評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報 日本固有
| ⽬名 | スズメ目 | 科名 | ツグミ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Passeriformes | Family | Turdidae |
| 和名 | アカコッコ | ||
| 学名 | Turdus celaenops Stejneger, 1887 | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧ⅠB類(EN) 判定基準: B1ab
| 基準A: ― | 基準B: EN | 基準C: ― | 基準D: ― | 基準E: ― |
B1.出現範囲が5000 km²未満であると推定されるほか、次の兆候が見られる。 a) 生息地が過度に分断されているか、5以下の地点に限定されている。 【過度に分断】 2018年から2024年にかけて、三宅島における10個体のアカコッコの1年間の移動状況を追跡した結果、9個体の位置情報は年間を通じて三宅島内で記録され、1個体のみ三宅島から40 km程度離れた神津島に1-2か月程度の短期間だけ滞在したこと、島間で色彩やさえずりに変異があることから、島毎に個体群が分断されている可能性がある。 b) 出現範囲、生息地面積、生息地の質、生息地点数、成熟個体数のいずれかに継続的な減少が推定・予測される。 【判断理由】 伊豆諸島の各島で繁殖記録があり、藤村(1948)によると、本種は伊豆七島のうち鳥島を除く各島に分布し繁殖するとされている。樋口(1973)による1970年から1973年にかけての調査では、調査地である伊豆大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、八丈小島、青ヶ島のうち、利島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島で巣が確認された。2019年に伊豆諸島の各島の鳥類観察者に対して行われたヒアリング調査(日本野鳥の会未発表)では、大島と神津島ではかつては繁殖していたが今は繁殖が確認できない、もしくは繁殖期以外の季節においても確認できる個体数が減少しているという回答が得られた。新島・式根島でも島内の鳥類観察者によって減少した可能性が指摘され、御蔵島でも減っているように感じるという回答があった。 また、2016年から2021年にかけて実施された東京都鳥類繁殖分布調査の現地調査では繁殖が確認されたのは三宅島と八丈島のみで、繁殖可能性が指摘されたのは御蔵島のみであった。 これらの結果から、本種の繁殖地は継続して減少している可能性が高いと考えられる。
3. 概要
本種は伊豆諸島とトカラ列島に留鳥として生息する日本固有種である。伊豆諸島南部の島で生息密度が高く、伊豆諸島北部やトカラ列島では生息密度は低い。常緑広葉樹の自然林で低木層がまばらな環境に多い。畑地のような地表面がひらけた環境も良く利用する。生息地となる森林の消失や分断化、耕作放棄地の増加が進み、生息環境は悪化しつつある。主要な生息地であった三宅島ではネズミ駆除を目的に導入されたニホンイタチ(以下、イタチ)と2000年に起きた火山活動により、個体数が大きく減少した。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
全長約23 cm。翼長12~13 cm。体重約80 g。オスは頭部が黒色で、胸部との境界は明瞭。メスはオスより淡色で、頭部と胸部の境界は不明瞭。胸部と腹部は赤褐色で、背面は赤みのあるオリーブ褐色。アカハラ(Turdus chrysolaus)によく似ているが、アカハラよりも羽色が濃い。トカラ列島の個体群は、伊豆諸島の個体群より濃色。
【生活史】
主に林床でミミズや昆虫類などを食べ、ハチジョウグワ、タブノキなどの実も食べる。4月~7月にかけてが繁殖期で、樹上に、木の細根やコケなどを用いて椀型の巣を作る。一腹卵数は3~4卵(最小2卵、最大5卵)が多い。繁殖期前半には日の出前や日没後の薄明薄暮の時間帯にさえずるが、繁殖期後半になると日中でもさえずるようになる。抱卵、雛への給餌とも雌雄で行う。雛への給餌内容はミミズが多く、そのほか昆虫類、ムカデ、果実なども与える。繁殖期以外には単独で生活する。
三宅島南部の大路池周辺でGPSロガーをもちいて行なわれた調査では、オスの成鳥は繁殖期が終わると雄山中腹に移動して秋から初冬を過ごし、厳冬期から晩冬にふたたび大路池周辺に戻ったのち翌春まで滞在して繁殖しており、季節的な移動が見られたほか、繁殖期後に三宅島から神津島に移動した例が確認された。また、冬期に伊豆半島や房総半島に移動する個体もあり、1996年に静岡県下田市で標識調査により確認された。
【生息・生育環境】
常緑広葉樹、落葉広葉樹の自然林から二次林まで広く生息しているが、常緑広葉樹の自然林で、低木層がまばらな環境で生息密度が高い。また、採食には特に落葉が堆積した開けた林床や道端をよく利用し、アシタバ畑など地表面が露出した環境も利用する。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_中標高地 低標高地】森林,草地,田地・畑地 【陸域_平地部】森林,草地,田地・畑地,農業用水路,小河川 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (2)里地里山・田園地域,(7)島嶼地域 |
【分布域】
伊豆諸島(鳥島を除く)とトカラ列島に分布する。静岡、千葉、東京、神奈川、埼玉、三重、鹿児島、男女群島、屋久島などでの観察記録もある。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
伊豆諸島では大島から青ヶ島にかけ留鳥として生息する。トカラ列島では中之島、口之島、諏訪之瀬島、悪石島、平島、宝島に分布するが、生息密度は低い。
【生息・生育地の現況】
主要な生息地である三宅島や八丈島、青ヶ島では常緑広葉樹、落葉広葉樹の自然林、二次林が道路工事などにより伐採や分断化され、生息環境は悪化しつつある。また、三宅島では2000年に起きた火山活動により、約6割の森林植生が消失、あるいは影響を受けた。山頂火口から放出される火山ガス量が低下するにつれて、植生は回復してきているが、まだ以前のような森林には戻っていない。御蔵島では良好な生息環境が保たれているが、イエネコによる捕食事例が報告されている。
【個体数の現況】
三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島など伊豆諸島南部の島では生息密度が高く、新島、神津島など伊豆諸島北部の島では生息密度が低い。主要な生息地であった三宅島では、農業被害を起こすネズミの駆除を目的に1982年頃にイタチが人為的に導入され、個体数が急減した。イタチ放獣前は、1 km×50 mあたり平均28羽が観察されていたが、放獣後は平均9羽と約1/3になり、繁殖成功率も放獣前の約80%から約7%へと下がった。三宅島では2009年以降、環境別のルートセンサス法をもちいた簡易的な個体数推定が実施されており、2009年には約4,400羽、2016年に約7,800羽、2019年に約7,600羽、2020年に5,900羽、2021年と2022年にはそれぞれ推定12,200羽、推定11,000羽と10,000羽を超えたが、2023年には約8,500羽、2024年に9,600羽と推定されている。
存続を脅かす要因
三宅島では人為的に導入されたイタチにより個体数が急減した。その他の島では、青ヶ島では1975年に、過去には利島、八丈島でもイタチが放獣されており、個体群に影響を及ぼしたと考えられる。また、近年、森林伐採や道路工事にともなう生息地の消失、分断化が進みつつある。三宅島では2000年に起きた火山活動により約6割の森林が消失あるいは影響を受け、森林の回復がまだ十分ではない。さらに、離農に伴う畑地の藪化によって採食に適した開けた環境が減少している。
| 要因の区分 | (過去) | 森林伐採,交通インフラ建設,捕食(外来種による),自然災害 |
|---|---|---|
| (現在) | 森林伐採,交通インフラ建設,捕食(外来種による),管理放棄,自然災害 |
特記事項
本種は、最近DNA分析により、アカハラにごく近縁であることが明らかになったが、生態的に不明な点が多い。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | アカコッコ | Turdus celaenops | EN |
| 第4次 2019 | アカコッコ | Turdus celaenops | EN |
| 第4次 2018 | アカコッコ | Turdus celaenops | EN |
| 第4次 2017 | アカコッコ | Turdus celaenops | EN |
| 第4次 2015 | アカコッコ | Turdus celaenops | EN |
| 第4次 | アカコッコ | Turdus celaenops | EN |
| 第3次 | アカコッコ | Turdus celaenops | EN |
| 第2次 | アカコッコ | Turdus celaenops | VU |
| 第1次 | アカコッコ | Turdus celaenops | V |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【千葉県】最重要保護生物(A),【東京都(伊豆諸島)】絶滅危惧ⅠB類(EN),【静岡県】情報不足(DD),【長崎県】情報不足(DD),【鹿児島県】絶滅危惧Ⅰ類
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
国内希少野生動植物種,国指定天然記念物,鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
江崎逸郎・篠木秀紀・山本裕・浦達也,2010.三宅島におけるアカコッコの個体数の推定.Miyakensis,13: 15-22. 長谷川雅美,1986.三宅島へのイタチの放獣 その功罪.採集と飼育,46: 444-447. 樋口広芳,1973.伊豆諸島の鳥類(Ⅰ)繁殖陸鳥の分布と生息環境.鳥,22: 14-24. 鹿児島県,1987.鹿児島県の野鳥.鹿児島県保健環境部,鹿児島.99pp. Kawaji, N., H. Higuchi and H. Hori, 1989. A new breeding record of the Izu Island thrush Turdus celaenops from Tokara Islands, southwest Japan. Bull. B. O. C., 109(2): 93-95. 望月英夫,1993.伊豆大島でのアカコッコの繁殖.鳥,41(1): 22-23. 日本鳥学会,2024.日本鳥類目録改訂第8版.日本鳥学会,東京.506pp. 西海功,2012.DNAバーコーディングと日本の鳥の種分類.日本鳥学会誌,61(2): 223-237. 迫静男,1991.トカラ列島の鳥相.トカラ列島学術調査報告書,pp. 118-166.鹿児島県. 田尻浩伸・手嶋洋子・山本裕・鈴木敏祥・内藤明紀,2019.三宅島で繁殖するアカコッコの周年の移動経路.日本鳥学会2019年度大会講演要旨集,p.122. 高木昌興・樋口広芳,1992.伊豆諸島三宅島におけるアカコッコTurdus celaenopsの環境選好とイタチ放獣の影響.Strix,11: 47-57. 手嶋洋子・内藤明紀・大久保香苗・田尻浩伸,2017.三宅島のアカコッコの総個体数の推定2016~三宅島のアカコッコは増えているのか減っているのか~.Miyakensis,20: 3-11. 手嶋洋子・内藤明紀・鈴木敏祥・田尻浩伸,2020.三宅島のアカコッコの総個体数の推定値<2020年度速報>.Miyakensis,23: 161-168. 手嶋洋子・内藤明紀・田尻浩伸,2022.2022年の調査に基づく三宅島のアカコッコの総個体数の推定値.Miyakensis,25: 35-44. 手嶋洋子・田尻浩伸・内藤明紀・小寺泰聖,2023.2023年の調査に基づく三宅島のアカコッコの総個体数の推定値.Miyakensis,26: 3-11. 手嶋洋子・田尻浩伸・内藤明紀・小寺泰聖,2024.2024年の調査に基づく三宅島のアカコッコの総個体数の推定値.Miyakensis,27: 3-10. 徳吉美国・岡奈理子・亘悠哉,2019.イエネコによるアカコッコ雛の捕食(データ番号: momo191005fs02b),動物行動の映像データベース(http://www.momo-p.com/index.phpμmmovieid=momo191005fs02b&embed=on),参照2025-09-10. 植田睦之・佐藤望,2021.東京都鳥類繁殖分布調査報告 2016-2021.特定非営利法人 バードリサーチ,府中.177pp.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Turdus celaenops has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Turdus celaenops is listed as EN under criteria B1ab.
B1. Extent of occurrence estimated to be less than 5,000 km², and estimates indicating at least two of a-c: a. Severely fragmented or known to exist at five or fewer locations. b. Continuing decline, observed, inferred or projected, in any of the following: (i) extent of occurrence (ii) area of occupancy (iii) area, extent and/or quality of habitat (iv) number of locations or subpopulations (v) number of mature individuals
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Mid-altitude area, Low-altitude area】Forest, Grassland, Farmland 【Terrestrial/Freshwater area_Plain】Forest, Grassland, Farmland, Agricultural ditch, Small river |
|---|---|
| Threat types | Logging and wood harvesting, Transportation infrastructure construction, Predation (by alien species), Abandonment of management, Natural disasters |
| Law designation status for conservation | Nationally rare species of wild fauna and flora. Nationally Designated Natural Monument. Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 田尻浩伸(公益財団法人日本野鳥の会) |
| Author: | Hironobu Tajiri |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月
©田尻浩伸((公財)日本野鳥の会)
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