評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報
| ⽬名 | ペリカン目 | 科名 | サギ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Pelecaniformes | Family | Ardeidae |
| 和名 | ゴイサギ | ||
| 学名 | Nycticorax nycticorax nycticorax (Linnaeus, 1758) | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 判定基準: A2
| 基準A: VU | 基準B: ― | 基準C: ― | 基準D: ― | 基準E: ― |
A2.過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて、30%以上の減少があったと推定され、その原因がなくなっていない、理解されていない、あるいは可逆的でない。 【比較年】 10年(世代時間不明) 【過去の状況】 全国鳥類繁殖分布調査における1990年代(1997-2002年)の現地調査1947地点のうちの確認地点数は236地点であった。 【近年の状況】 全国鳥類繁殖分布調査における2010年代(2016-2021年)の現地調査1947地点のうちの確認地点数は93地点であった。 ただし、アンケートによる情報を含む記録メッシュ数では250メッシュから180メッシュと減少率が低く、夜行性のゴイサギにおいては現地調査では記録できないことも多いと考えられることから、メッシュ数の変化をふまえて50%以上ではなく、30%以上を選択した。
3. 概要
留鳥。主に本州以南で、単独又は複数種から成るコロニーで繁殖する。河川、池、水田等の浅い水辺で魚類、ザリガニ、カエル等の小動物を食べ、コロニー内でネズミ等の小型哺乳類やサギ類のヒナを食べる場合もある。近年、目撃数の減少傾向が顕著となっている。要因はわかっていないが、アオサギが新規形成した混合コロニーにおいてゴイサギが必ずしも主要な構成種とならない例が見受けられている。主に夜行性で、ゴイサギ単独のコロニーは発見しにくいといった目撃しにくさが減少傾向の報告につながっている可能性も排除できず、集団繁殖性サギ類の中でも特に注意深く個体数をモニタリングしていく必要がある。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
全長約57.5 cm、翼開長110 cm、体重400〜800 g。雌雄同色。成鳥は頭頂から肩、背にかけて青緑色を帯びた深い紺色、翼上面と尾は灰色、顔から腹は白又は明るい灰色。後頭部に白い冠羽が2本前後伸びる。嘴は黒色で、非繁殖期には基部がやや黄色。目先の裸出部は灰黄緑色で、求愛期には紺色。虹彩は赤色。脚は黄色で、求愛期には赤みがかった濃い桃色。幼鳥は全体に褐色で、翼上面は褐色に汚白色の斑が、腹は汚白色に褐色の縦斑が入る。嘴は暗色で基部は黄色。目先の裸出部と脚は黄緑色。虹彩は黄色。2年かけて成鳥羽になる。
【生活史】
日本では留鳥又は夏鳥。集団繁殖性で、ゴイサギのみ、又は他のサギ類やカワウと混合でコロニーを形成する。繁殖期は4〜7月頃。一夫一妻で繁殖し、雌雄とも抱卵・育雛する。巣は皿状で、小枝を組み合わせ、樹林や竹林の中ほどの高さにかける。一腹卵数は3~6卵。卵は淡青緑色で無斑、楕円形(長径43.5~55 mm、短径32.8~37 mm)。産卵は1~2日に1個のペースで、初卵から抱卵し、抱卵期間は21~27日。ヒナは非同時孵化し、巣上での育雛期間は約28日で、巣立ち後もしばらくはコロニー内で親から給餌を受ける。繁殖後は分散し、集団ねぐらをとる。基本的に夜行性だが、繁殖期は日中も活動する。
【生息・生育環境】
海岸から内陸の水辺。河川、湖沼、水田、干潟等の浅い水辺で、ドジョウやフナ等の魚類を中心に、カエル、ザリガニ、昆虫等を食べる。コロニー内でネズミ等の小型哺乳類や、同種又は他種のサギ類のヒナを食べる場合もある。流れの速い河川はあまり利用しないが、養魚池や公園、庭等の小さな池も利用する。じっと待ち構えたり、ゆっくり歩きながら採餌したりと、採食環境や餌内容への柔軟性は高い。繁殖期は平地の樹林や竹林にコロニーを形成して繁殖する。非繁殖期にはヨシ原や、水辺の茂った樹林や竹林の中で小群や大群で集団ねぐらをとる。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_平地部 海岸部】田地・畑地,耕作放棄地,湿地・湿原,市街緑地,河川中流域,河川下流域,河口域,ワンド,農業用水路,小河川,ため池・池沼,潟・湖・ダム湖,塩沼地・塩性湿地・河口干潟,潟・汽水湖 【海域(沿岸)_潮間帯】干潟 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (3)都市地域,(4)河川・湿地地域 |
【分布域】
日本でみられるのは基亜種Nycticorax nycticorax nycticoraxで、ヨーロッパ、アフリカ、中東、アジア、南北アメリカに広く分布する。日本では本州から九州に分布し、東北では主に夏鳥、それ以南では留鳥。海岸から内陸の河川や水田等の水辺に沿って分布している。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
1990年代以降は北海道や南西諸島でも繁殖や越冬が確認され、国内の分布域を拡大したことがうかがえる。
【生息・生育地の現況】
住宅地付近に形成されたコロニーでの人との軋轢(鳴き声や糞による迷惑被害)や、河川敷に形成されたコロニー周辺での河川改修によって、営巣林が伐採される場合が見受けられる。
【個体数の現況】
かつては各地のサギ類コロニーの優占種だったとみられ、1980年の全国アンケート調査では、37県・79ヶ所のコロニーで確認された集団繁殖性サギ類のうちゴイサギは約50%(約23,800個体)を占めて最も個体数が多かった。しかし1991~92年の全国調査では、現地調査が行われた国内主要3地域のコロニーにおいてゴイサギの占める割合は24.5%だった。その後は全国規模の個体数調査は行われていないため、全国の個体数現況は明らかではない。ただし、狩猟捕獲数は1925年に45,633個体だったが、1990年は狩猟登録者数が倍増したにもかかわらず7,364個体で、個体数が減少している可能性が指摘された。茨城県では、2002〜2012年のサギ類コロニーにおけるゴイサギの推定個体数は年による変動が大きく、2,000〜7,000個体で推移し増減の傾向は認められなかった。全国鳥類繁殖分布調査では1990年代と2010年代にほぼ同じコースを調査できた全国1,947地点のうち、ゴイサギの記録は236地点から93地点に減少した。
存続を脅かす要因
ゴイサギの採食に適した浅瀬のある小河川等の水辺環境は、河川改修や湖沼の護岸化を受けて悪化している例もあるが、自然再生等で良好な状態に維持・創出されている例もある。ゴイサギは都市部や山間部の小さな水辺も利用し、ほかに水田や養魚池、干潟でも採食するため、比較的柔軟に採食場所を選んでいると思われる。その中で個体数が減少している要因は十分わかっていないが、小型魚類を食べる水鳥ではコサギ、コアジサシ、カイツブリ等でも減少傾向が知られ、小型魚類が大型の外来魚等の増加により減少している可能性が指摘されている。ほかに、集団繁殖性サギ類に共通の要因として、住宅地近隣に立地したコロニーでの人との軋轢による追払いや営巣林の伐採に伴う繁殖成功の低下が懸念される。
| 要因の区分 | (過去) | 不明 |
|---|---|---|
| (現在) | 湖沼開発,河川開発,湿地開発,その他(人との軋轢(営巣林伐採や追払い)),不明 |
特記事項
ゴイサギはゴイサギのみのコロニーを形成する場合も少なくなく、留鳥のシラサギ類(ダイサギ、コサギ)よりも比較的単独性がありコロニー場所選択を先導する能力にも富むと考えられ、以前はサギ類混合コロニーの形成を先導する役割を多くの場合でゴイサギが担っていたと予想されている。近年、アオサギが全国的に増加して以降は、繁殖開始が最も早く単独性が強いアオサギがコロニー形成を先導するようになり、アオサギの好むスギ等の高木のある樹林がコロニー場所として選ばれるケースが増えてきている。茨城県内では、ゴイサギはアオサギが形成したコロニーに加わる場合も多い一方、ゴイサギのみの小規模コロニーを付近の竹林に別途形成した場合も確認されている。ゴイサギのみのコロニーは、シラサギ類やアオサギとの混合コロニーと比べて、隠蔽色で日中の出入りが少なく容易に目に付かない。アオサギを含むコロニーではゴイサギの構成比は必ずしも大きくなくなり、結果としてゴイサギが調査者に目撃されにくくなってきているという近年の変化も、全国鳥類繁殖分布調査でのゴイサギ記録地点数の顕著な減少の背景の一因となっている可能性が排除できない。サギ類各種の個体数はコロニーの動態とあわせて注意深くモニタリングしていくことが望ましいが、中でもゴイサギは他種よりも観察しにくく、個体数評価が難しいことを理解しておくことが重要である。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | ― | ― | ― |
| 第4次 2019 | ― | ― | ― |
| 第4次 2018 | ― | ― | ― |
| 第4次 2017 | ― | ― | ― |
| 第4次 2015 | ― | ― | ― |
| 第4次 | ― | ― | ― |
| 第3次 | ― | ― | ― |
| 第2次 | ― | ― | ― |
| 第1次 | ― | ― | ― |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【岩手県】準絶滅危惧,【宮城県】準絶滅危惧(NT),【群馬県】準絶滅危惧(NT),【東京都(本土部)】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【東京都(区部)】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【東京都(北多摩)】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【東京都(南多摩)】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【東京都(西多摩)】準絶滅危惧(NT),【静岡県】要注目種(N-Ⅲ 部会注目種),【愛知県】準絶滅危惧(NT)(繁殖),準絶滅危惧(NT)(越冬),【三重県】情報不足(DD),【滋賀県】希少種,【奈良県】希少種,【鳥取県】準絶滅危惧(NT),【広島県】情報不足(DD),【福岡県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【長崎県】準絶滅危惧(NT),【宮崎県】準絶滅危惧(NT-g)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
林吉彦・田中正彦・津村英男・藤巻裕蔵,2010.北海道南部におけるゴイサギの繁殖.山階鳥類学雑誌,41(2): 204-206. 環境庁自然保護局・(財)日本野鳥の会,1994.第4回自然環境保全基礎調査 動植物調査報告書(鳥類の集団繁殖地及び集団ねぐら).環境庁,東京. 清棲幸保,1978.日本鳥類大図鑑III.講談社,東京. Kushlan, J. A. and J. A. Hancock, 2004. The Herons. Oxford University Press, New York. Mashiko, M. and Y. Toquenaga, 2013. Increasing variation in population size and species composition ratio in mixed-species heron colonies in Japan. Forktail, 29: 71-77. Mashiko, M. and Y. Toquenaga, 2014. Grey heron (Ardea cinerea) expansion promotes the persistence of mixed-species heron colonies. Waterbirds, 37: 362-370. 成末雅恵,1992.埼玉県におけるサギ類の集団繁殖地の変遷.Strix,11: 189-209. 日本野鳥の会研究部,1981.アンケート法によるサギ類のコロニーと塒に関する調査.財団法人日本野鳥の会,東京. 嶋崎太郎,2004.オホーツク地方におけるゴイサギの越冬初記録.Strix,22: 197-199. 植田睦之・植村慎吾,2021.自然環境保全基礎調査 全国鳥類繁殖分布調査報告 日本の鳥の今を描こう 2016-2021年.176pp. 鳥類繁殖分布調査会,東京.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Nycticorax nycticorax nycticorax has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Nycticorax nycticorax nycticorax is listed as VU under criteria A2.
A. Reduction in population size based on any of the following: 2. An observed, estimated, inferred or suspected population size reduction of ≥30% over the last 10 years or three generations, whichever is the longer, where the reduction or its causes may not have ceased OR may not be understood OR may not be reversible.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Plain, Beach】Farmland, Abandoned farmland, Wetland, Urban green area, Middle river basin, Lower river basin, Estuary, Inlet, Agricultural ditch, Small river, Reservoir/Pond, Lagoon/Lake/Dam, Salt marsh/Intertidal mudflat (including mangrove wetland), Lagoon/Brackish lake 【Marine area (Coastal area)_Intertidal zone】Intertidal mudflat |
|---|---|
| Threat types | Lake development, River development, Wetland development, Other, Unknown |
| Law designation status for conservation | Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 益子美由希(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構) |
| Author: | Miyuki Mashiko |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月
©益子美由希(農研機構)
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