評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報
| ⽬名 | ヨタカ目 | 科名 | ヨタカ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Caprimulgiformes | Family | Caprimulgidae |
| 和名 | ヨタカ | ||
| 学名 | Caprimulgus jotaka jotaka Temminck & Schlegel, 1844 | ||
2. カテゴリー判定: 準絶滅危惧(NT) 判定基準: ①②
| 基準A: VU未満 | 基準B: ― | 基準C: ― | 基準D: ― | 基準E: ― |
生息状況の推移から見て、種の存続への圧迫が強まっていると判断されるもの。 具体的には、分布域の一部において、次の傾向が顕著であり、今後さらに進行するおそれがあるもの。 ①個体数が減少している。 【判断理由】 東京都では1970年代には10メッシュ(1 km×1 km)で繁殖の記録があったが、1990年代には0メッシュ、2010年代には2メッシュと減少したまま推移している。茨城県では2005~2006年に7メッシュ(5 km×5 km)だったが2016~2021年には8メッシュで繁殖が確認され、増減はほとんどない。また、静岡県での調査によると1996~97年は35メッシュで記録があったが、2017~2020年には21メッシュと減少している。八ヶ岳南麓では、2000年代以降ほとんど記録がない。香川県中部でも、近年伐採地が減り、以前営巣していた場所で確認できなくなっているため減少していると考えられる。後述のとおり、全国的には増加している可能性が高いが、一方で減少傾向が継続している地域が複数存在する。 ②生息条件が悪化している。 【判断理由】 山梨県では、県内に広く分布しているが伐採地の減少、草原の荒廃等により生息・繁殖環境が悪化し個体数も減少している。静岡県では住宅地や工場用地などの拡大、といった開発行為によりとくに平野部での生息域の縮小が指摘されている。岡山県内では営巣地周辺でのイノシシの地表の掘り返しが目立っており、イノシシやシカの増加による営巣への悪影響が今後懸念される。
3. 概要
全国的な調査の結果、ヨタカの繁殖分布域は1990年代には127メッシュだったのが、2010年代には208メッシュと増加傾向にある。その一方で東京都など関東や四国地方の一部地域では個体数の減少傾向が続いており、現在も生息環境の悪化が続いている地域がある。繁殖地における主要な脅威は、伐採地の減少、住宅地や工場用地などの拡大などの開発行為であるが、イノシシやシカの増加による営巣への悪影響も懸念される。中継地や越冬地の環境改変等も本種の個体数に影響していると考えられるが、どこで、どのような影響が及んでいるのかは不明である。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
全長29 cm、体重73~113 g。全体に黒褐色~灰色の地に黄褐色や茶褐色の斑が散在する羽色をしており、複雑な模様となっている。オスは喉の左右、初列風切の外側4枚、尾羽の左右外側4枚に白斑がある。まれに中央尾羽にも小さな白斑がある。メスは喉の白斑や初列風切の白斑はごく小さいか、茶褐色で、尾羽の白斑はほとんどない。ふしょは非常に短い。
【生活史】
4~5月頃に日本へ渡来して繁殖する渡り鳥で、九州、四国、本州、佐渡、北海道に渡来する。夜行性であり、オスは繁殖期の夜間に「キョキョキョ」と良く響く鳴き声でなわばりを主張する。一腹卵数は2卵だが、1卵の事例もある。約19日間の抱卵は、主にメスが行う。ヒナは孵化後数日で産卵場所から数mほど離れた場所に移動し、15日齢頃には飛べるようになる。採食と給餌は夜間に行ない、主にガ、コガネムシなどの飛翔性昆虫を飛びながら大きな口で捕食する。また、林道などに降りて地上にいる昆虫を食べることもある。繁殖地への帰還率や雌雄での土地執着性の差は不明であるが、越冬地はインドシナ半島やマレーシア半島、ボルネオなどとされる。
【生息・生育環境】
自然林、二次林、植林地などの森林環境を中心に農地、草地、河川敷、湖沼、市街地でも観察される。特に、下層植生の乏しい若齢植林地や、明るいマツ混交林、落葉広葉樹林といった開けた環境を伴う森林を好んで利用する。低標高域から高標高域まで広く分布し、富士山麓では標高2,000 m以上でも生息している。巣はつくらず、直近に植物がない裸地の地上に産卵する。営巣環境は樹冠に覆われず、周囲に藪や林がある水はけの良い場所が知られており、アカマツ二次林や植林伐採跡地の尾根付近や草原で営巣が確認されている。秋にかけては渡りの通過個体が河川敷や湖沼、市街地でも観察される。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_中標高地 低標高地】裸地,森林,草地,田地・畑地,耕作放棄地,湿地・湿原・細流,砂地・風衝地,岩壁・ガレ場(石灰岩地等),河川源流域,河川上流域,河川中流域,ため池・池沼 【陸域_平地部】裸地,森林,草地,田地・畑地,耕作放棄地,湿地・湿原,市街緑地,砂地・礫地,河川中流域,河川下流域,河口域,ため池・池沼 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (1)奥山自然地域,(2)里地里山・田園地域,(3)都市地域,(4)河川・湿地地域 |
【分布域】
国内では、九州以北で繁殖する夏鳥である。全国鳥類繁殖分布調査から、本種の分布域は1970年代に290メッシュ、1990年代には127メッシュと大きく縮小したことが確認されている。越冬地はインドシナ半島やマレーシア半島など東南アジアとされ、渡りの経路は不明である。日本の個体群は東シナ海よりも日本海を横断している可能性が指摘されている。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
2010年代に実施された全国鳥類繁殖分布調査では208メッシュ(20 km×20 km)で繁殖の可能性が報告されている。この結果より、1990年代の127メッシュから記録メッシュ数が大きく増加し、回復傾向にあることが示された。その一方で、1970年代の記録メッシュ数は290であり、その水準にまで回復しているわけではない点に留意する必要がある。2010年代の繁殖分布面積の総和は過大に見積もって83,200 km²であるものの、夜行性のため調査時間を夜明け前に設定できたかどうかが影響するため、評価には注意が必要である。
【生息・生育地の現況】
これまでに確認されている繁殖地は伐採地や二次林、植林地といった森林、採石場、二次草原である。とくに里山の二次林や原野は開発や管理放棄により生息地の減少が進んでいる一方、山地の森林では自然攪乱や近年増加している伐採活動によって生息地が提供されている可能性がある。中継地および越冬地については、詳細な地点が判明しておらず、どのような環境を選好するか、および主要な脅威の解明が進んでいない。
【個体数の現況】
1970年代ごろまでは平野部の農村の疎林でも普通に生息していたが、1980年代になると日本各地で個体数が減少した。栃木県では2011年に生息調査を実施し1997年の調査と比較したところ、23か所中10か所でヨタカの生息が確認できなくなった。当地では山地では安定しているが、標高300 m未満の里山で生息地が減少している。
存続を脅かす要因
1970年代には生息状況の悪化の原因は、里山などの管理放棄や森林の開発などが示唆されている。近年は増加傾向にあるが、1970年代のような水準の生息数には増えておらず、とくに低標高域での農地、草地、森林の開発や管理放棄による、生息に不適な環境の増加は現在も続いていると考えられる。また、越冬地、中継地での環境改変なども影響していると考えられるが、詳細は不明である。
| 要因の区分 | (過去) | 森林伐採,草地開発,管理放棄 |
|---|---|---|
| (現在) | 森林伐採,草地開発,管理放棄,遷移進行・植生変化/自然遷移 |
特記事項
夜行性のため調査研究が難しく、基礎的な繁殖生態の知見が不足している。しかし、近年は調査手法の確立で研究が進みつつある。例えば、北海道と東京都では人工林伐採により創出された若齢林面積が大きいほどヨタカの占有率が高いことがわかっている。近年の林業活動の活性化は、ヨタカに適した環境を創出している可能性があり、適切な林業がヨタカの保全に寄与する可能性がある。また、二次草原や亜高山帯の砂礫地でも繁殖が確認されていることから、植林地とともに、草原など開けた環境も重要である。営巣環境や日周活動については、中国地方や関東地方で詳細な知見が集積しつつある。今後さらなる繁殖期における研究の蓄積、全国レベルでの定量的な繁殖分布の評価、渡り経路の解明により、詳細に生息密度や減少・増加要因を明らかにし、今後の分布予測を行う必要がある。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | ヨタカ | Caprimulgus indicus jotaka | NT |
| 第4次 2019 | ヨタカ | Caprimulgus indicus jotaka | NT |
| 第4次 2018 | ヨタカ | Caprimulgus indicus jotaka | NT |
| 第4次 2017 | ヨタカ | Caprimulgus indicus jotaka | NT |
| 第4次 2015 | ヨタカ | Caprimulgus indicus jotaka | NT |
| 第4次 | ヨタカ | Caprimulgus indicus jotaka | NT |
| 第3次 | ヨタカ | Caprimulgus indicus jotaka | VU |
| 第2次 | ― | ― | ― |
| 第1次 | ― | ― | ― |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【北海道】準絶滅危惧(Nt),【青森県】重要希少野生生物(Bランク),【岩手県】準絶滅危惧,【宮城県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【秋田県】準絶滅危惧(NT),【山形県】絶滅危惧ⅠB類(EN),【福島県】準絶滅危惧(NT),【茨城県】情報不足①注目種,【栃木県】準絶滅危惧(Cランク),【群馬県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【埼玉県】絶滅危惧Ⅱ類(VU)(繁),【千葉県】消息不明・絶滅生物(X),【東京都(本土部)】絶滅危惧ⅠB類(EN),【東京都(区部)】絶滅(EX),【東京都(北多摩)】絶滅危惧ⅠA類(CR),【東京都(南多摩)】絶滅危惧ⅠA類(CR),【東京都(西多摩)】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【神奈川県】絶滅危惧Ⅱ類(繁殖期),【新潟県】準絶滅危惧(NT),【富山県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【石川県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【福井県】県域絶滅危惧Ⅱ類,【山梨県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【長野県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【岐阜県】準絶滅危惧,【静岡県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【愛知県】絶滅危惧ⅠB類(EN)(繁殖),絶滅危惧Ⅱ類(VU)(通過),【三重県】情報不足(DD),【滋賀県】絶滅危機増大種,【京都府】絶滅危惧種,【大阪府】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【兵庫県】Aランク,【奈良県】絶滅危惧種,【和歌山県】絶滅危惧ⅠB類(EN),【鳥取県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【島根県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【岡山県】絶滅危惧Ⅱ類,【広島県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【山口県】準絶滅危惧(NT),【徳島県】絶滅危惧ⅠB類(EN),【香川県】準絶滅危惧(NT),【愛媛県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【高知県】準絶滅危惧(NT),【福岡県】絶滅危惧ⅠB類(EN),【佐賀県】絶滅危惧Ⅱ類種,【長崎県】絶滅危惧ⅠA類(CR),【熊本県】絶滅危惧ⅠA類(CR),【大分県】絶滅危惧ⅠB類(EN),【宮崎県】絶滅危惧ⅠB類(EN-r),【鹿児島県】準絶滅危惧
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
バードリサーチ・日本野鳥の会茨城県,2021.茨城県鳥類繁殖分布調査報告2016-2021.バードリサーチ. バードリサーチ,2021.東京都鳥類繁殖分布調査2016-2021.東京都鳥類繁殖分布調査会. 榎本佳樹,1941.野鳥便覧.日本野鳥の会大阪支部,大阪. 藤巻裕蔵,1973.ヨタカの営巣2例.鳥,22: 30–32. 平野敏明・野中純・石濱徹・長野大輔・手塚功・石川フク・川田裕美,2012.栃木県におけるヨタカの生息状況(2011).Accipiter,18: A1-A7. 樋口広芳(編),1999.夏鳥の減少実態研究報告.東京大学渡り鳥研究グループ,東京. Kawamura, K., Y. Yamaura and F. Nakamura, 2023. Early successional habitats created through plantation harvesting benefit the Gray Nightjar (Caprimulgus jotaka): An 8-year survey in central Hokkaido, northern Japan, Journal of Forest Research, 28: 4, 289-296. 清棲幸保,1952.日本鳥類大図鑑 II.講談杜,東京. 静岡県くらし・環境部環境局自然保護課,2019.まもりたい静岡県の野生生物2019 静岡県レッドデータブック<動物編>.p. 97. 静岡の鳥編集委員会,2020.静岡県の鳥類第3版.p. 75. 多田英行.2018.ヨタカバードリサーチ生態図鑑. 多田英行.2022.岡山県中部におけるヨタカの営巣環境の特徴.日鳥学誌,71: 137-144. 内田博,2011.ヨタカの抱卵行動.日鳥学誌,60: 238-240. 植田睦之・植村慎吾,2021.全国鳥類繁殖分布調査報告 日本の鳥の今を描こう 2016-2021年.p. 51.鳥類繁殖分布調査会. 山口孝・御手洗望,2018.東京都の伐採地と採石場におけるヨタカの生息状況.Strix,34: 17-26. 山梨県森林環境部みどり自然課,2018.2018山梨県レッドデータブック山梨県の絶滅のおそれのある野生生物.p. 166. 八ヶ岳野鳥クラブ,2021.八ヶ岳南麓の野鳥鳥類目録2021.p.38.八ヶ岳南麓の野鳥編集委員会.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Caprimulgus jotaka jotaka has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Caprimulgus jotaka jotaka is listed as NT under criteria ①②.
The species that is considered to be under increasing pressure for survival, as indicated by habitat status trends, specifically with the following notable tendencies in parts of its distribution that are likely to continue. ①The number of individuals is decreasing. ②Habitat conditions are deteriorating.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Mid-altitude area, Low-altitude area】Bare area, Forest, Grassland, Farmland, Abandoned farmland, Wetland/Marsh/Stream, Sandy area/Wind-eroded area, Cliff/Talus area (e.g. limestone area), River headwater, Upper river basin, Middle river basin, Reservoir/Pond 【Terrestrial/Freshwater area_Plain】Bare area, Forest, Grassland, Farmland, Abandoned farmland, Wetland, Urban green area, Sandy area/Gravelly area, Middle river basin, Lower river basin, Estuary, Reservoir/Pond |
|---|---|
| Threat types | Logging and wood harvesting, Grassland development, Abandonment of management, Successional progression/Vegetation change/Natural succession |
| Law designation status for conservation | Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 水村春香(山梨県富士山科学研究所) |
| Author: | Haruka Mizumura |
| 協力者: | 多田英行(日本野鳥の会岡山県支部)・河村和洋(森林総合研究所 野生動物研究領域)・才木道雄(東京大学秩父演習林)・吉村正則 |
公開年月:2026年3月
©吉村正則