評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報
| ⽬名 | チドリ目 | 科名 | カモメ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Charadriiformes | Family | Laridae |
| 和名 | ウミネコ | ||
| 学名 | Larus crassirostris Vieillot, 1818 | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 判定基準: A2
| 基準A: VU | 基準B: ― | 基準C: ― | 基準D: ― | 基準E: ― |
A2.過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて、30%以上の減少があったと推定され、その原因がなくなっていない、理解されていない、あるいは可逆的でない。 【比較年】 10年(世代時間不明) 【過去の状況】 モニタリングサイト1000調査の対象となっている大規模な営巣地および研究機関等により長期的な営巣数モニタリングが行われている営巣地合計8箇所のデータを集計した。利用可能な最新のデータから遡って約10年前(世代時間不明)の繁殖個体数はおよそ132,000と推定された。 営巣地および各地の調査時期:利尻島(2006年)、天売島(2011年)、枝幸(2011年)、知床半島(2010年)、経島(2007年)、飛島(2009年)、ユルリ島(2004年)、蕪島(2011年) 【近年の状況】 上記の営巣地における利用可能な最新の繁殖個体数データを集計した。営巣地のすべてにおいて、1990年代以降に繁殖個体数は急減しており、8箇所の営巣地のうち2箇所は消滅した。残存する営巣地においても10年前からの繁殖個体数減少率は16~53%であり、8箇所すべての営巣地を平均すると42%であった。 営巣地および各地の調査時期:利尻島(2016年)、天売島(2020年)、枝幸(2021年)、知床半島(2020年)、経島(2016年)、飛島(2019年)、ユルリ島(2013年)、蕪島(2019年)
3. 概要
かつては国内で普通に見られていた、本種の大規模な営巣地および長期的な営巣数モニタリングが行われているものほぼ全てにおいて、1990年代以降に個体数の急減が生じており、2000年代以降減少は加速している。これら主要な営巣地のいくつかは現在消滅し、10年前からの繁殖個体数減少率は50%に迫ると推定される。個体数減少原因とされる捕食者(ノネコ、ドブネズミ、キツネやオジロワシ)の増加、餌資源(浮魚類)の減少、人為的撹乱は現在除去されていないか、またはより深刻化しており、今後も継続的な個体数減少が予想される。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
全長44~48 cm、翼開長は120~128 cm、体重はオスが462~640 g、メスが436~615 g程度の中型のカモメ類である。
【生活史】
雑食性。2~3月に繁殖地に飛来し、4月末から5月中旬に1~3卵を産み、25〜30日で孵化する。孵化してから30~35日以上で巣立つ。繁殖期にはオキアミ類、イカナゴやイワシ類、魚卵や頭足類などを自力で採餌するほか、漁港や漁船から投棄された魚類もよく食べる。陸上でセミやアブなどの昆虫類も食べる。繁殖を終えると南下する個体が多い。
【生息・生育環境】
ほとんどの個体が海岸から沿岸海上に周年生息する。人やキツネ等の捕食者が近づけない孤島、崖地、離岸防波堤、建物の屋上などで主に集団繁殖する。枯れ草など巣材を集めた巣を作る。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_海岸部】田地・畑地,湿地・湿原,河川下流域,河口域,砂浜・礫浜,海崖・岩浜・岩礁(磯),汽水域,潟・汽水湖 【海域(沿岸)_潮間帯 表層】海面,岩礁(磯) 【海域(外洋)_表層】海面 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (3)都市地域,(4)河川・湿地地域,(5)沿岸域,(6)海洋域,(7)島嶼地域 |
【分布域】
中国、韓国、ロシア、日本沿岸にのみ集団繁殖する分布域の狭い海鳥である。日本では北海道から九州の沿岸部の小島嶼、及び伊豆諸島、甑島列島、男女群島で繁殖する。冬期は全国各地でみられる。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
本種の集団繁殖地は国内に多数あり、繁殖規模は数十羽から数万羽である。佐藤(2022)に以下の記載がある。「モニ1000海鳥調査(2010~2017)では、最大数として天売島では802巣(2016年)、知床半島では0巣(2015年)、モユルリ島では5,000羽(2017年)、松前小島では2,310羽(2016年)、尻屋弁天島では300 羽(2009 年)、蕪島では15,550巣(2016年)、種差海岸では837巣(2007年)、足島では21,263巣(2016 年)、飛島では2,034巣(2014年)、祗苗島では509巣(2014年)、沓島では1,752巣(2010年)、経島では242巣(2014年)とされている。モニ1000海鳥調査以外の繁殖地として、北海道焼尻島 2013年では67巣、利尻島では1990年に1,605巣、目梨泊では2008年に285巣、青森県大間弁天島では2012年に4,792巣、岩手県椿島では2万~3万羽、青松島、及び宮城県双子島では営巣数情報なし、秋田県男鹿市では41巣、新潟県粟島他営巣、石川県七ツ島では営巣数不明、福井県南越前町で1995年に200羽、営巣は少数と推定、八丈小島では2011年に200羽、営巣数不明、和歌山県御坊市では1,000羽以上、島根県では県指定天然記念物沖蛇島のウミネコ繁殖地があるが、生息数に関する文献は確認されていない。山口県で少数が、大分県高島で数千羽、長崎県男女群島では2010年に280羽、鹿児島県甑島営巣数不明などが知られる。」そのほか、新潟県佐渡市では2020年に合計約2,000巣、村上市で2018年に394巣、粟島では2019年に210巣の繁殖が報告されている。
【生息・生育地の現況】
主要な営巣地において生息地の環境に大きな変化はないものの、各地で在来・外来の捕食者が増加している。
【個体数の現況】
全国各地の大規模な営巣地において1990年代以降に個体数の急減が生じており、2000年代以降減少は加速している。直近の10年ほどで北海道および本州の島嶼にある数百~数万巣の営巣地の大部分で営巣数は半減し、うち知床半島やユルリ島では数百巣の営巣地が消滅した。近年、北海道大黒島や新潟県において新たな営巣地が確認されているが、営巣数は最大でも2,000巣程度であり、大規模営巣地における減少数を補う規模ではない。
存続を脅かす要因
イエネコやドブネズミによる捕食と撹乱、カラスによる卵や雛の捕食、およびオジロワシによる捕食や撹乱が確認されている。オジロワシによる捕食の影響程度は不明であるが、本種の繁殖地にオジロワシが長時間滞在することで親鳥が営巣や繁殖を放棄した事例は確認されている。餌となりうるイカナゴ、ホッケ、イワシ類等の魚類、あるいは投棄魚の減少なども考えられる。地域によっては人間による巣や卵の採集や撤去がなされているほか、繁殖地への立ち入りによる営巣の妨害も生じている。
| 要因の区分 | (過去) | 不明 |
|---|---|---|
| (現在) | 捕食(外来種による),捕食(在来種による),その他(人間による巣や卵の撤去、営巣の妨害) |
特記事項
特になし
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | ― | ― | ― |
| 第4次 2019 | ― | ― | ― |
| 第4次 2018 | ― | ― | ― |
| 第4次 2017 | ― | ― | ― |
| 第4次 2015 | ― | ― | ― |
| 第4次 | ― | ― | ― |
| 第3次 | ― | ― | ― |
| 第2次 | ― | ― | ― |
| 第1次 | ― | ― | ― |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【北海道】準絶滅危惧(Nt),【岩手県】留意,【山形県】絶滅のおそれのある地域個体群(LP)(飛島と周辺の島々の繁殖個体群),【東京都(本土部)】留意種,【東京都(区部)】留意種,【福井県】絶滅のおそれのある地域個体群,【京都府】要注目種,【和歌山県】学術的重要(SI),【山口県】準絶滅危惧(NT),【大分県】地域個体群(LP)(高島のウミネコ繁殖個体群),【鹿児島県】分布特性上重要
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
環境省自然環境局生物多様性センター,2015.重要生態系監視地域モニタリング推進事業(モニタリングサイト 1000)海鳥調査 第2期とりまとめ 報告書.環境省,富士吉田. 環境省自然環境局生物多様性センター,2021.モニタリングサイト1000 小島嶼(海鳥)調査 2004-2018 年度とりまとめ報告書.環境省,富士吉田. 環境省自然環境局生物多様性センター,2023.2022年度モニタリングサイト 1000小島嶼(海鳥)調査報告書.環境省,富士吉田. 環境省自然環境局生物多様性センター,海鳥コロニーデータベース.http://www.sizenken.biodic.go.jp/seabirds/ 大門純平・伊藤元裕・綿貫豊,2019.北海道大黒島における海鳥の現状.山階鳥学誌,51: 95-104. Olsen, K. M. and H. Larsson, 2004. Gulls of Europe, Asia and North America (Helm Identification Guides), pp. 33-39. Helm, London. 佐藤文男,2022.日本の海鳥の現状と保全の課題―環境省モニタリングサイト1000海鳥調査から―.山階鳥類学雑誌,54: 3-53. Senzaki, M., A. Terui, N. Tomita, F. Sato, Y. Fukuda, Y. Kataoka and Y. Watanuki, 2019. Long-term declines in common breeding seabirds in Japan. Bird Conservation International, doi:10.1017/S0959270919000352.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Larus crassirostris has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Larus crassirostris is listed as VU under criteria A2.
A. Reduction in population size based on any of the following: 2. An observed, estimated, inferred or suspected population size reduction of ≥30% over the last 10 years or three generations, whichever is the longer, where the reduction or its causes may not have ceased OR may not be understood OR may not be reversible.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Beach】Farmland, Wetland, Lower river basin, Estuary, Sandy beach/Pebble beach, Sea Cliff/Rocky beach/Reef, Brackish water, Lagoon/Brackish lake 【Marine area (Coastal area)_Intertidal zone, Surface water】Sea surface, Reef 【Marine area (Open sea)_Surface water】Sea surface |
|---|---|
| Threat types | Predation (by alien species), Predation (by native species), Other |
| Law designation status for conservation | Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 風間健太郎(早稲田大学) |
| Author: | Kentaro Kazama |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月
©風間健太郎(早稲田大学)
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