている可能性がある。例えば茨城県内では、2000年代前半まではほとんどのコロニーで営巣林に竹を含んでおり、どのコロニーでも一定割合でアマサギが存在したが、アオサギの増加が顕著になってきた2005年頃から営巣林が樹木のみのコロニーが増え、アマサギを構成種にほとんど含まないコロニーもよく見られるようになった。コロニーにおけるサギ類の種間関係や、営巣木への選好性と繁殖成功との関係は十分に明らかになっていないが、コロニーの動態とあわせて、サギ類各種の個体数を注意深くモニタリングしていくことが望ましい。また、越冬地での環境変化等、国外での要因に関する情報収集も望まれる。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | ― | ― | ― |
| 第4次 2019 | ― | ― | ― |
| 第4次 2018 | ― | ― | ― |
| 第4次 2017 | ― | ― | ― |
| 第4次 2015 | ― | ― | ― |
| 第4次 | ― | ― | ― |
| 第3次 | ― | ― | ― |
| 第2次 | ― | ― | ― |
| 第1次 | ― | ― | ― |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【岩手県】留意,【山形県】準絶滅危惧(NT),【福島県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【茨城県】絶滅危惧Ⅱ類,【栃木県】絶滅危惧Ⅱ類(Bランク),【群馬県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【埼玉県】絶滅の恐れがある地域個体群(LP)(繁),【東京都(伊豆諸島)】準絶滅危惧(NT),【神奈川県】減少種(繁殖期),【滋賀県】要注目種,【京都府】準絶滅危惧種,【大阪府】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【広島県】情報不足(DD),【香川県】準絶滅危惧(NT),【福岡県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【大分県】準絶滅危惧(NT)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
Fujioka, M., 1985. Sibling competition and siblicide in asynchronously-hatching broods of the cattle egret Bubulcus ibis. Animal Behaviour, 33: 1228-1242. 環境庁自然保護局・(財)日本野鳥の会,1994.第4回自然環境保全基礎調査 動植物調査報告書(鳥類の集団繁殖地及び集団ねぐら).pp. 268.環境庁,東京. 清棲幸保,1978.日本鳥類大図鑑III.講談社,東京. Kushlan, J. A. and J. A. Hancock, 2004. The Herons. Oxford University Press, New York. Lane, S. J. and M. Fujioka, 1998. The impact of changes in irrigation practices on the distribution of foraging egrets and herons (Ardeidae) in the rice fields of central Japan. Biological Conservation, 83: 221-230. Mashiko, M. and Y. Toquenaga, 2014. Grey heron (Ardea cinerea) expansion promotes the persistence of mixed-species heron colonies. Waterbirds, 37: 362-370. Mashiko, M. and Y. Toquenaga, 2013. Increasing variation in population size and species composition ratio in mixed-species heron colonies in Japan. Forktail, 29: 71-77. 中島拓・江崎保男・中上喜史・大迫義人,2006.水田と河川、コウノトリ野生復帰地での餌場の相対的価値-豊岡盆地に生息するサギ類を指標として-.保全生態学研究,11: 35-42. 日本野鳥の会研究部,1981.アンケート法によるサギ類のコロニーと塒に関する調査.財団法人日本野鳥の会,東京.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Bubulcus ibis coromandus has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Bubulcus ibis coromandus is listed as EN under criteria A2.
A. Reduction in population size based on any of the following: 2. An observed, estimated, inferred or suspected population size reduction of ≥50% over the last 10 years or three generations, whichever is the longer, where the reduction or its causes may not have ceased OR may not be understood OR may not be reversible.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Plain】Grassland, Farmland, Abandoned farmland, Urban green area, Lower river basin |
|---|---|
| Threat types | Other, Unknown |
| Law designation status for conservation | Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 益子美由希(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構) |
| Author: | Miyuki Mashiko |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月
©益子美由希(農研機構)
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