評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報 日本固有
| ⽬名 | キジ目 | 科名 | キジ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Galliformes | Family | Phasianidae |
| 和名 | コシジロヤマドリ | ||
| 学名 | Syrmaticus soemmerringii ijimae (Dresser, 1902) | ||
2. カテゴリー判定: 準絶滅危惧(NT) 判定基準: ①②
| 基準A: VU未満 | 基準B: VU未満 | 基準C: VU未満 | 基準D: VU未満 | 基準E: ― |
生息状況の推移から見て、種の存続への圧迫が強まっていると判断されるもの。 具体的には、分布域の一部において、次の傾向が顕著であり、今後さらに進行するおそれがあるもの。 ①個体数が減少している。 【判断理由】 熊本県球磨郡水上村市房山や葦北郡大関山や熊本県水俣市では、シカ食害により、林床植生が貧弱になり、本種が少なくなっている。 ②生息条件が悪化している。 【判断理由】 近年、本種が生息する森林の林床植生が、シカ食害により壊滅的な破壊を受けて貧弱になり、生息環境が急速に悪化している。この林床植生は、急速に回復するものとは考えづらい。
3. 概要
九州南部の鹿児島県及び熊本県南部、宮崎県南部に分布する。標高1,200 m程度までの林床植生の豊富な自然林や人工林に留鳥として生息し、種子や草本類の葉、シダ類、昆虫類などを食餌としている。 熊本県中部と宮崎県中部のアカヤマドリとの分布境界付近には、腰羽にある白色斑に大小さまざまな変異があり、腰が斑に見える中間型の個体が生息する。この白色班は基本的に北部に行くほど小さく、南に行くほど大きく、クラインを成していると考えられる。 ニホンジカやニホンイノシシの増加に伴い、林床植生が脆弱になり、個体数が激減している生息地がある。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
全長はオスが約125 cm、雌が約55 cm。雄は全体的に濃赤銅色で、特に上背から頸にかけては紫がかった金属光沢がある。亜種アカヤマドリより全体的に濃色で、腰の各羽縁に大きな白色班があり、腰全体が白く見える。雄の尾は90 cm以上になる個体もおり、節と呼ばれる黒色帯が、最大13節程度ある。
雌は全体的に黄褐色で、尾は短く20 cm程度でキジの雌より短い。アカヤマドリの雌よりもより濃色である。
【生活史】
留鳥として、年間を通して一定の縄張りを保持して生活している。飼育個体では、雄が12歳程度、雌が10歳程度であるので、野生下での寿命は10歳以下と推察される。また、かつては一夫多妻と考えられてきたが、近年、一夫一妻の可能性を示唆する研究結果もある。
本種の秋~冬にかけてのおもな食物として、シダ類、ササなどの葉部、ヤドリギ、ジャノヒゲの実などの漿果類、コナラのドングリなどの堅果類などが知られている。
【生息・生育環境】
熊本県及び宮崎県の南部から鹿児島県にかけて、海岸沿いの照葉樹林から標高1200~1300 mあたりの針広混交林の上部まで分布する。下草の豊富な広葉樹林などに生息するが、スギやヒノキの植林地でも見かけることがある。
熊本県と宮崎県の北緯32度30分付近のアカヤマドリとの分布境界付近では、腰の白が面的にならず斑に見える中間型を多く見かける。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_中標高地 低標高地】森林 【陸域_平地部】森林 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (1)奥山自然地域,(2)里地里山・田園地域 |
【分布域】
おおよそ北緯32度30分以南の熊本県・宮崎県及び鹿児島県全域に生息する。しかし、アカヤマドリとの分布の境界は不明確で、腰の白色が斑に見える中間型と考えられる個体が境界線の南北に広く分布する。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
分布域の変化は認められないが、熊本県内では生息環境の悪化のため、生息個体数が減少傾向にあり、観察頻度が下がっている。宮崎県では微増、鹿児島県では変わらない。
【生息・生育地の現況】
熊本県南部の生息地は、シカ食害により林床植生が貧弱になり、良好な生息環境は減少している。宮崎県南部や鹿児島県北部においてもシカ食害は進行しており、生息環境は悪化しているものと考えられる。
【個体数の現況】
熊本県の南部では、観察頻度は下がっている。宮崎県と鹿児島県においては、個体数の顕著な減少は進んでいないと推定される。
存続を脅かす要因
シカ食害による林床植生の破壊が進行していることが、生息環境の劣化・悪化を招いている。また、風力発電建設による森林の分断で生息環境が悪化したり、大規模なソーラー発電施設が建設されたりしたことに伴い、生息地そのものが失われている。
| 要因の区分 | (過去) | 森林伐採 |
|---|---|---|
| (現在) | 森林伐採,捕食(在来種による),発電施設建設,シカ食害,その他動物食害 |
特記事項
イノシシやタヌキが増加している地域においては、これらの哺乳類により卵が捕食されているのでは、との指摘をする声や、営巣する環境そのものがなくなりつつあるという声もある。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | コシジロヤマドリ | Syrmaticus soemmerringii ijimae | NT |
| 第4次 2019 | コシジロヤマドリ | Syrmaticus soemmerringii ijimae | NT |
| 第4次 2018 | コシジロヤマドリ | Syrmaticus soemmerringii ijimae | NT |
| 第4次 2017 | コシジロヤマドリ | Syrmaticus soemmerringii ijimae | NT |
| 第4次 2015 | コシジロヤマドリ | Syrmaticus soemmerringii ijimae | NT |
| 第4次 | コシジロヤマドリ | Syrmaticus soemmerringii ijimae | NT |
| 第3次 | コシジロヤマドリ | Syrmaticus soemmerringii ijimae | NT |
| 第2次 | コシジロヤマドリ | Syrmaticus soemmerringii ijimae | NT |
| 第1次 | コシジロヤマドリ | Phasianus soemmerringii ijimae | R |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【熊本県】絶滅危惧ⅠB類(EN),【宮崎県】準絶滅危惧(NT-g),【鹿児島県】準絶滅危惧
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
Kawaji, N., T. Hayashi and T. Matsuura, 2016. Home Range and Habitat Use of a Male Copper Pheasant Syrmaticus soemmerringii in a Suburb in Tokyo, Japan. 山階鳥類学雑誌, 48: 29-35. 高橋松人,2011.ヤマドリの繁殖スケジュールと配偶システム.山階鳥類学雑誌,43 (1): 33-46.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Syrmaticus soemmerringii ijimae has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Syrmaticus soemmerringii ijimae is listed as NT under criteria ①②.
The species that is considered to be under increasing pressure for survival, as indicated by habitat status trends, specifically with the following notable tendencies in parts of its distribution that are likely to continue. ①The number of individuals is decreasing. ②Habitat conditions are deteriorating.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Mid-altitude area, Low-altitude area】Forest 【Terrestrial/Freshwater area_Plain】Forest |
|---|---|
| Threat types | Logging and wood harvesting, Predation (by native species), Power plant construction, Deer feeding damage, Other animal feeding damage |
| Law designation status for conservation | Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 坂梨仁彦 |
| Author: | Masahiko Sakanashi |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月
©坂梨仁彦