評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報
| ⽬名 | ペリカン目 | 科名 | サギ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Pelecaniformes | Family | Ardeidae |
| 和名 | コサギ | ||
| 学名 | Egretta garzetta garzetta (Linnaeus, 1766) | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 判定基準: A2 +付加的事情
| 基準A: EN | 基準B: ― | 基準C: ― | 基準D: ― | 基準E: ― |
A2.過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて、50%以上の減少があったと推定され、その原因がなくなっていない、理解されていない、あるいは可逆的でない。 【比較年】 10年(世代時間不明) 【過去の状況】 全国鳥類繁殖分布調査における1990年代(1997-2002年)の現地調査1947地点のうちの確認地点数は239地点であった。 【近年の状況】 全国鳥類繁殖分布調査における2010年代(2016-2021年)の現地調査1947地点のうちの確認地点数は93地点であった。 以上のように基準を形式的に適用し、絶滅危惧ⅠB類(EN)と判定されたが、次の付加的事情を考慮すると、形式的なカテゴリー判定結果は、本種の絶滅のおそれを過大評価していると考えられるため、カテゴリーを1段階引き下げる。 【考慮すべき付加的事情の種類】 4) その他 【具体的理由】 コサギは、全国鳥類繁殖分布調査における確認地点数が大きく減少したほか、長期データのある茨城県・埼玉県等で個体数の減少が報告されており、減少傾向は明らかと考えられる。一方で、現在も全国に広く分布し、一定の個体数は認められている。また、東京都では、全国鳥類繁殖分布調査の調査地ではなかった都心部での記録の増加が報告されており、小河川や公園の池等に少数の個体が散在して生息している状況が伺えるため、全国でも、同全国調査で把握されなかった小河川等で一定の個体数が生息している可能性が考えられる。そのため、カテゴリーを1つ調整した。
3. 概要
留鳥。主に本州以南で、複数種から成るコロニーで繁殖する。河川、河口干潟、水田等の浅い水辺で小型魚類、ザリガニ等の小動物を食べる。1990年代頃まで各地で多くの個体数が認められたが、その後減少しており、餌資源である小型魚類が大型の外来魚の増加により減少したことなどが要因と指摘されている。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
全長約61 cm、翼長23〜30 cm、翼開長約98 cm、体重350〜650 g。雌雄とも全身白色。繁殖期には雌雄とも胸や背にレース状の飾り羽が伸びて先端がややカールし、頭部には冠羽が伸びる。嘴は繁殖期・非繁殖期とも黒色。目先の裸出部は黄色で、求愛期には赤みがかった濃い桃色。虹彩は黒色。脚は黒色、指は黄色で求愛期には赤みがかった濃い桃色。足指の黄色の範囲は個体差が大きい。
【生活史】
日本では主に留鳥。集団繁殖性で、多くの場合は他のサギ類と混合でコロニーを形成する。繁殖期は4〜7月頃。一夫一妻で繁殖し、雌雄とも抱卵・育雛する。巣は皿状で、小枝を組み合わせ、樹林や竹林の中ほどの高さにかける。一腹卵数は3~7卵。卵は淡青緑色で無斑、楕円形(長径35.5~48.8 mm、短径34.5~35.5 mm)。産卵は1~2日に1個のペースで、初卵から抱卵し、抱卵期間は22~24日。ヒナは非同時孵化し、巣上での育雛期間は約28日で、巣立ち後もしばらくはコロニー内で親から給餌を受ける。繁殖後は分散し、集団ねぐらをとる。
【生息・生育環境】
海岸から内陸の水辺。河川、湖沼、水田、干潟等の浅い水辺で、ドジョウ等の魚類、カエル、ザリガニ、昆虫等を食べる。素早く、又はゆっくり歩きながら採餌する他に、じっと待ち構えたり、足を小刻みに動かして獲物を追い出して捕らえたりする。流れのある河川も利用する。繁殖期は平地の樹林や竹林に多くは他の集団繁殖性サギ類と混合でコロニーを形成して繁殖し、夜間もコロニーでねぐらをとる場合が多い。非繁殖期には河川や湖沼の岸の樹上や杭上、湿地等で集団ねぐらをとる。山間部の水辺でも見られる一方で、都市域の小河川や公園等の小さな池も利用する。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_平地部 海岸部】田地・畑地,耕作放棄地,湿地・湿原,市街緑地,河川中流域,河川下流域,河口域,ワンド,農業用水路,小河川,ため池・池沼,潟・湖・ダム湖,塩沼地・塩性湿地・河口干潟,潟・汽水湖 【海域(沿岸)_潮間帯】干潟 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (3)都市地域,(4)河川・湿地地域 |
【分布域】
日本でみられるのは基亜種Egretta garzetta garzettaで、ヨーロッパ、アフリカ、中東、アジアに分布する。日本では主に本州以南で留鳥として生息するが、年間を通じて同じ地域に留まる個体と、日本国内で地域的な移動をする個体やフィリピンなど南方へ渡って越冬する個体がいる。海岸から内陸の河川や水田等の水辺に沿って分布している。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
国内では1970年代以降、山間部の盆地や北日本での個体数が増え、分布が拡大傾向であった。その後は国内の分布に大きな変化はない。ただし、全国各地で個体数が多かった以前の状態と比較すると、現在では個体数の比較的多い場所は偏在するようになってきている。同じ地域の中でも、東京都では大河川での記録が減少した一方、都心部の小河川や公園の池等では記録が増加し、小規模な水辺に少数の個体が散在して生息する分布傾向に変わってきている可能性が考えられる。
【生息・生育地の現況】
住宅地付近に形成されたコロニーでの人との軋轢(鳴き声や糞による迷惑被害)や、河川敷に形成されたコロニー周辺での河川改修によって、営巣林が伐採される場合が見受けられる。
【個体数の現況】
かつてはシラサギ類の中で最も普通に見られる種で、個体数は1970年代以降に一時増加傾向にあったとされるが、1990〜2000年代からは減少傾向に転じている。茨城県のサギ類コロニーにおけるコサギの推定個体数は2000年代前半では2,000個体前後だったが、次第に減少し、2011年には1,000個体を割った。埼玉県では、河川や水田での採餌個体数、コロニーでの個体数とも1970〜2015年にかけて減少した。栃木県、宮城県でも採食環境での個体数の減少傾向が報告されている。全国鳥類繁殖分布調査では1990年代と2010年代にほぼ同じコースを調査できた全国1,947地点のうち、コサギの記録は239地点から93地点に減り、全国での減少傾向が伺われる。
存続を脅かす要因
コサギの採食に適した浅瀬のある小河川等の水辺環境は、河川改修や湖沼の護岸化を受けて悪化している例もあるが、自然再生等で良好な状態に維持・創出されている例もある。コサギは都市部や山間部の小さな水辺も利用し、ほかに水田や干潟でも採食するため、比較的柔軟に採食場所を選んでいると思われる。その中で個体数が減少している要因としては、コサギの好む小型魚類が大型の外来魚等の増加により減少している可能性や、オオタカの個体数回復による捕食圧の増加が考えられている。ほかに、集団繁殖性サギ類に共通の要因として、住宅地近隣に立地したコロニーでの人との軋轢による追払いや営巣林の伐採に伴う繁殖成功の低下が懸念される。
| 要因の区分 | (過去) | 不明 |
|---|---|---|
| (現在) | 湖沼開発,河川開発,湿地開発,捕食(在来種による),その他(人との軋轢(営巣林伐採や追払い)) |
特記事項
集団繁殖性サギ類ではアオサギ、及びダイサギの個体数が全国的に増加している。それに伴う大きな変化として、繁殖開始が最も早く単独性が強いアオサギがコロニー形成を先導するようになり、アオサギの好むスギ等の高木のある樹林がコロニー場所として選ばれるケースが増えてきている。コサギは多くの場合は他種との混合コロニーで繁殖しており、コサギの個体数変化には他種も関わっている可能性がある。例えば茨城県内では、2000年代前半まではほとんどのコロニーで営巣林に竹を含んでおり、どのコロニーでも一定割合でコサギが存在したが、アオサギの増加が顕著になってきた2005年頃から営巣林が樹木のみのコロニーが増え、コサギを構成種にほとんど含まないコロニーも散見されるようになった。コロニーにおけるサギ類の種間関係や、営巣木への選好性と繁殖成功との関係は十分に明らかになっていないが、コロニーの動態とあわせて、サギ類各種の個体数を注意深くモニタリングしていくことが望ましい。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | ― | ― | ― |
| 第4次 2019 | ― | ― | ― |
| 第4次 2018 | ― | ― | ― |
| 第4次 2017 | ― | ― | ― |
| 第4次 2015 | ― | ― | ― |
| 第4次 | ― | ― | ― |
| 第3次 | ― | ― | ― |
| 第2次 | ― | ― | ― |
| 第1次 | ― | ― | ― |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【岩手県】留意,【宮城県】準絶滅危惧(NT),【福島県】準絶滅危惧(NT),【栃木県】絶滅危惧Ⅱ類(Bランク),【群馬県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【埼玉県】準絶滅危惧2型(NT2)(繁),【千葉県】重要保護生物(B),【東京都(本土部)】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【東京都(区部)】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【東京都(北多摩)】準絶滅危惧(NT),【東京都(南多摩)】準絶滅危惧(NT),【東京都(西多摩)】準絶滅危惧(NT),【東京都(伊豆諸島)】準絶滅危惧(NT),【新潟県】準絶滅危惧(NT),【福井県】県域絶滅危惧Ⅱ類,【長野県】準絶滅危惧(NT),【滋賀県】要注目種,【鳥取県】準絶滅危惧(NT),【福岡県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【長崎県】情報不足(DD)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
井上良和,1996.コサギ.樋口広芳・森岡弘之・山岸哲(編),日本動物大百科 3 鳥類I,pp. 45-47.平凡社,東京. 環境庁自然保護局・(財)日本野鳥の会,1994.第4回自然環境保全基礎調査 動植物調査報告書(鳥類の集団繁殖地及び集団ねぐら).環境庁,東京. 河地辰彦,2004.栃木県におけるコサギとダイサギの生息状況の変化について.Accipiter,10: 27-36. 清棲幸保,1978.日本鳥類大図鑑III.講談社,東京. Kushlan, J. A. and J. A. Hancock, 2004. The Herons. Oxford University Press, New York. Mashiko, M. and Y. Toquenaga, 2013. Increasing variation in population size and species composition ratio in mixed-species heron colonies in Japan. Forktail, 29: 71-77. Mashiko, M. and Y. Toquenaga, 2014. Grey heron (Ardea cinerea) expansion promotes the persistence of mixed-species heron colonies. Waterbirds, 37: 362-370. 成末雅恵,1992.埼玉県におけるサギ類の集団繁殖地の変遷.Strix,11: 189-209. 日本野鳥の会研究部,1981.アンケート法によるサギ類のコロニーと塒に関する調査.財団法人日本野鳥の会,東京. 嶋田哲郎・進東健太郎・高橋清孝・Aaron Bowman,2005.オオクチバス急増にともなう魚類群集の変化が水鳥群集に与える影響.Strix,23: 39-50. 植田睦之・植村慎吾,2021.自然環境保全基礎調査 全国鳥類繁殖分布調査報告 日本の鳥の今を描こう 2016-2021年.176pp. 鳥類繁殖分布調査会,東京. 植田睦之・佐藤望,2021.東京都鳥類繁殖分布調査報告 2016-2021.pp. 34, 171.特定非営利法人バードリサーチ,東京. 内田博,2017.埼玉県東松山市周辺でのコサギEgretta garzettaの減少.日本鳥学会誌,66: 111-122.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Egretta garzetta garzetta has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Egretta garzetta garzetta was formally listed as EN under criteria A2.
A. Reduction in population size based on any of the following: 2. An observed, estimated, inferred or suspected population size reduction of ≥50% over the last 10 years or three generations, whichever is the longer, where the reduction or its causes may not have ceased OR may not be understood OR may not be reversible. However, after taking additional factors into consideration, the risk of extinction for this species was considered to be overestimated. Therefore, the formal listing was revised to VU.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Plain, Beach】Farmland, Abandoned farmland, Wetland, Urban green area, Middle river basin, Lower river basin, Estuary, Inlet, Agricultural ditch, Small river, Reservoir/Pond, Lagoon/Lake/Dam, Salt marsh/Intertidal mudflat (including mangrove wetland), Lagoon/Brackish lake 【Marine area (Coastal area)_Intertidal zone】Intertidal mudflat |
|---|---|
| Threat types | Lake development, River development, Wetland development, Predation (by native species), Other |
| Law designation status for conservation | Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 益子美由希(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構) |
| Author: | Miyuki Mashiko |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月
©益子美由希(農研機構)
©益子美由希(農研機構)