評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報 日本固有
| ⽬名 | キジ目 | 科名 | キジ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Galliformes | Family | Phasianidae |
| 和名 | アカヤマドリ | ||
| 学名 | Syrmaticus soemmerringii soemmerringii (Temminck, 1830) | ||
2. カテゴリー判定: 準絶滅危惧(NT) 判定基準: ①②
| 基準A: VU未満 | 基準B: VU未満 | 基準C: VU未満 | 基準D: ― | 基準E: ― |
生息状況の推移から見て、種の存続への圧迫が強まっていると判断されるもの。 具体的には、分布域の一部において、次の傾向が顕著であり、今後さらに進行するおそれがあるもの。 ①個体数が減少している。 【判断理由】 熊本県球磨郡市房山(コシジロヤマドリとの中間型が生息)や八代市泉村では、シカ食害により林床植生がほとんどない状態になり、見つけやすくなっているにもかかわらず、近年本種は確認されていない。 ②生息条件が悪化している。 【判断理由】 熊本県中部以北の八代市泉町や五木村、山都町などでは、近年、本種が生息する森林の林床植生が、シカ食害により壊滅的な破壊を受け貧弱になり、本種の生息環境が急速に悪化している。
3. 概要
九州北部の福岡県、佐賀県、長崎県、大分県及び熊本県北部、宮崎県北部に分布する。標高1,200 m程度までの林床植生の豊富な自然林や人工林に留鳥として生息し、種子や草本類の葉、シダ類、昆虫類などを食餌としている。 熊本県中部と宮崎県中部のコシジロヤマドリとの分布境界付近には、腰羽に大小さまざまな変異のある白色斑をもつ個体がおり、腰が斑に白く見える中間型が生息する。この白色班は基本的に北部に行くほど小さく、南に行くほど大きく、クラインを成していると考えられる。 ニホンジカやニホンイノシシの増加に伴い、林床植生が脆弱になり、個体数が激減している生息地がある。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
全長はオスが約125 cm、雌が約55 cm。雄は全体的に赤銅色で、特に上背から頸にかけては紫がかった金属光沢がある。肩や翼の羽縁は白くならずに、雄の尾は90 cm以上になる個体もおり、節と呼ばれる黒色帯が、最大13節程度ある。
雌は全体的に黄褐色で、尾は短く20 cm程度でキジの雌より短い。コシジロヤマドリの雌よりもより淡色で下面の羽縁が汚白色である。
【生活史】
留鳥として、年間を通して一定の縄張りを保持して生活している。飼育個体では、雄が12歳程度、雌が10歳程度であるので、野生下での寿命は10歳以下と推察される。また、かつては一夫多妻と考えられてきたが、近年、一夫一妻の可能性を示唆する研究結果もある。
【生息・生育環境】
熊本県及び宮崎県のおよそ北緯32度30分以北の九州各地に分布する。海岸沿いの照葉樹林から標高1200~1300 mあたりの針広混交林の上部まで生息する。下草の豊富な広葉樹林に多いが、スギやヒノキの植林地でも見かけることがある。
コシジロヤマドリとの分布境界一帯には、中間型、つまり雄の腰の白色班が面的に白くならず、斑模様の個体を多く見かける。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_中標高地 低標高地】森林 【陸域_平地部】森林 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (1)奥山自然地域,(2)里地里山・田園地域 |
【分布域】
おおよそ北緯32度30分以北の熊本県・宮崎県及び大分県、福岡県、佐賀県、長崎県に生息する。しかし、熊本県と宮崎県におけるコシジロヤマドリとの分布の境界は不明確で、コシジロヤマドリとの中間型、つまり、腰の白色部が面的に白くならずに、まだら模様に見える中間型と考えられる個体が境界線の南北に広く分布する。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
過去の分布域との変化はなく、おおよそ北緯32度30分以北の九州各県に生息する。しかし、コシジロヤマドリとの分布境界は不明確で、コシジロヤマドリとの中間型と考えられる個体が境界線の南北に広く生息する。
【生息・生育地の現況】
一部の地域では、シカ食害による分布域の林床植生の壊滅的な破壊が進行しており、生息域が狭まっている可能性がある。
【個体数の現況】
一部地域では、生息環境の悪化に伴い、個体数の減少が起こっている。
存続を脅かす要因
シカ食害による林床植生の破壊が進行していることが、生息環境の劣化・悪化を招いている。また、風力発電建設による森林の分断で生息環境が悪化したり、大規模なソーラー発電施設が建設されたりしたことに伴い、生息地そのものが失われている。
| 要因の区分 | (過去) | 森林伐採,捕獲・狩猟/園芸採取 |
|---|---|---|
| (現在) | 森林伐採,捕獲・狩猟/園芸採取,発電施設建設,シカ食害 |
特記事項
イノシシやタヌキが増加している地域においては、これらの哺乳類による卵の捕食の可能性についての指摘や、営巣する環境そのものが消滅しつつあるという指摘もある。 令和6年度末時点において、大分県のレッドデータブックでは本亜種を含む種ヤマドリが準絶滅危惧(NT)とされている。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | アカヤマドリ | Syrmaticus soemmerringii soemmerringii | NT |
| 第4次 2019 | アカヤマドリ | Syrmaticus soemmerringii soemmerringii | NT |
| 第4次 2018 | アカヤマドリ | Syrmaticus soemmerringii soemmerringii | NT |
| 第4次 2017 | アカヤマドリ | Syrmaticus soemmerringii soemmerringii | NT |
| 第4次 2015 | アカヤマドリ | Syrmaticus soemmerringii soemmerringii | NT |
| 第4次 | アカヤマドリ | Syrmaticus soemmerringii soemmerringii | NT |
| 第3次 | アカヤマドリ | Syrmaticus soemmerringii soemmerringii | NT |
| 第2次 | ― | ― | ― |
| 第1次 | ― | ― | ― |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【福岡県】準絶滅危惧(NT),【長崎県】準絶滅危惧(NT),【熊本県】絶滅危惧ⅠB類(EN),【宮崎県】準絶滅危惧(NT-g)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
Kawaji, N., T. Hayashi and T. Matsuura, 2016. Home Range and Habitat Use of a Male Copper Pheasant Syrmaticus soemmerringii in a Suburb in Tokyo, Japan. 山階鳥類学雑誌, 48: 29-35. 高橋松人,2011.ヤマドリの繁殖スケジュールと配偶システム.山階鳥類学雑誌,43(1): 33-46.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Syrmaticus soemmerringii soemmerringii has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Syrmaticus soemmerringii soemmerringii is listed as NT under criteria ①②.
The species that is considered to be under increasing pressure for survival, as indicated by habitat status trends, specifically with the following notable tendencies in parts of its distribution that are likely to continue. ①The number of individuals is decreasing. ②Habitat conditions are deteriorating.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Mid-altitude area, Low-altitude area】Forest 【Terrestrial/Freshwater area_Plain】Forest |
|---|---|
| Threat types | Logging and wood harvesting, Hunting and collecting animals/Gathering plants, Power plant construction, Deer feeding damage |
| Law designation status for conservation | Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 坂梨仁彦 |
| Author: | Masahiko Sakanashi |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月