評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報 日本固有
| ⽬名 | スズメ目 | 科名 | センニュウ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Passeriformes | Family | Locustellidae |
| 和名 | オオセッカ | ||
| 学名 | Locustella pryeri pryeri (Seebohm, 1884) | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧ⅠB類(EN) 判定基準: B2ab
| 基準A: ― | 基準B: EN | 基準C: ― | 基準D: ― | 基準E: ― |
B2.生息地面積が500 km²未満であると推定されるほか、次の兆候が見られる。 a) 生息地が過度に分断されているか、5以下の地点に限定されている。 【過度に分断】 利根川下流域、仏沼、岩木川下流域の3箇所に繁殖個体群が集中している。河川改修等による河川敷の高水敷化、放棄水田の乾燥化によって好適な生息地は失われやすい。 【地点数】5地点以下 b) 出現範囲、生息地面積、生息地の質、生息地点数、成熟個体数のいずれかに継続的な減少が推定・予測される。 【判断理由】 利根川下流域では、放棄水田でも繁殖していたが、放棄水田の植生遷移による乾燥化のため放棄水田で繁殖する個体は減少している。また、河川敷の改修によって好適な低水敷が減少している。生息地の環境変化によって常に繁殖地(生息地点)は変化する。
3. 概要
スズメ(Passer montanus)より小さい鳥で、千葉県から茨城県にかけての利根川下流域、青森県の仏沼湿原や岩木川河口付近など、きわめて限られた湿原で繁殖し、ヨシが疎らに生えるスゲ類やイネ科の草原で営巣する。東北南部以南の積雪の少ない地方のヨシ原で越冬していると考えられる。推定生息数は約2,500羽である。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
全長約13 cm、嘴峰長10-13 mm、翼長51-58 mm、ふ蹠長17.5-21.5 mm、尾長51-61 mm。頭上、背、腰、上尾筒は黄茶褐色で、上尾筒を除いて黒い軸斑がある。尾羽は暗褐色で、黄褐色の羽縁がある。淡い不明瞭な眉斑があり、目の周辺も淡色。頬と耳羽は淡褐色。下面はだいたい白色で、胸側と脇は黄褐色。下尾筒はバフ色。翼は黒褐色で黄茶褐色の羽縁がある。嘴は褐色だが、成鳥オスは繁殖期に黒くなり、脚は淡褐色。
【生活史】
北日本では夏鳥であり、4月中旬頃に繁殖地に戻り、5月~8月にかけて繁殖し、9月末~10月にかけて渡去する。東北地方で繁殖した個体は関東地方で越冬する。一方、利根川下流域では留鳥であるが、一部の個体は房総から東海地方にかけての太平洋沿岸で越冬している。オスはさえずり飛翔を行いながら、435-4,100 m²の大きさの縄張りを構え、一夫多妻の配偶システムを持つ。オスは、繁殖期には草丈の高い草にとまってさえずったり、短いさえずり飛翔をする。ヒライなどの草の地表近くに、枯草や枯茎を材料にして楕円形の巣を作る。出入口は上側にある。一腹産卵数は5-6卵、卵は純白無斑で、メスだけが抱卵する。主にメイガ、コオロギ、ササキリなどの昆虫やクモを捕食する。巣造りおよび抱卵はメスのみが行い、雛への給餌は雌雄で行う。
【生息・生育環境】
海岸から遠くない湖沼周辺や河川沿いの、ヨシやススキなどのイネ科やイグサ科の生育する湿った草原で、主に草の中で生活をする。地上から30 cmくらいまでの高さのイ・スゲ・ススキ・チガヤなどの禾本類の根元に巣を作るため、スゲ属(Carex)やイ属(Juncus)等の下層植生が発達しているヨシの疎らな植生を好む。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_平地部】草地,河川下流域,ため池・池沼 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (2)里地里山・田園地域,(4)河川・湿地地域 |
【分布域】
種オオセッカ(Lucustella pryeri)はアジア東部の固有種であり、中国東北部からロシアの日本海沿岸にかけて分布するオナガオオセッカ(Lucustella pryeri sinensis)と、日本に局地的に生息するオオセッカ(Lucustella pryeri pryeri)が知られている。本亜種は日本の固有亜種とされる。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
主要な繁殖地は岩木川河口付近、仏沼湿原、利根川下流域の3地域である。
【生息・生育地の現況】
本亜種の生息地は、疎らにヨシの生育する草丈の低いスゲ類やイネ科草本の草地である。このような植生は、海岸や干拓地で土壌水分や放牧など土地利用形態と密接に結びついた特異な環境条件の元に成立していると考えられている。八郎潟干拓地と仏沼湿原は、干拓によって成立した場所である。利根川下流域の生息地は、河川敷の水田や放牧地として利用されていた場所が放置されて生息地となった。
【個体数の現況】
2001年に行われたセンサスでは、主要な繁殖地である岩木川流域に300羽、仏沼湿原に900羽、利根川下流域で1,200羽、その他の地域に100羽の合計2,500羽が生息すると推定された。仏沼では生息個体数の増加傾向が認められ、2009年には564羽のオスが確認され、生息数は1,100羽を超えたと考えられる。利根川流域でも生息地の拡大がみられ、過去に絶滅した八郎潟でも数羽が再確認されている。
存続を脅かす要因
生息環境となる植生は、水位変化や土砂の堆積によって容易に変化する。八郎潟干拓地の生息地は、植生遷移により消失したと考えられる。分布域が狭いため、河川敷の開発等による生息地の破壊で絶滅する可能性も高い。
| 要因の区分 | (過去) | 河川開発,遷移進行・植生変化/自然遷移 |
|---|---|---|
| (現在) | 河川開発,遷移進行・植生変化/自然遷移 |
特記事項
特になし
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | オオセッカ | Locustella pryeri pryeri | EN |
| 第4次 2019 | オオセッカ | Locustella pryeri pryeri | EN |
| 第4次 2018 | オオセッカ | Locustella pryeri pryeri | EN |
| 第4次 2017 | オオセッカ | Locustella pryeri pryeri | EN |
| 第4次 2015 | オオセッカ | Locustella pryeri pryeri | EN |
| 第4次 | オオセッカ | Locustella pryeri pryeri | EN |
| 第3次 | オオセッカ | Locustella pryeri pryeri | EN |
| 第2次 | オオセッカ | Locustella pryeri pryeri | EN |
| 第1次 | オオセッカ | Megalurus pryeri pryeri | V |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【青森県】最重要希少野生生物(Aランク),【岩手県】絶滅危惧Ⅰ類,【宮城県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【秋田県】絶滅危惧ⅠA類(CR),【山形県】情報不足(DD),【福島県】絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN),【茨城県】絶滅危惧ⅠB類,【栃木県】絶滅危惧Ⅰ類(Aランク),【埼玉県】情報不足(DD)(越),【千葉県】最重要保護生物(A),【東京都(本土部)】絶滅危惧ⅠA類(CR),【東京都(区部)】絶滅危惧ⅠA類(CR),【静岡県】絶滅危惧ⅠB類(EN),【愛知県】絶滅危惧ⅠB類(EN)(越冬),【岡山県】絶滅危惧Ⅰ類,【福岡県】情報不足(DD)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
国内希少野生動植物種,鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
Fujita, G. and H. Nagata, 1997. Breeding habitat characteristics of Japanese Marsh Warblers. Megalurus pryeri at Hotoke-numa reclaimed area, northern Honshu, Japan. J. Yamashina Inst. Ornithol., 29: 43-49. 金井裕・植田睦之,1994.オオセッカの生息地の分布と現状.pp. 1-7.環境庁. 小林豊・小山信行,2003.青森県岩木川下流域におけるオオセッカの繁殖期の個体数.Strix,21: 29-33. 永田尚志,1997.オオセッカの現状と保全への提言.山階鳥類研究所研究報告,29: 27-42. 永田尚志・上田恵介・古南幸弘,2003.利根川下流域におけるオオセッカの生息状況.Strix,21: 15-28. 中道里絵・上田恵介,2003.仏沼湿原におけるオオセッカ個体群の現状と生息地選好.Strix,21: 5-14. 西出隆,1993.八郎潟干拓地におけるオオセッカの生態3.個体数変動とその変動要因.Strix,12: 41-52. 高橋雅雄・宮彰男・津曲隆信・古川博,2010.仏沼における2007年から2009年のオオセッカの生息状況.おおせっからんど年報,2: 10-16. 高橋雅雄・宮彰男・古山隆・磯貝和秀・三戸貞夫,2022.九州地方におけるオオセッカLocustella pryeriの越冬状況.日本鳥学会誌,71: 197-201. 高橋雅雄・宮彰男・古山隆・三戸貞夫・日比野政彦,2023.中国四国地方におけるオオセッカLocustella pryeriの越冬状況.日本鳥学会誌,72: 235-239. 竹内健悟・東信行,2005.岩木川下流部におけるオオセッカの繁殖場所選択.野生生物保護,9: 59-68. 上田恵介,2003.日本にオオセッカは何羽いるのか.Strix,21: 1-3.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Locustella pryeri pryeri has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Locustella pryeri pryeri is listed as EN under criteria B2ab.
B2. Area of occupancy estimated to be less than 500 km², and estimate indicating at least two of a-c: a. Severely fragmented or known to exist at five or fewer locations. b. Continuing decline, observed, inferred or projected, in any of the following: (i) extent of occurrence (ii) area of occupancy (iii) area, extent and/or quality of habitat (iv) number of locations or subpopulations (v) number of mature individuals
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Plain】Grassland, Lower river basin, Reservoir/Pond |
|---|---|
| Threat types | River development, Successional progression/Vegetation change/Natural succession |
| Law designation status for conservation | Nationally rare species of wild fauna and flora. Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 永田尚志(新潟大学) |
| Author: | Hisashi Nagata |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月
©内田博(比企野鳥研究会)