評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報 日本固有
| ⽬名 | スズメ目 | 科名 | ウグイス科 |
|---|---|---|---|
| Order | Passeriformes | Family | Cettiidae |
| 和名 | ダイトウウグイス | ||
| 学名 | Horornis diphone restrictus Kuroda, 1923 | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧ⅠB類(EN) 判定基準: B2ab
| 基準A: ― | 基準B: EN | 基準C: ― | 基準D: ― | 基準E: ― |
B2.生息地面積が500 km²未満であると推定されるほか、次の兆候が見られる。 a) 生息地が過度に分断されているか、5以下の地点に限定されている。 【過度に分断】 全ての分布域が離島に限られているため、おのずと各生息地点は海域により分断されており、沖縄島を除けば、それぞれの島面積は狭く、生息環境もある程度限られているため、絶滅のリスクは常に比較的高い状態にあると考えられる。 b) 出現範囲、生息地面積、生息地の質、生息地点数、成熟個体数のいずれかに継続的な減少が推定・予測される。 【判断理由】 生息環境が薮地、低木混じりの草地などに限られることから、宅地開発や農耕地の造成などによって、生息地の減少が継続していると推測される。一方で、放棄された農地、樹林が伐採されて放置されている場所などは、新たな生息適地になりうることから、個体数の増減の実態を正確に把握するには、継続的な土地利用の実態調査を行わなければ難しい。
3. 概要
薮地、低木混じりの草地などに生息する。南大東島では1922年に雌雄各1個体ずつが採集されたのみで、その後、確認されず、絶滅したと考えられている。現在生息が確認されているのは、喜界島、沖永良部島、与論島、沖縄島、久米島、渡嘉敷島、座間味島の7島である。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
上面(頭、背、腰、尾羽)と翼は赤みのあるオリーブ褐色で、淡色の眉斑があり、下面は汚白色、脇は灰色みが強い。虹彩は暗褐色、上嘴は暗褐色、下嘴は黄色(wax yellow)で先端のみ褐色、脚はセピア色(Kuroda 1923、1925)。Kuroda(1923)による標本(タイプ)の測定値は以下のとおり。オス(黒田標本No. 7386):翼長65 mm、尾長68.5 mm、ふ蹠長24 mm、露出嘴峰長15 mm、全嘴峰長19 mm。メス(黒田標本No.7387):翼長54.5 mm、尾長57.5 mm、ふ蹠長21 mm、露出嘴峰長13.5 mm、全嘴峰長17 mm。羽色は亜種ハシナガウグイス(Horornis diphone diphone)に似るが、本亜種の方が測定値が大きい。体形は亜種ウグイス(Horornis diphone cantans)に似ているが、本亜種の方が測定上、嘴が長く、翼が短い。上面もより褐色みが強い。
【生活史】
鹿児島県喜界島では、主にネピアグラス、時々ススキや低木に営巣する。2008年に喜界島で行われた調査によると、1回の産卵数は3~5個で、5月に巣立ちが行われたとみられる事例や、5月に産卵し、6月初旬に卵または雛の捕食が起きたとみられる事例が確認された。亜種ウグイス(Horornis diphone cantans)と同様、オスが一夫多妻となる繁殖システムをもつと考えられる。
【生息・生育環境】
薮地、低木混じりの草地などに生息する。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_低標高地】森林,草地,耕作放棄地 【陸域_平地部 海岸部】森林,草地,耕作放棄地,市街緑地 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (1)奥山自然地域,(7)島嶼地域 |
【分布域】
南大東島では1922年に雌雄各1個体ずつが採集されたのみで、その後、確認されず、絶滅したと考えられている。近年の分布調査により、本亜種は喜界島、沖永良部島、与論島、沖縄島、久米島、渡嘉敷島、座間味島に分布することが明らかになった。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
近年の分布域の増大は、実際に分布域が拡大したものではなく、分布調査によって、本亜種の分布する島嶼が新たに判明したことによるものである。近年の実際の分布域の変化については確認されていない。
【生息・生育地の現況】
生息環境が薮地、低木混じりの草地などに限られることから、宅地開発や農耕地の造成などによって、生息地の減少が継続していると推測される。一方で、放棄された農地、樹林が伐採されて放置されている場所などは、新たな生息適地になりうる。
【個体数の現況】
不明。
存続を脅かす要因
森林伐採、草地の開発、植生遷移の進行が挙げられる。さらに、同種内別亜種の越冬渡来、繁殖分布域の拡大により、本亜種の生息数の増大、過去の繁殖域への再度の繁殖分布拡大が阻害されている可能性があるが、確証は得られていない。
| 要因の区分 | (過去) | 森林伐採,草地開発,遷移進行・植生変化/自然遷移,その他(同種内別亜種の越冬渡来、繁殖分布域の拡大により、生息数の増大、過去の繁殖域への再度の繁殖分布拡大が阻害されている可能性があるが、確証は得られていない。) |
|---|---|---|
| (現在) | 森林伐採,草地開発,遷移進行・植生変化/自然遷移,その他(同種内別亜種の越冬渡来、繁殖分布域の拡大により、生息数の増大、過去の繁殖域への再度の繁殖分布拡大が阻害されている可能性があるが、確証は得られていない。) |
特記事項
第4次レッドリストまでは、ダイトウウグイスは大東諸島の固有亜種として絶滅亜種とされていたほか、沖縄島、喜界島などで確認されていた「ウグイスの1亜種」がDDとして評価されていた。その後、 日本鳥類目録改訂第7版(日本鳥学会 2012)において、ダイトウウグイスと「ウグイスの1亜種」が同じ亜種と判断されたことに基づき、レッドリスト2017以降は、これらを統合して「ダイトウウグイス」として評価している。 他に種ウグイスの生息が確認されているが、なお、亜種レベルでは未同定であるものの、種ウグイスの生息が確認されている島嶼が複数あり、仮にこれらが本亜種であるとすれば、それを踏まえた本亜種の絶滅危険度の正確な判定と保全計画立案が必要であるため、今後の調査研究が待たれるところである。現状で、本亜種の可能性がある種ウグイスの生息が確認されている島嶼は、伊平屋島、伊是名島、津堅島、水納島、慶留間島、阿嘉島、屋嘉比島の7島で、いずれも沖縄県内である。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | ダイトウウグイス | Cettia diphone restricta | DD |
| 第4次 2019 | ダイトウウグイス | Cettia diphone restricta | DD |
| 第4次 2018 | ダイトウウグイス | Cettia diphone restricta | DD |
| 第4次 2017 | ダイトウウグイス | Cettia diphone restricta | DD |
| 第4次 2015 | ダイトウウグイス/ウグイスの1亜種 | Cettia diphone restricta/Cettia diphone ssp. | EX/DD |
| 第4次 | ダイトウウグイス | Cettia diphone restricta | EX |
| 第3次 | ダイトウウグイス | Cettia diphone restricta | EX |
| 第2次 | ダイトウウグイス | Cettia diphone restricta | EX |
| 第1次 | ダイトウウグイス | Cettia diphone restrictus | Ex |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
掲載なし
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
濱尾章二,2009.巣内に設置した温度データロガーによるダイトウウグイスの繁殖過程の推定.自然教育園報告,(40): 73-81. 濱尾章二,2010.南西諸島に生息するダイトウウグイス Cettia diphone restricta のなわばり性:電波発信機を用いた調査結果.自然教育園報告,(41): 35-47. 濱尾章二・鳥飼久裕,2011.奄美諸島喜界島の鳥類相.鹿児島県立博物館研究報告,(30): 59-64. 梶田学・真野徹・佐藤文男,2002.沖縄島に生息するウグイス Cettia diphone の二型について-多変量解析によるリュウキュウウグイスとダイトウウグイスの再評価-.山階鳥研報,32(2):148-167. 日本鳥学会,2012.日本鳥類目録改訂第7版.日本鳥学会,三田. 日本鳥学会,2024.日本鳥類目録改訂第8版.日本鳥学会,東京.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Horornis diphone restrictus has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Horornis diphone restrictus is listed as EN under criteria B2ab.
B2. Area of occupancy estimated to be less than 500 km², and estimate indicating at least two of a-c: a. Severely fragmented or known to exist at five or fewer locations. b. Continuing decline, observed, inferred or projected, in any of the following: (i) extent of occurrence (ii) area of occupancy (iii) area, extent and/or quality of habitat (iv) number of locations or subpopulations (v) number of mature individuals
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Low-altitude area】Forest, Grassland, Abandoned farmland 【Terrestrial/Freshwater area_Plain, Beach】Forest, Grassland, Abandoned farmland, Urban green area |
|---|---|
| Threat types | Logging and wood harvesting, Grassland development, Successional progression/Vegetation change/Natural succession, Other |
| Law designation status for conservation | Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 梶田学 |
| Author: | Manabu Kajita |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月