評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報
| ⽬名 | チドリ目 | 科名 | シギ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Charadriiformes | Family | Scolopacidae |
| 和名 | ハマシギ | ||
| 学名 | Calidris alpina (Linnaeus, 1758) | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 判定基準: A2
| 基準A: VU | 基準B: ― | 基準C: ― | 基準D: ― | 基準E: ― |
A2.過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて、30%以上の減少があったと推定され、その原因がなくなっていない、理解されていない、あるいは可逆的でない。 【比較年】 10年(世代時間不明) 【過去の状況】 直近のモニタリングサイト1000シギ・チドリ類調査2004-2017年度 とりまとめ報告(2020)では、Amano et al. 2010と同様の分析を行い、最大個体数指標を算出した。2000年を基準値1.00とし、2007年時点で、平均1.18(春期1.08、秋期1.32、冬期1.15)。 【近年の状況】 直近のモニタリングサイト1000シギ・チドリ類調査2004-2017年度 とりまとめ報告(2020)では、Amano et al. 2010と同様の分析を行い、最大個体数指標を算出した。2000年を基準値1.00とし、2017年時点で、平均0.60(春期0.39、秋期0.83、冬期0.57)。継続して春期・秋期とも減少傾向が見られている。特に春期の減少が著しい。
3. 概要
長く下にやや曲がった嘴をもつ小型のシギ類。繁殖羽では、頭頂、背部は赤褐色地の黒色の斑、胸は白色地に黒褐色の縦斑をもち、腹部に大きな黒斑をもつ。足は黒。非繁殖羽は頭頂部から背面が灰褐色、眉斑喉から腹部にかけて白色。国内で繁殖せず、主に旅鳥、冬鳥として飛来する。越冬期は最も個体数が多く観察される。沿岸の干潟、砂浜、潟湖や内陸の水田、河川などを採食地として利用する。個体数は減少傾向にある。サハリンで繁殖する亜種は個体数が少ない。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
全長約20 cm。長く下にやや曲がった嘴をもつ小型のシギ類。オスの繁殖羽では、頭頂、背部は赤褐色地の黒色の斑、胸は白色地に黒褐色の縦斑があり、腹部に大きな黒色斑がある。足は黒い。非繁殖羽は頭頂部から背面が灰褐色、眉斑喉から腹部にかけて白色。飛翔時、白色の翼帯がみえ雌雄同色。幼鳥は、全体に褐色味があり、腹部は白色時に黒褐色の縦斑。ミユビシギの嘴はより短く、非繁殖羽は全体により白い。サルハマシギは、くちばしがより長くさらに湾曲する。世界では、9~10亜種に分類されている。
【生活史】
国内では繁殖せず、渡り鳥、冬鳥として春期、秋期、冬期に全国で観察される。繁殖期は、5月〜7月、一夫一妻で繁殖するが、同時的一夫二妻、継時的一妻多夫などの記録がある。草原ツンドラや泥炭草原ツンドラなどの湿性の草原に住み、小丘状の乾いた部分で営巣する。巣は、草や灌木の根元に浅い窪みをつくり、枯草や蘚苔を敷く。一腹卵数は3〜4個で、通常4個産卵する。雌雄交代で抱卵し、雌雄で育雛を行う。水生昆虫の幼虫、ミミズ、ゴカイ、ヨコエビなどの甲殻類を食べる。非繁殖期には群れで生活する。
【生息・生育環境】
渡り期や越冬期は、海岸の砂浜、干潟、水溜まり、潟湖、溜池、水を張った水田、内陸の湖沼や大きい河川の砂泥地に生息する。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_平地部 海岸部】田地・畑地,湿地・湿原,砂地・礫地,河川中流域,河川下流域,河口域,ため池・池沼,潟・湖・ダム湖,砂浜・礫浜,汽水域,塩沼地・塩性湿地・河口干潟,潟・汽水湖 【海域(沿岸)_潮間帯】干潟,砂底・礫底,泥底 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (2)里地里山・田園地域,(4)河川・湿地地域,(5)沿岸域 |
【分布域】
国外では、ユーラシア、北アメリカの極北沿岸で繁殖し、ヨーロッパ、アフリカ北部、中東、中国の沿岸、北アメリカ東・西沿岸で越冬する。国内では、春・秋の渡り期に干潟を中心とした各地の湿地で観察され、越冬期には、本州以南の各地に優占する。
なお国内では、シベリア東部で繁殖する亜種ハマシギ(Calidris alpina sakhalina)、主に越冬していると考えられるアラスカで繁殖する亜種キタアラスカハマシギ(Calidris alpina arcticola)が確認されているが、亜種の分布については再検討の必要がある。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
現況でも全国的に確認されるが、湿地、陸水域、海岸などの水辺に限られるため、生息環境の消失は国内分布に影響を与えている可能性がある。
【生息・生育地の現況】
干潟や湿原の減少により利用可能な生息地が減少している。1945年以後の消失干潟の累計は33,120 ha、1945年から2005年の間の60年間の干潟の消滅率は40%になる(花輪 2006)。
【個体数の現況】
IUCNのレッドリストでは、低危険種(Least Concern)とされている。WaterbirdsPopulations Portal(Wetland International)では、東アジアのフライウェイで国内に渡来する可能性のある亜種は4亜種。
亜種Calidris alpina kistchinskii は、約10万~100万羽、傾向は不明、旅鳥。
亜種Calidris alpina arcticola は、約30.4万~69.6万羽、減少傾向、国内で主に越冬する亜種とされる。
亜種Calidris alpina sakhalina は、約10万~100万羽、傾向は不明、旅鳥。
亜種Calidris alpina actites は、約900羽、旅鳥で傾向は不明だが、絶滅が危惧されている。
2008年を基準としたモニタリング調査の結果を用いた研究では、ハマシギの春期の推定変化率は、-54.74%(30年前比:有意)、-23.83%(20年前比)、-6.75%(10年前比)、秋期の推定変化率は、-81.79%(30年前比:有意)、-47.90%(20年前比:有意)、32.49%(10年前比)(Amano et al. 2010)であり、春期・秋期とも著しい減少を示していた。
直近のモニタリングサイト1000シギ・チドリ類調査2004-2017年度 とりまとめ報告(2020)では、Amano et al. 2010と同様の分析を行い、最大個体数指標を算出した。2000年を基準値1.00とし、2007年時点で、平均1.18(春期1.08、秋期1.32、冬期1.15)、2017年時点で、平均0.60(春期0.39、秋期0.83、冬期0.57)。継続して春期・秋期とも減少傾向が見られている。
存続を脅かす要因
干潟・湿地の開発による採餌場所、餌動物の減少。農耕地の乾田化、放棄水田の草地化、農法や農業環境の変化による生息地の減少。越冬地での狩猟・捕獲による個体数減少も懸念されている。長距離の渡りを行う種に関しては、国内のみに減少の要因を求めることが困難な場合もあり、繁殖地、中継地、越冬地それぞれに脅威がある。
| 要因の区分 | (過去) | 湖沼開発,河川開発,海岸開発,湿地開発,圃場整備 |
|---|---|---|
| (現在) | 湖沼開発,河川開発,海岸開発,湿地開発,圃場整備 |
特記事項
日本に渡来するガンカモ類やシギ・チドリ類などの渡り性水鳥類が利用する主要な渡来地については、河川湖沼84ヶ所のうち41.7%が保護区域未指定、干潟・湿地152ヶ所のうち66.7%が保護区域未指定であり、干潟・湿地を利用する鳥が多数訪れる場所については保護指定が遅れている現状が指摘されている(三上ら 2012)。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | ハマシギ | Calidris alpina | NT |
| 第4次 2019 | ハマシギ | Calidris alpina | NT |
| 第4次 2018 | ハマシギ | Calidris alpina | NT |
| 第4次 2017 | ハマシギ | Calidris alpina | NT |
| 第4次 2015 | ハマシギ | Calidris alpina | NT |
| 第4次 | ハマシギ | Calidris alpina | NT |
| 第3次 | ― | ― | ― |
| 第2次 | ― | ― | ― |
| 第1次 | ― | ― | ― |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【北海道】準絶滅危惧(Nt),【宮城県】準絶滅危惧(NT),【山形県】準絶滅危惧(NT),【福島県】準絶滅危惧(NT),【茨城県】準絶滅危惧,【栃木県】準絶滅危惧(Cランク),【群馬県】情報不足(DD),【千葉県】重要保護生物(B),【東京都(本土部)】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【東京都(区部)】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【東京都(北多摩)】絶滅危惧ⅠB類(EN),【東京都(南多摩)】絶滅危惧ⅠB類(EN),【東京都(西多摩)】絶滅危惧ⅠB類(EN),【神奈川県】絶滅危惧Ⅱ類(非繁殖期),【新潟県】準絶滅危惧(NT),【福井県】要注目,【長野県】準絶滅危惧(NT),【静岡県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【愛知県】絶滅危惧Ⅱ類(VU)(越冬),【三重県】絶滅危惧ⅠB類(EN),【京都府】絶滅危惧種,【兵庫県】Cランク,【奈良県】希少種,【島根県】準絶滅危惧(NT),【岡山県】準絶滅危惧,【広島県】準絶滅危惧(NT),【高知県】準絶滅危惧(NT),【福岡県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【長崎県】絶滅危惧ⅠA類(CR),【熊本県】準絶滅危惧(NT),【大分県】準絶滅危惧(NT),【宮崎県】準絶滅危惧(NT-g),【鹿児島県】準絶滅危惧,【沖縄県】準絶滅危惧(NT)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
Amano, T., Székely, T., Koyama, K., Amano, H. and Sutherland, W. J. 2010. A framework for monitoring the status of populations: an example from wader populations in the East Asian-Australasian flyway. Biological Conservatioin, 143: 2238-2247.
花輪伸一,2006.日本の干潟の現状と未来.地球環境,11 (2): 235-244.
IUCN 2023. The IUCN Red List of Threatened Species. Version 2022-2.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Calidris alpina has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Calidris alpina is listed as VU under criteria A2.
A. Reduction in population size based on any of the following: 2. An observed, estimated, inferred or suspected population size reduction of ≥30% over the last 10 years or three generations, whichever is the longer, where the reduction or its causes may not have ceased OR may not be understood OR may not be reversible.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Plain, Beach】Farmland, Wetland, Sandy area/Gravelly area, Middle river basin, Lower river basin, Estuary, Reservoir/Pond, Lagoon/Lake/Dam, Sandy beach/Pebble beach, Brackish water, Salt marsh/Intertidal mudflat (including mangrove wetland), Lagoon/Brackish lake 【Marine area (Coastal area)_Intertidal zone】Intertidal mudflat, Sandy bottom/Gravelly bottom, Muddy bottom |
|---|---|
| Threat types | Lake development, River development, Coastal development, Wetland development, Field preparation |
| Law designation status for conservation | Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 守屋年史(バードリサーチ) |
| Author: | Toshifumi Moriya |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月
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