評価分科会名: 鳥類分科会
1. 判定対象種情報
| ⽬名 | ペリカン目 | 科名 | サギ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Pelecaniformes | Family | Ardeidae |
| 和名 | チュウサギ | ||
| 学名 | Ardea intermedia intermedia Wagler, 1829 | ||
2. カテゴリー判定: 準絶滅危惧(NT) 判定基準: ①②
| 基準A: VU未満 | 基準B: ― | 基準C: ― | 基準D: ― | 基準E: ― |
生息状況の推移から見て、種の存続への圧迫が強まっていると判断されるもの。 具体的には、分布域の一部において、次の傾向が顕著であり、今後さらに進行するおそれがあるもの。 ①個体数が減少している。 【判断理由】 1960~70年代に全国的に減少し、1990年代は特に関西で少なかったとの報告がある。関東平野(茨城県、千葉県、栃木県)や濃尾平野(愛知県)など、水田が広がる地域では2000年代以降も比較的多い個体数が維持されており減少傾向にはないとみられるが、それ以外の地域では個体数の回復を示す報告はない。国内全体での現在の個体数動向に以前ほどの減少傾向はないと考えられるものの、多くはないままと推移していると推測される。 ②生息条件が悪化している。 【判断理由】 現在の国内の水田の耕作面積は、1960年代と比べて全国で約3割減った。チュウサギは採食環境を水田に強く依存しており、繁殖期は湛水された水田でドジョウ等の水生小動物を好んで食べるため、水田の畑地化(麦や大豆等への転作)や裏作による湛水時期のずれ等によって、好適な採食場所が減少する影響も今後懸念される。なお、バンなどほかの水田に依存する鳥類で減少傾向が知られることからも、チュウサギでも生息環境の悪化が示唆される。
3. 概要
本州以南に夏鳥として渡来し、複数種から成るサギ類コロニーに加わって繁殖する。主に水田でドジョウ、ザリガニ、カエル、昆虫等の小動物を食べる。1960-70年代に個体数が減少し、水田の圃場整備による餌生物の減少が一因とされている。個体数が比較的多いのは、関東平野や濃尾平野など水田地帯が広がる地域に限られている。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
全長65~72 cm、翼長17〜32 cm、嘴峰長67〜80 mm、ふ蹠長100〜121 mm、体重430〜630 g。雌雄とも全身白色。繁殖期には雌雄とも胸や背にレース状の飾り羽が伸び、求愛ディスプレイではこれを扇状に誇示する。特に背の飾り羽が長く、尾を10 cm余超える。頭部に冠羽はない。嘴は繁殖期には黒色、非繁殖期には黄色で先端のみ黒色の場合もある。目先の裸出部は黄色。虹彩は淡黄色で、求愛期には赤色。脚は指まで黒色。ダイサギと比べて頭部の丸みが強く、嘴が短い。
【生活史】
日本では主に夏鳥。渡来時期は本州では4月から5月頃で、水稲田の湛水から田植えの時期と概ね合致している。集団繁殖性で、複数種で構成されるコロニーで繁殖し、留鳥のサギ類(アオサギ、ダイサギ、コサギ、ゴイサギの全て又はいずれか)が形成したコロニーに後から参入する。一夫一妻で繁殖し、雌雄とも抱卵・育雛する。巣は皿状(直径30 cm、高さ5~10 cm)で、小枝を組み合わせ、樹林や竹林では中ほどから樹頂下の高さに、ササ林では頂上にかける。一腹卵数は3~5卵で、4卵のことが多い。卵は淡青緑色で無斑、楕円形(長径47~49 mm、短径35~40 mm)。産卵は1~2日に1個のペースで、初卵から抱卵し、抱卵期間は20~25日。ヒナは非同時孵化し、巣上での育雛期間は約30日で、巣立ち後もしばらくはコロニー内で親から給餌を受ける。巣立ち率を下げる要因は、巣からのヒナの落下、カラスやヘビによる捕食、餌を巡るヒナ間競争など。繁殖後の分散は8月頃から始まり、10月中旬頃まで各地で集団ねぐらをとって過ごした後、群れで南方へ渡る。日本で標識放鳥され海外で回収された49個体のうち46個体はフィリピンでの回収で、日本で繁殖したチュウサギの多くがフィリピンで越冬するとみられているが、国内でも暖地を中心に越冬する個体も稀にみられる。
【生息・生育環境】
平野部の水辺。主要な採食環境は水田とその畦畔。ほかに湿地、池沼、草地でも採食するが、海岸や干潟、流れのある河川ではほとんど採食しない。繁殖期は平地の樹林や竹林に他の集団繁殖性サギ類と混合でコロニーを形成して繁殖し、夜間もコロニーでねぐらをとる場合が多い。非繁殖期には河川や湖沼の岸の樹上や杭上、湿地等で集団ねぐらをとる。山間部はほとんど利用しない。主にドジョウ、カエル、ザリガニを食べ、他にヤゴなどの水生昆虫、バッタやコオロギなどの陸生昆虫、トカゲやカナヘビも食べる。ゆっくり歩きながら採餌し、数羽から十数羽の小群でまとまっていることもある。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_平地部】草地,田地・畑地,耕作放棄地,湿地・湿原,市街緑地,河川中流域,河川下流域,ワンド,農業用水路 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (4)河川・湿地地域 |
【分布域】
日本でみられるのは基亜種Ardea intermedia intermediaで、日本の本州以南から朝鮮半島南部、中国南部、東南アジア、インドで繁殖する。越冬期もほぼ同じ範囲でみられるが、日本や朝鮮半島、中国南部の個体は、東南アジアなどへ渡る。国内では本州の秋田県以南、四国、九州の水田地帯のある平野部を中心に分布している。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
国内での分布に大きな変化はない。個体数が多いのは関東平野(茨城県、千葉県、栃木県)や濃尾平野(愛知県)など、水田が広がる地域に偏在しているとみられる。
【生息・生育地の現況】
住宅地付近に形成されたコロニーでの人との軋轢(鳴き声や糞による迷惑被害)や、河川敷に形成されたコロニー周辺での河川改修によって、営巣林が伐採される場合が見受けられる。越冬地での現況は不明である。
【個体数の現況】
かつては各地のコロニーの優占種だったとされるが、1960~70年代に全国的に減少した。1980年の全国アンケート調査では、37県・79ヶ所のコロニーで確認された集団繁殖性サギ類のうちチュウサギは約3%(1,300個体)だった。1991~92年の全国調査では、チュウサギは25県・109ヶ所のコロニーで計2,569羽確認され、全国のサギ類に占める割合は9.9%で、特に関西で少なかった。その後は全国規模の個体数調査は行われていないため、全国の個体数現況は明らかではない。2000年代以降に個体数調査が行われている茨城県、栃木県、千葉県、愛知県では、比較的大規模なコロニー(構成種全体で500〜1,000個体以上)でチュウサギが優占種となっている例が多く確認されている。茨城県での2002〜2012年の個体数は4,000〜6,000個体で推移し、ゆるやかな増加傾向にあった。少なくとも関東平野や濃尾平野の水田地帯では、減少傾向にはないと考えられる。
存続を脅かす要因
過去は、宅地開発や減反による採食環境や営巣可能な林の減少、農薬汚染による餌生物の減少などにより、サギ類コロニーは全国的に小規模分散化してきた。サギ類の中でもチュウサギの減少が著しかった要因として、チュウサギは特に水田を主要な採食場とし、水生の小動物を主食とするため、水田の圃場整備による餌生物の減少の影響を受けやすかったことが考えられている。現在は、そうした影響は比較的落ち着いたように見受けられるが、集団繁殖性サギ類に共通の要因として、住宅地近隣に立地したコロニーでの人との軋轢による追払いや営巣林の伐採に伴う繁殖成功の低下の懸念が引き続き残る。また、チュウサギはサギ類の中でも採食環境を水田に強く依存しているため、水田の畑地化(麦や大豆等への転作)や裏作による湛水時期のずれ等によって、好適な採食場所が減少する影響も今後懸念される。
| 要因の区分 | (過去) | 圃場整備,土地造成,農薬汚染/化学物質汚染 |
|---|---|---|
| (現在) | その他(人との軋轢(営巣林伐採や追払い)、水田の転作) |
特記事項
集団繁殖性サギ類ではアオサギ、及びダイサギの個体数が全国的に増加している。それに伴う大きな変化として、繁殖開始が最も早く単独性が強いアオサギがコロニー形成を先導するようになり、アオサギの好むスギ等の高木のある樹林がコロニー場所として選ばれるケースが増えてきている。チュウサギのコロニー選択は、留鳥の他のサギ類が形成したコロニーに後から参入するかたちであるため、チュウサギの個体数変化には他種も関わっている可能性がある。コロニーの動態とあわせて、サギ類各種の個体数を注意深くモニタリングしていくことが望ましい。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | チュウサギ | Egretta intermedia intermedia | NT |
| 第4次 2019 | チュウサギ | Egretta intermedia intermedia | NT |
| 第4次 2018 | チュウサギ | Egretta intermedia intermedia | NT |
| 第4次 2017 | チュウサギ | Egretta intermedia intermedia | NT |
| 第4次 2015 | チュウサギ | Egretta intermedia intermedia | NT |
| 第4次 | チュウサギ | Egretta intermedia intermedia | NT |
| 第3次 | チュウサギ | Egretta intermedia intermedia | NT |
| 第2次 | チュウサギ | Egretta intermedia intermedia | NT |
| 第1次 | チュウサギ | Egretta intermedia intermedia | R |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【岩手県】準絶滅危惧,【山形県】準絶滅危惧(NT),【福島県】準絶滅危惧(NT),【栃木県】準絶滅危惧(Cランク),【群馬県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【埼玉県】絶滅危惧Ⅱ類(VU)(繁),【千葉県】重要保護生物(B),【東京都(本土部)】準絶滅危惧(NT),【東京都(区部)】準絶滅危惧(NT),【東京都(北多摩)】準絶滅危惧(NT),【東京都(南多摩)】準絶滅危惧(NT),【東京都(西多摩)】準絶滅危惧(NT),【東京都(伊豆諸島)】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【新潟県】準絶滅危惧(NT),【福井県】県域準絶滅危惧,【長野県】準絶滅危惧(NT),【愛知県】準絶滅危惧(NT)(繁殖),準絶滅危惧(NT)(通過),【三重県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【滋賀県】希少種,【京都府】準絶滅危惧種,【兵庫県】Cランク,【奈良県】希少種,【和歌山県】準絶滅危惧(NT),【鳥取県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【岡山県】絶滅危惧Ⅱ類,【山口県】絶滅危惧Ⅱ類(VU),【徳島県】準絶滅危惧(NT),【高知県】準絶滅危惧(NT),【福岡県】準絶滅危惧(NT),【長崎県】準絶滅危惧(NT),【熊本県】準絶滅危惧(NT),【大分県】準絶滅危惧(NT),【鹿児島県】準絶滅危惧,【沖縄県】準絶滅危惧(NT)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
鳥獣保護管理法
5. 参考⽂献
環境庁自然保護局・(財)日本野鳥の会,1994.第4回自然環境保全基礎調査 動植物調査報告書(鳥類の集団繁殖地及び集団ねぐら),環境庁,東京. 清棲幸保,1978.日本鳥類大図鑑III.講談社,東京. Kushlan, J. A. and J.A. Hancock, 2004. The Herons. Oxford University Press, New York. Lane, S. J. and M. Fujioka, 1998. The impact of changes in irrigation practices on the distribution of foraging egrets and herons (Ardeidae) in the rice fields of central Japan. Biological Conservation, 83: 221-230. Mashiko, M. and Y. Toquenaga, 2013. Increasing variation in population size and species composition ratio in mixed-species heron colonies in Japan. Forktail, 29: 71-77. Mashiko, M. and Y. Toquenaga, 2014. Grey heron (Ardea cinerea) expansion promotes the persistence of mixed-species heron colonies. Waterbirds, 37: 362-370. 中島拓・江崎保男・中上喜史・大迫義人,2006.水田と河川、コウノトリ野生復帰地での餌場の相対的価値-豊岡盆地に生息するサギ類を指標として-.保全生態学研究,11: 35-42. 成末雅恵,1992.埼玉県におけるサギ類の集団繁殖地の変遷.Strix,11: 189-209. 日本野鳥の会研究部,1981.アンケート法によるサギ類のコロニーと塒に関する調査.財団法人日本野鳥の会,東京. 農林水産省ウェブサイト.2022.令和4年耕地面積. https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/sakumotu/menseki/r4/kouti/index.html サギと高速道路との共生を考える会,2017.東名阪自動車道弥富IC・蟹江ICに飛来・営巣するサギと高速道路との共生に向けた活動2016年活動報告.愛知. 佐々木凡子,2001.京都府におけるサギ類の集団繁殖地の分布と保護.Strix,19: 149-160. 山階鳥類研究所,2002.鳥類アトラス(鳥類回収記録解析報告書).財団法人山階鳥類研究所,我孫子.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Ardea intermedia intermedia has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Ardea intermedia intermedia is listed as NT under criteria ①②.
The species that is considered to be under increasing pressure for survival, as indicated by habitat status trends, specifically with the following notable tendencies in parts of its distribution that are likely to continue. ①The number of individuals is decreasing. ②Habitat conditions are deteriorating.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Plain】Grassland, Farmland, Abandoned farmland, Wetland, Urban green area, Middle river basin, Lower river basin, Inlet, Agricultural ditch |
|---|---|
| Threat types | Other |
| Law designation status for conservation | Wildlife Protection, Control, and Hunting Management Act. |
| 執筆者: | 益子美由希(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構) |
| Author: | Miyuki Mashiko |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月
©益子美由希(農研機構)
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