評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報
| ⽬名 | タカ目 | 科名 | タカ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Accipitriformes | Family | Accipitridae |
| 和名 | オジロワシ | ||
| 学名 | Haliaeetus albicilla albicilla (Linnaeus, 1758) | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 判定基準: D1
| 基準A: ― | 基準B: ― | 基準C: ― | 基準D: VU | 基準E: ― |
D1.成熟個体数が1,000未満と推定される。 【推定根拠】 国内の営巣数が約170か所とすると、繁殖している成熟個体数(営巣数×2羽)は340羽と試算できる。また越冬数の700-1,100羽のうち、成鳥が約70%とすると、成熟個体は490-770羽と計算される。
3. 概要
国内では、北海道で繁殖する大型の海ワシである。青森県で繁殖した記録がある。おもに水域周辺の大径木上で営巣する。魚類や水鳥を主食とし、冬期は漁業で排出される未利用魚に多数が集まる。ロシア極東で繁殖する集団の一部が冬鳥として日本に渡来する。主要な越冬地は北海道である。北海道の営巣つがい数は増加している。本種の保護上の問題として生息環境の悪化のほか、風力発電施設への衝突事故、鉛中毒、交通事故などによる死亡などが挙げられる。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
体長は、オスで76~90 cm、メスで86~98 cm、翼開長は、オスで199~225 cm、メスで202~228 cmで、メスがオスよりやや大きい。成鳥は全身が灰褐色で頭部から胸にかけてクリーム褐色。尾羽は緩やかな楔形で白い。嘴、脚、虹彩は黄色。雌雄同色。幼鳥は全身暗褐色で尾羽は白地に褐色の斑や縁どりがある。嘴や光彩は黒っぽい。
【生活史】
繁殖地は日本のほかに、ユーラシア大陸の北部や東部、イギリス、アイスランド、グリーンランドなどに広がっており、日本やロシア極東地域、中国東部、ペルシャ湾などで越冬する。北海道では繁殖つがいの多くが周年営巣地周辺に留まると考えられている。ミズナラ、ダケカンバ、シラカンバ、ヤチダモなどの落葉広葉樹とトドマツ、アカエゾマツなどの常緑針葉樹に営巣する。巣は樹高16~25 mの高木への営巣例が多く、巣は、地上から15~16 mの高さに営巣する例が多い。巣の大きさ(長径)は110 cm、厚さは90 cmを超えるものが多い。樹上に造られた巣は条件が良ければ補修されながら何年も使われる。抱卵開始時期は3月上旬から5月上旬で、3月下旬からがもっとも多い。孵化は4月上旬から6月中旬、巣立ちは6月下旬から8月下旬である。産卵数、雛数は1~2個(羽)が多く、育雛は雌雄で行う。巣に搬入される餌動物は魚類や鳥類が多く、ウグイ類、コイ、ヤツメウナギ類、ニジマス、シロザケなど、カモ類、カモメ類のほかにアオサギやカラス類も観察されている。幼鳥は巣立ち後も2ヶ月ちかく、親鳥のテリトリー内で給餌を受ける。性成熟には5~6年かかり、平均寿命はヨーロッパでは20年以上とされている。
【生息・生育環境】
繁殖つがいは、営巣木となる大径木のある森林と、餌場となる水域がセットになった環境に生息する。営巣地は、ほとんどが標高100 m以下の平野部である。営巣地の林相は、ほとんどが落葉広葉樹林や針広混交林である。非繁殖期は、秋~初冬にはサケマスの遡上する河川周辺に飛来し、厳冬期は開氷面のある河川や湖沼などを利用するほか、未利用魚が得られる漁港周辺や氷下待網漁がおこなわれる結氷湖、エゾシカの死骸のある山林、海生哺乳類の漂着死骸のある海岸線に飛来する。廃棄物処理場で見られることもある。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_低標高地】河川中流域,ため池・池沼,湖・ダム湖 【陸域_平地部 海岸部】河川中流域,河川下流域,河口域,潟・湖・ダム湖,海崖・岩浜・岩礁(磯),潟・汽水湖 【海域(沿岸)_潮間帯】砂底・礫底,泥底 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (4)河川・湿地地域,(5)沿岸域,(7)島嶼地域 |
【分布域】
繁殖地は旧北区北部とグリーンランド南西部に局所的に分布する。冬期にはアフリカ北部やインド北西部などに南下するものもいる。極東ではロシアのカムチャツカ、サハリン、沿海地方、千島列島、日本の北海道などで繁殖する。越冬期にはロシアで越夏したと考えられる多数の個体が北海道に渡来するほか、本州北部や中部、対馬などにも飛来する。稀に九州や琉球列島などに飛来することがある。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
北海道における繁殖は1954年に網走地域で初確認され、それ以前の営巣状況は不明である。現在では北海道のほぼ全域に繁殖地があるが、南部地域では少ない。
【生息・生育地の現況】
近年では、道路や人間の活動域に隣接する場所で営巣するつがいが増加しているほか、高圧鉄塔で営巣する個体も確認されるようになってきている。本種の好適な営巣環境に道路や人工建造物が建設されていることによるほか、人間に対する警戒心の薄れも考えられる。また、自然環境下の採餌場や餌生物が減少する一方で、とくに越冬期には、多くの個体が漁業活動から排出される未利用魚を餌としているほか、観光船による餌付けもある。
【個体数の現況】
北海道の繁殖確認数は1998年では56つがい、2008年では約150つがいである。確認数のため正確な増加率は推定できないが、少なくとも1990年以降では増加傾向にあり、2016年には青森県東部で繁殖し、雛2羽の巣立ちが確認された。近年、北海道では繁殖成功率に低下傾向がみられ、今後の動向を注視する必要がある。越冬個体数については北日本一円における2月の一斉調査により、1985年以降、緩い増加傾向が示されている。 環境省のホームページなどによると、国内の越冬数(北海道と本州北部)は700-1,100羽、営巣地は約170か所が確認されているとされている。しかし、営巣数はこれより多いという未確認情報もある。精度の高い繁殖期の生息数や営巣数の調査が必要である。
存続を脅かす要因
森林伐採による営巣林や塒林の減少。道路建設や土地造成による営巣環境の悪化。湖沼開発、河川開発、海岸開発による営巣環境、狩り場、餌資源の減少。エゾシカの轢死体に誘引されての車両や列車との衝突事故。営巣地周辺における各種工事やカメラマンなどの巣への接近による繁殖撹乱。狩猟などによって放置されたエゾシカ死骸に由来する鉛中毒。感電事故。風力発電用施設への衝突事故の急増。人為的な餌への依存と過度の集中。
| 要因の区分 | (過去) | 森林伐採,湖沼開発,河川開発,海岸開発,土地造成,交通インフラ建設,交通事故,その他(鉛中毒、カメラマンなどの巣への接近による繁殖撹乱、人為的な餌への依存、過度の集中) |
|---|---|---|
| (現在) | 森林伐採,湖沼開発,河川開発,海岸開発,土地造成,交通インフラ建設,交通事故,人工構造物への衝突,その他(鉛中毒、カメラマンなどの巣への接近による繁殖撹乱、人為的な餌への依存、過度の集中) |
特記事項
特になし
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | オジロワシ | Haliaeetus albicilla albicilla | VU |
| 第4次 2019 | オジロワシ | Haliaeetus albicilla albicilla | VU |
| 第4次 2018 | オジロワシ | Haliaeetus albicilla albicilla | VU |
| 第4次 2017 | オジロワシ | Haliaeetus albicilla albicilla | VU |
| 第4次 2015 | オジロワシ | Haliaeetus albicilla albicilla | VU |
| 第4次 | オジロワシ | Haliaeetus albicilla albicilla | VU |
| 第3次 | オジロワシ | Haliaeetus albicilla albicilla | EN |
| 第2次 | オジロワシ | Haliaeetus albicilla albicilla | EN |
| 第1次 | オジロワシ | Haliaeetus albicilla | E |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【北海道】絶滅危惧Ⅱ類(Vu),【青森県】最重要希少野生生物(Aランク),【岩手県】絶滅危惧Ⅰ類,【宮城県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【秋田県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【山形県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【福島県】絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN),【茨城県】絶滅危惧ⅠA類,【栃木県】絶滅危惧Ⅰ類(Aランク),【群馬県】情報不足(DD),【千葉県】重要保護生物(B),【新潟県】絶滅危惧Ⅰ類(EN),【富山県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【石川県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【福井県】県域絶滅危惧Ⅰ類,【山梨県】情報不足(DD),【長野県】絶滅危惧ⅠB類(EN),【静岡県】絶滅危惧ⅠB類(EN),【滋賀県】絶滅危機増大種,【京都府】絶滅危惧種,【兵庫県】Bランク,【奈良県】注目種,【鳥取県】絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN),【島根県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【岡山県】情報不足,【長崎県】絶滅危惧ⅠB類(EN)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
国内希少野生動植物種,保護増殖事業,国指定天然記念物,鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
芳賀良一,1955.北海道網走におけるオジロワシの蕃殖の一例.鳥,13: 39-43. 環境省,https://www.env.go.jp/nature/kisho/hogozoushoku/ojirowashi.html 森岡照明・叶内拓哉・川田隆・山形則男,1998.図鑑日本のワシタカ類(第二版).文一総合出版,東京.632pp. 中川元,2013.日露共同オオワシ・オジロワシ調査の成果と北海道の越冬状況.桜井泰憲ほか(編),オホーツクの生態系とその保全,pp. 281-289.北海道大学出版会,札幌. 応用生態工学会札幌北海道猛禽類研究会,2021.北海道の猛禽類2020年版.応用生態工学会札幌北海道猛禽類研究会,札幌. Shiraki, S., 2002. Post-fledging movements and foraging habitats of immature White-tailed Sea Eagles in the Nemuro Region, Hokkaido, Japan. Journal of Raptor Research, 36: 220-224. 白木彩子,1999.オジロワシ.斜里町立知床博物館(編),知床の鳥類,pp. 126-177.北海道新聞社,札幌. 白木彩子,2010.オジロワシ,オオワシ.野生動物保護の事典編集委員会(編著),野生動物保護の事典,pp. 446-471.朝倉書店,東京. 白木彩子,2012.北海道におけるオジロワシHaliaeetus albicillaの風力発電用風車への衝突事故の現状.保全生態学研究,17: 85-96. 白木彩子,2013.16章 風力発電用風車への衝突事故とその回避.樋口広芳(編),日本のタカ学 生態と保全,pp. 300-323.東京大学出版,東京. 白木彩子,2013.風力発電施設による鳥類への影響評価 北海道におけるオジロワシの風車衝突事故の現状をふまえて.北海道自然保護協会会誌 北海道の自然,51: 19-30.北海道自然保護協会,札幌. 白木彩子,2013.北海道におけるオジロワシの繁殖の現状と保全上の課題.桜井泰憲ほか(編),オホーツクの生態系とその保全,pp. 319-324.北海道大学出版会,札幌.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Haliaeetus albicilla albicilla has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Haliaeetus albicilla albicilla is listed as VU under criteria D1.
D1. Population size estimated to number fewer than 1,000 mature individuals.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Low-altitude area】Middle river basin, Reservoir/Pond, Lake/Dam 【Terrestrial/Freshwater area_Plain, Beach】Middle river basin, Lower river basin, Estuary, Lagoon/Lake/Dam, Sea Cliff/Rocky beach/Reef, Lagoon/Brackish lake 【Marine area (Coastal area)_Intertidal zone】Sandy bottom/Gravelly bottom, Muddy bottom |
|---|---|
| Threat types | Logging and wood harvesting, Lake development, River development, Coastal development, Land development, Transportation infrastructure construction, Vehicle collision, Collision with man-made structures, Other |
| Law designation status for conservation | Nationally rare species of wild fauna and flora. Conservation and reproduction programs. Nationally Designated Natural Monument. Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 玉田克巳(地方独立行政法人北海道立総合研究機構) |
| Author: | Katsumi Tamada |
| 協力者: | 中川元(知床自然アカデミー) |
公開年月:2026年3月
©玉田克巳(北海道立総合研究機構 エネルギー・環境・地質研究所)