評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報 日本固有
| ⽬名 | スズメ目 | 科名 | ヒタキ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Passeriformes | Family | Muscicapidae |
| 和名 | リュウキュウキビタキ | ||
| 学名 | Ficedula owstoni (Bangs, 1901) | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 判定基準: B2ab
| 基準A: ― | 基準B: VU | 基準C: ― | 基準D: ― | 基準E: ― |
B2.生息地面積が2000 km²未満であると推定されるほか、次の兆候が見られる。 a) 生息地が過度に分断されているか、10以下の地点に限定されている。 【地点数】10地点以下 b) 出現範囲、生息地面積、生息地の質、生息地点数、成熟個体数のいずれかに継続的な減少が推定・予測される。 【判断理由】 本種は森林伐採や人間活動により、生息地の減少や分断が起きていることが指摘されている(Dong et al. 2015)。
3. 概要
南西諸島の広葉樹林帯、照葉樹林やマングローブ林に生息する。個体数に関する情報は多くないが、沖縄島北部では、鳥類調査でも観察されないことがほとんどであり(環境庁 1981, 環境庁 1982, 花輪ほか 1983, 樋口ほか 1987, 環境庁 1988, 安座間ほか 1991, 比嘉ほか 1991)、分布が極めて限られていることから、個体数も極めて少ないと考えられる(沖縄野鳥研究会 1986, 安座間ほか 1988, 嵩原 1993)。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
雌雄ともにキビタキに似ている。雄の成鳥は頭から背にかけて緑色味のある黒色で、眉斑や喉は黄色く、キビタキのようなオレンジ色にはならない。嘴峰長は10-12 mm、翼長は雄が66-70 mm、雌が63-67 mm、跗蹠長は15-16 mm、尾長は雄が48-49 mm、雌が46-49 mm(清棲 1978)。
【生活史】
詳しい生活史は不明。
沖縄島や西表島では8月にはメジロ、ヒヨドリ、シジュウカラなどの留鳥と混群を形成し、森林内の中層からマングローブの根元近くを採食に利用する(安座間 1988, 石毛ほか 2002)。基本的に混群には単独で入るようである(石毛ほか 2002)。
【生息・生育環境】
リュウキュウキビタキは広葉樹林帯、照葉樹林やマングローブ林にも生息する(日本野鳥の会 1998)。
屋久島では主に海抜200 m~350 mに多いと述べられていたが(白井 1956)、近年は1,700 m 以下の平地から山地の林で観察され(環境庁自然保護局 1984, 尾上 2008)、特に300~1500 mに多い(江口ら 1989)。ヤクスギ林と照葉樹林の両方で繁殖期の優占種であり、特に照葉樹林で密度が高い(江口ら 1989)。
奄美大島ではかつて、集落の傍の森林や竹林にも生息していたが(Hachisuka, M. & Udagawa 1953, 御厨 1968)、現在はイタジイを中心とした照葉樹林や常緑広葉樹林からなり、よく茂った深い林で観察される(環境庁 1974, 樋口・花輪 1985, 樋口ほか 1986, 環境庁 1989, 奄美野鳥の会 2009)。このほかに、二次林やリュウキュウマツ林でも観察されることがある(樋口ほか 1986)。標高は150~200 mに生息する(御厨 1968)。
沖縄島北部では、イタジイ林などで観察され、まとまった森林帯にのみ生息することから、森林への依存度が高いと考えられている(沖縄県 2005)。
西表島や石垣島では山地の常緑樹の暗い林を好み、木がある程度大きく、樹幹の下に空間がある森林に生息する(日本野鳥の会 1998)。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_中標高地 低標高地】森林 【陸域_平地部】森林 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (1)奥山自然地域,(7)島嶼地域 |
【分布域】
南西諸島(種子島、屋久島、中之島、奄美大島、徳之島、沖縄島、宮古島、石垣島、西表島)に生息する(高木 2009, 日本鳥学会 2000, 2012, 2024)。沖永良部島や与論島、久米島、与那国島には生息せず、樹林の少ない島には分布しない傾向にある(高木 2009)。少なくとも屋久島、種子島やトカラ列島の個体は夏鳥だと考えられており(関2011, 日本鳥学会 2000, 2012, 2024)、越冬地は不明である。ただし、屋久島において冬季に観察されることがあるため、屋久島の個体群を留鳥としている文献もある(例えば環境省 2009)。
奄美諸島や琉球諸島の個体群は留鳥だと考えられているが(日本鳥学会 2000, 2012, 2024)、すべての個体が留まっているのかなどの詳細は不明である。
本種は分類の混乱と形態に基づく識別の困難を理由として、未だ分布や移動についての情報が不足している。例えば、南西諸島以外への迷行として島根県、高知県、福岡県、長崎県や韓国、中国、台湾などで本種が観察されたとされる(石本 2005, Wang & Cui 2007, Brazil 2009, 日本鳥学会 2012, 2024, Bakewell et al. 2021)。ただ、キビタキのなかにリュウキュウキビタキに類似する羽色を持つ個体があり、特に若鳥では翼式が一致する個体があるため(三島 1957)、これらの記録が実際にリュウキュウキビタキであるかは慎重に検討される必要がある。例えば、高知県で1935年5月に回収されたリュウキュウキビタキ(三島 1957)の記録を認めるかは、資料によって異なる(日本鳥学会 2000, 2012, 2024)。また、伊豆諸島に生息するものはリュウキュウキビタキと報告されたことがあるが(籾山 1924, 山階 1941)、誤同定だったと訂正されている(山階 1942, 三島 1957)。同様に1929年に東京都で捕獲されたリュウキュウキビタキの記録(籾山 1932)も現在は認められていない。このほかに、1999年5月に島根県で観察された個体(初野 2003, 石本 2005)をリュウキュウキビタキとするかは、資料によって異なる(日本鳥学会 2012, 2024)。
さらに、現在確認されている分布域周辺での生息状況として、折居(1936)は南大東島で11月に観察された小群をリュウキュウキビタキと記している。また、1973年5月に屋久島の東方沖でリュウキュウキビタキが記録されている(田中 1974)。このほかBrazil(2009)は鹿児島県三島村黒島に夏鳥として生息することを記述している。ただし、これらは分布域として認めないことが普通である(日本鳥学会 2012, 2024)。このように、本種の分布域や記録には混乱がある。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
近年の分布域の変化については明らかになっていない。
【生息・生育地の現況】
森林伐採や人間活動により、生息地の減少や分断が指摘されている(Dong et al. 2015)。
【個体数の現況】
リュウキュウキビタキの観察記録は散在するが(たとえば折居 1936, 日本野鳥の会 1980, 安座間ほか 1988, 鈴木ほか 2011)、その繁殖分布の詳細は報告がなく、個体群ごとの推定個体数や生息状況は不明である。
屋久島では、ヤクスギ林と照葉樹林の両方で繁殖期の優占種であり、特に照葉樹林で密度が高い(江口ほか 1989)。
沖縄島北部では、鳥類調査でも観察されないことがほとんどであり(環境庁 1981, 環境庁 1982, 花輪ほか 1983, 樋口ほか 1987, 環境庁 1988, 安座間ほか 1991, 比嘉ほか 1991)、1990年代に生息が知られていたのはわずか17箇所である(比嘉 1993)。分布が極めて限られていることから、個体数も極めて少ないと考えられる(沖縄野鳥研究会 1986, 安座間ほか 1988, 嵩原 1993)。近年の生息状況は報告が無いため、詳細な調査が求められている。
存続を脅かす要因
商業伐採による生息地の消失が脅威だと指摘されている(Dong et al. 2015)。
| 要因の区分 | (過去) | 森林伐採,不明 |
|---|---|---|
| (現在) | 森林伐採,不明 |
特記事項
特になし
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | リュウキュウキビタキ | Ficedula narcissina owstoni | DD |
| 第4次 2019 | リュウキュウキビタキ | Ficedula narcissina owstoni | DD |
| 第4次 2018 | リュウキュウキビタキ | Ficedula narcissina owstoni | DD |
| 第4次 2017 | リュウキュウキビタキ | Ficedula narcissina owstoni | DD |
| 第4次 2015 | ― | ― | ― |
| 第4次 | ― | ― | ― |
| 第3次 | ― | ― | ― |
| 第2次 | ― | ― | ― |
| 第1次 | ― | ― | ― |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【鹿児島県】準絶滅危惧,【沖縄県】絶滅危惧ⅠB類(EN)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
奄美野鳥の会(編),2009.奄美の野鳥図鑑.文一総合出版,東京. 安座間安史・嵩原健二・島袋徳正,1988.特殊鳥類等生息調査及びノグチゲラの営巣木調査.特殊鳥類等生息環境調査Ⅱ,pp. 99-122.沖縄県環境保健部自然保護課,那覇. 安座間安史・島袋徳正・嵩原健二,1991.沖縄島北部大宜味村脊梁山地部におけるノグチゲラ生息環境調査.特殊鳥類等生息環境調査IV 中間報告書,pp. 68-82.沖縄県環境保険部自然保護課,那覇. Bakewell, D. N., P. D. Round, A. Jearwattanakanok, J. A. Eaton, J.-G. Park and Y. Shigeta, 2021. Identification of the Narcissus Flycatcher−Yellow-rumped Flycatcher complex in subadult and female plumages. BirdingASIA, 36: 22-30. Brazil, M., 2009. Birds of East Asia: China, Taiwan, Korea, Japan, and Russia. Princeton University Press, Princeton. Dong, L., M. Wei, P. Alström, X. Huang, U. Olsson, Y. Shigeta, Y. Zhang, and G. Zheng, 2015. Taxonomy of the Narcissus Flycatcher Ficedula narcissina complex: an integrative approach using morphological, bioacoustic and multilocus DNA data. Ibis, 15(2): 312–325. 江口和洋・武石全慈・永田尚志・逸見泰久・川路則友,1989.屋久島における森林棲鳥類の垂直分布:I. 繁殖期.日本生態学会誌,39: 53-65. Gill, F. and D. Donsker (Eds), 2016. IOC World Bird List (v 6. 3) http://www. worldbirdnames. org/ioc-lists/master-list-2/(Accessed 07 sertember 2016) Hachisuka, M. and T. Udagawa, 1953. Contribution to the ornithology of the Ryukyu Islands. Quarterly Journal of the Taiwan Museum, 6(3・4). 花輪伸一・塚本洋三・武田宗也,1983.ヤンバルクイナの分布域と生息状況に関する調査報告.昭和57年度環境庁委託調査 特殊鳥類調査,pp. 1-30.環境庁,東京. 初野謙,2003.バードウォッチャー鳥見帳.BIRDER,17(10): 58-59. 比嘉邦昭・池間幸男・大城亀信・儀間朝治・慶田城健仁・仲宗根励,1991.井湯岳および玉辻山周辺における鳥獣分布調査.特殊鳥類等生息環境調査IV 中間報告書,pp. 83-110.沖縄県環境保険部自然保護課,那覇. 樋口行雄・花輪伸一,1985.奄美大島におけるオオトラツグミの生息状況.昭和59年度環境庁委託調査 特殊鳥類調査 カンムリワシ,ヨナクニカラスバト,オオトラツグミ,pp. 35-53.環境庁,東京. 樋口行雄・花輪伸一・森下英美子,1986.奄美大島におけるルリカケスの生息状況.環境庁昭和60年環境庁委託調査 特殊鳥類調査,pp. 63-87.環境庁,東京. 樋口行雄・花輪伸一・森下英美子,1987.ノグチゲラの営巣状況と行動圏等に関する調査.環境庁昭和61年環境庁委託調査 特殊鳥類調査,pp. 7-28.環境庁,東京. 石毛久美子・伊津雅子・上田恵介,2002.亜熱帯マングローブ林でのメジロを核にした混群形成.Strix,20: 153-158. 石本賢治,2005.1998年から2003年までに観察した島根県で初記録と思われる鳥.ホシザキグリーン財団研究報告,(8): 303-306. 環境庁,1974.環境庁委託調査 特殊鳥類調査.環境庁昭和49年3月.環境庁,東京. 環境庁,1981.昭和55年度環境庁委託調査 特殊鳥類調査.環境庁昭和56年2月.環境庁,東京. 環境庁,1982.昭和56年度環境庁委託調査 特殊鳥類調査.環境庁昭和57年3月.環境庁,東京. 環境庁,1988.環境庁昭和63年環境庁委託調査 特殊鳥類調査.環境庁平成元年.環境庁,東京. 環境庁自然保護局,1984.屋久島原生自然環境保全地域調査報告書.環境庁,東京. 清棲幸保,1978.日本鳥類大図鑑Ⅰ.p. 158.講談社,東京. 御厨正治,1968.奄美諸島の鳥類について.鳥,18(85): 314-327. 三島冬嗣,1957a.琉球諸島産キビタキの亜種に就いて.鳥,14: 1-2. 三島冬嗣,1957b.新たに記録される迷鳥3種.鳥,14: 3-5. 籾山徳太郎,1924.伊豆八丈島採集鳥類目録.鳥,4: 100-109. 籾山徳太郎,1932.日本産鳥類の新産地報告一束.鳥,7: 301-328. 日本鳥学会(編),2000.日本鳥類目録 改訂第6版.日本鳥学会,帯広. 日本鳥学会(編),2012.日本鳥類目録 改訂第7版.日本鳥学会,三田. 日本鳥学会(編),2024.日本鳥類目録 改訂第8版.日本鳥学会,東京. 日本野鳥の会,1980.第二回自然環境保全基礎調査 動物分布調査報告書(鳥類)全国版 鳥類繁殖地図調査1978.環境庁,東京. 日本野鳥の会,1998.バンナ公園野鳥観察施設調査委託業務報告書.沖縄県八重山支庁土木建築課,石垣. 沖縄県,2005.改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 動物編 レッドデータおきなわ.沖縄県環境保健部自然保護課,那覇. 沖縄野鳥研究会(編),1986.沖縄県の野鳥.沖縄野鳥研究会,那覇. 尾上和久,2008.フィールドガイド屋久島の野鳥.南方新社,鹿児島. 折居彪二郎資料,1936.琉球列島採集日誌.沖縄大学地域研究所叢書,沖縄. Ornithological Society of Japan 2012. Checklist of Japanese Birds, 7th revised edition. Sanda: The Ornithological Society of Japan. Saitoh T. et al., 2015. DNA barcoding reveals 24 distinct lineages as cryptic bird species candidates in and around the Japanese Archipelago. Molecular Ecology Resources, 15(1): 177-186. 関伸一,2001.トカラ列島における夏鳥の生息密度-中之島のクロマツ林での事例.日林九支研論文集,54: 133-134. 白井邦彦,1956.屋久島の野生鳥獣相および屋久犬.鳥獣集報,15(1). 田中茂雄,1974.海洋に拾う.野鳥,39(8): 24-27. 高木昌興,2009.島間距離から解く南西諸島の鳥類相.日本鳥学会誌,58(1): 1-17. 嵩原健二,1993.沖縄島北部地域(国頭村・大宜味村・東村)の鳥類について.特殊鳥類等生息環境調査,pp. 59-92.沖縄県環境保健部自然保護課,那覇. Wang, Y. Y. and R. F. Cui, 2007. A new avian subspecies record in mainland China, Ficedula narcissina owstoni (Passeriformes, Muscicapidae). Acta Zootaxonomica Sinica, 32: 492-494. 山階芳麿,1941.日本産鳥類の食性調査 1. 伊豆七島産鳥類の食性.鳥,11: 51-52. 山階芳麿,1942.伊豆七島の鳥類(並びに其の生物地理学的意義).鳥,11: 53-54.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Ficedula owstoni has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Ficedula owstoni is listed as VU under criteria B2ab.
B2. Area of occupancy estimated to be less than 2,000 km², and estimate indicating at least two of a-c: a. Severely fragmented or known to exist at ten or fewer locations. b. Continuing decline, observed, inferred or projected, in any of the following: (i) extent of occurrence (ii) area of occupancy (iii) area, extent and/or quality of habitat (iv) number of locations or subpopulations (v) number of mature individuals
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Mid-altitude area, Low-altitude area】Forest 【Terrestrial/Freshwater area_Plain】Forest |
|---|---|
| Threat types | Logging and wood harvesting, Unknown |
| Law designation status for conservation | Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 岡久雄二(人間環境大学) |
| Author: | Yuji Okahisa |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月