評価分科会名: 爬虫類・両生類分科会
1. 判定対象種情報 日本固有
| ⽬名 | 有鱗目 | 科名 | トカゲモドキ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Squamata | Family | Eublepharidae |
| 和名 | クロイワトカゲモドキ | ||
| 学名 | Goniurosaurus kuroiwae (Namiye, 1912) | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧ⅠB類(EN) 判定基準: B2ab
| 基準A: ― | 基準B: EN | 基準C: ― | 基準D: ― | 基準E: ― |
B2.生息地面積が500 km²未満であると推定されるほか、次の兆候が見られる。 a) 生息地が過度に分断されているか、5以下の地点に限定されている。 【過度に分断】 分布域の全域で人為的な環境改変が進み、広い範囲で生息地は互いに分断されていると考えられる。 b) 出現範囲、生息地面積、生息地の質、生息地点数、成熟個体数のいずれかに継続的な減少が推定・予測される。 【判断理由】 分布域のほぼ全域で人為的な環境改変が進み、生息地は継続的に消失している。
3. 概要
沖縄諸島の4島に分布するこの地域の固有種で、常緑広葉樹林に覆われた山地とその周辺および植生に覆われた石灰岩地に見られる。分布域の広い範囲が人間活動が盛んな地域と重なるため、環境改変により個体群が縮小、断片化している。小島嶼の一部では個体数が極めて少ないと考えられる。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
成体の頭胴長は75~95 mmほどで、沖縄島内で側所的に分布するヤンバルトカゲモドキ(G. nebulozonatus)とほぼ同じ。生体の虹彩は赤褐色ないし暗赤褐色。背面のパターンは変異に富むが、伊江島のものを除き、多くの場合胴の後半にまで続く桃色の背中線を持つ。また、ほとんどの個体が明瞭な横帯を欠く。伊江島のものでは、少なくとも胴前半部に明色の背中線を持ち、加えて明瞭な横帯を持つことが多い。横帯と横帯の間にはフレーク状の小斑がある。伊江島のものは背中線および横帯の色彩も変異に富み、淡桃色からオレンジ色、黄色みの強いものまで様々。背中線や横帯の輪郭がぼやけずにはっきりしている点でヤンバルトカゲモドキと区別できる。腹面には偏平な鱗が瓦状に並ぶ。
【生活史】
4~10月に目撃される個体が多くなり、6~7月にもっとも活動性が高くなる。産卵期は5~8月で、メスはこの間に少なくとも1ヶ月以上の間隔を空け、複数回産卵する。産卵場所は詳しくは分かっていないが、石灰岩洞窟の中から卵殻が見つかっている。一度に2卵が産み落とされ、9~11月頃に頭胴長40 mmほどの孵化幼体が現れる。孵化幼体は雌雄ともに生後20ヶ月ほどで頭胴長75 mmに達し、繁殖に参加する。野外での寿命は4〜5年程度の場合が多いが、7歳の個体も確認されている。林床で活動するクモ類、昆虫類、ムカデ類、ワラジムシ類等をおもな餌としている。おもに探索型の採餌をする。
【生息・生育環境】
常緑広葉樹の自然林や回復の進んだ二次林に生息し、そういった植生を伴う石灰岩地域でよく見られる。洞窟やその周辺でしばしば数が多い。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_低標高地】森林,岩壁・ガレ場(石灰岩地等),洞窟・地下浅層・地下水域 【陸域_平地部】森林,市街緑地,洞窟・地下浅層 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (2)里地里山・田園地域,(3)都市地域,(7)島嶼地域 |
【分布域】
沖縄島の名護市以南(本部半島を含む)、伊江島、瀬底島、屋我地島に分布する。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
沖縄島では本部半島と南部でそれぞれ比較的連続した生息地がある。沖縄島の中部〜中南部では密度は低く、分布も不連続で、都市部の周囲では極度に断片化している。伊江島では、生息場所での個体密度こそ低くないが、個々の生息地は非常に小規模で、互いに隔てられている。瀬底島と屋我地島では生息が確認されている地点が限られており、分布域はとても狭いと考えられる。
【生息・生育地の現況】
沖縄島中南部および伊江島、屋我地島では、本種の生息条件を満たす森林は非常に限られており、しかも断片化が進んでいる。瀬底島ではわかっている生息地は非常に限られており、その周辺でも環境改変により潜在的な生息地が失われている。本種が比較的多く見られる沖縄島の本部半島と南部でも、開発に伴って継続的に生息地の消失が進んでいる。
【個体数の現況】
資料が不足していて、個体数やその減少率を具体的に推定するのは不可能だが、瀬底島では発見するのが容易でなくなってきており、すでに危険なレベルまで個体数が減少している可能性が高い。また、沖縄島の各地と屋我地島では継続的に環境改変が行われ、生息地の消失に伴い個体数は大幅に減少していると考えられる。
存続を脅かす要因
森林伐採、宅地造成、道路や圃場の整備など、さまざまな人間活動に伴う環境改変により生息地が消失している。また、商業目的の違法採集も圧迫要因になっていると考えられる。外来性の食肉類による捕食の影響も懸念される。
| 要因の区分 | (過去) | 森林伐採,海岸開発,圃場整備,洞窟の消失や環境悪化,土地造成,交通インフラ建設,捕食(外来種による),違法採集,分布・産地局限 |
|---|---|---|
| (現在) | 森林伐採,海岸開発,圃場整備,洞窟の消失や環境悪化,土地造成,交通インフラ建設,捕食(外来種による),違法採集,分布・産地局限 |
特記事項
沖縄島のなかで交雑帯を形成しながらもヤンバルトカゲモドキと側所的に分布するメカニズム、およびそういった分布様式の形成課程は十分に解明されていないが、狭い島嶼のなかでの種の多様化や共存のしくみを知る上で高い学術的価値を持つといえる。本種を含む琉球産トカゲモドキ類全体としても島嶼域で多くの種が形成され、維持されてきたと考えられるため、そのプロセスを理解するために引き続き研究が必要である。またそういった研究をとおして、琉球地域の古地理、古環境を知ることにも繋がる可能性があることから、その学術的価値は高い。沖縄県の天然記念物に指定されている。比較的最近分類変更があっため、地方自治体のレッドリストや保護に係る法令指定、各種文献等では、分類変更前のタクソン(広義クロイワトカゲモドキ)として扱われている場合があることに注意が必要。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | クロイワトカゲモドキ | Goniurosaurus kuroiwae kuroiwae | VU |
| 第4次 2019 | クロイワトカゲモドキ | Goniurosaurus kuroiwae kuroiwae | VU |
| 第4次 2018 | クロイワトカゲモドキ | Goniurosaurus kuroiwae kuroiwae | VU |
| 第4次 2017 | クロイワトカゲモドキ | Goniurosaurus kuroiwae kuroiwae | VU |
| 第4次 2015 | クロイワトカゲモドキ | Goniurosaurus kuroiwae kuroiwae | VU |
| 第4次 | クロイワトカゲモドキ | Goniurosaurus kuroiwae kuroiwae | VU |
| 第3次 | クロイワトカゲモドキ | Goniurosaurus kuroiwae kuroiwae | VU |
| 第2次 | クロイワトカゲモドキ | Goniurosaurus kuroiwae kuroiwae | VU |
| 第1次 | クロイワトカゲモドキ | Eublepharis kuroiwae | R |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【沖縄県】絶滅危惧Ⅱ類(VU)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
国内希少野生動植物種
5. 参考⽂献
Grismer, L. L., H. Ota, and S. Tanaka, 1994. Phylogeny, classification, and biogeography of Goniurosaurus kuroiwae (Squamata: Eublepharidae) from the Ryukyu Archipelago, Japan, with description of a new subspecies. Zool. Sci., 11: 319–335. 栗田隆気・川村玲未,2011.沖縄県名護市屋我地島からのクロイワトカゲモドキの初記録.Akamata,22: 15–20. Kurita, T. and M. Toda, 2013. Validation and application of skeletochronology for age determination of the Ryukyu ground gecko, Goniurosaurus kuroiwae (Squamata: Eublepharidae). Asian Herpetol.Res., 4: 233–241. Kurita, T., M. Honda, and M. Toda, 2018. Species delimitation and biogeography of the Ryukyu ground geckos, Goniurosaurus kuroiwae ssp. (Squamata: Eublepharidae), by use of mitochondrial and nuclear DNA analyses. J. Zool. Syst. Evol. Res., 56: 209-222. Kurita, T., R. Kawamura, and M. Toda, 2013. Limestone cave as a cradle of the Ryukyu ground gecko, Goniurosaurus kuroiwae. Herpetol. Rev., 44: 569–572. Tanaka, S. and M. Nishihira, 1987. A field study of seasonal, daily, and diel activity patterns of Eublepharis kuroiwae kuroiwae. Herpetologica, 43: 482–489. Tanaka, S. and M. Nishihira, 1989. Growth and reproduction of the gekkonid lizard Eublepharis kuroiwae kuroiwae. In: M. Matsui, T. Hikida and R. C. Goris (eds.), Current Herpetology in East Asia, pp. 349–357. Herpetological Society of Japan, Kyoto. 戸田守・田中聡,2017.クロイワトカゲモドキ.沖縄県環境部自然保護課(編)改定・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版(動物編)-レッドデータおきなわ-,pp. 191–193.沖縄県環境部自然保護課,那覇. 戸田守,2014.クロイワトカゲモドキ. 環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室(編),レッドデータブック2014–日本の絶滅のおそれのある野生生物-3 爬虫類・両生類,pp. 34–35.ぎょうせい,東京. Werner, Y. L., H. Takahashi, Y. Yasukawa, and H. Ota, 2006. Factors affecting foraging behaviour, as seen in a nocturnal ground lizard, Goniurosaurus kuroiwae kuroiwae. J. Nat. Hist., 40: 439–459.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Goniurosaurus kuroiwae has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Goniurosaurus kuroiwae is listed as EN under criteria B2ab.
B2. Area of occupancy estimated to be less than 500 km², and estimate indicating at least two of a-c: a. Severely fragmented or known to exist at five or fewer locations. b. Continuing decline, observed, inferred or projected, in any of the following: (i) extent of occurrence (ii) area of occupancy (iii) area, extent and/or quality of habitat (iv) number of locations or subpopulations (v) number of mature individuals
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Low-altitude area】Forest, Cliff/Talus area (e.g. limestone area), Cave/Shallow underground/Subterranean water body 【Terrestrial/Freshwater area_Plain】Forest, Urban green area, Cave/Shallow underground |
|---|---|
| Threat types | Logging and wood harvesting, Coastal development, Field preparation, Loss of caves and environmental deterioration, Land development, Transportation infrastructure construction, Predation (by alien species), Illegal harvesting of biological resources, Limited distribution |
| Law designation status for conservation | Nationally rare species of wild fauna and flora. |
| 執筆者: | 戸田守(琉球大学) |
| Author: | Mamoru Toda |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月
©環境省
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