評価分科会名: 爬虫類・両生類分科会
1. 判定対象種情報
| ⽬名 | 有鱗目 | 科名 | コブラ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Squamata | Family | Elapidae |
| 和名 | イイジマウミヘビ | ||
| 学名 | Emydocephalus ijimae Stejneger, 1898 | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧ⅠB類(EN) 判定基準: B1ab
| 基準A: ― | 基準B: EN | 基準C: ― | 基準D: ― | 基準E: ― |
B1. 出現範囲が5000 km²未満であると推定されるほか、次の兆候が見られる。 a) 生息地が過度に分断されているか、5以下の地点に限定されている。 【過度に分断】 個体の定住性が高いことが確認されており、地域間の交流は比較的限定的と考えられる。本種の生息場所となるサンゴ礁が各地で消滅している現状を踏まえると、集団は分断化し、絶滅リスクが高まっている可能性が高い。 b) 出現範囲、生息地面積、生息地の質、生息地点数、成熟個体数のいずれかに継続的な減少が推定・予測される。 【判断理由】 本種の好適生息場所となるサンゴ礁は白化や開発などによって全体的に衰退傾向にあり、生息個体数は減少していると予想される。
3. 概要
背面の体鱗に比べ腹板の幅が明瞭に広い点、第2上唇板が他の上唇板に比べて顕著に大きい点などで、日本の他のウミヘビ類から容易に識別できる。国内での分布は南西諸島近海に限られる。胎生で成体メスは2~3年に1回、11~1月に1~4子を出産する。新生個体は2年ほどで性的に成熟する。サンゴ礁に生息し、サンゴ礁魚類の卵を専食するため、造礁サンゴの白化や死滅によって生じるサンゴ礁魚類の減少にともない、生息密度が低下すると考えられる。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
全長はオスで570~840 mm、メスでは630~1,070 mm程度。体型は日本近海に見られるウミヘビ類の中では比較的太短く、横断面は胴の前部では丸いが後方では徐々に側偏する。尾は極端に縦長で、他のウミヘビ類と同様、オール状になっている。第2上唇板が著しく大型化しており、また成体のオスでは吻端板の中央に、先端のやや尖った顕著な突起がある。体鱗は頸部で15~17列、胴中央で17~19列、肛門前で15列。腹板はエラブウミへビ属や陸生の多くのヘビ類と同様、背面の体鱗に比して顕著に大型化しており、134~144枚。尾下板は対をなさず、オスで24~30枚、メスで19~24枚。体色はやや黄色味がかった肌色ないしクリーム色で、黒色ないし暗灰色の環帯が、胴部に25~30本、尾部に4~6本ある。
【生活史】
排卵は4月下旬~6月上旬に生じる。胎生で、妊娠メスは11~1月頃、全長300~340 mmほどの幼体を1~4子を出産する。出産の頻度は、多くの成体メスで2~3年に1回と低い。雌雄ともに、生後2年前後で性成熟に達する。
【生息・生育環境】
浅海に生息しており、水深が10 mを超えるような場所にはあまり見られない。サンゴ礁やその周辺でよく観察され、とりわけサンゴ礁魚類の豊富な場所で、高頻度に見られる傾向がある。対照的にサンゴ礁の発達が悪い、砂底や泥底、枯死したサンゴ片が堆積したような場所ではあまり見られない。
| 生息・生育環境区分 | 【海域(沿岸)_表層】岩礁(磯),サンゴ礁 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (5)沿岸域,(7)島嶼地域 |
【分布域】
国内ではトカラ海峡以南の琉球列島近海に分布しており、とくに宝島、奄美大島南部、沖縄島中部・南部、慶良間諸島、石垣島、鳩間島、西表島周辺の浅海域で多く記録されている。国外にも分布するが、目撃記録や採集記録の得られている範囲は、東アジア海域に分布する他のウミヘビ類に比べて狭く、おおむね台湾東部の緑島や蘭嶼周辺に限られている。フィリピン以南にも同属の個体群が見られるが、別種と考えられている。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
太平洋の広域で造礁サンゴの白化や死滅が見られた1990年代末を境に、慶良間諸島や瀬底島の周辺をはじめとする分布域のほぼ全域で、生息密度の急激な低下が観察された。それ以降、分布域の縮小や分断が急激に進行していると考えられる。
【生息・生育地の現況】
瀬底島や座間味島のサンゴ礁では、それぞれ1980年代ないし1990年代の後半までは、本種が非常に高密度で観察された。しかしそれ以降、これらの場所や周辺の広い範囲で造礁サンゴの白化や死滅、サンゴ礁のガレ場化、藻場化が進み、その進行にともなって生息するサンゴ礁魚類の密度や多様性も、明らかに低下しており、多くの場所で餌条件が悪化している。
【個体数の現況】
個体数に関する直接的なデータはないが、生息場所における目撃頻度から考えて1980年代後半~2000年代初めにかけての10年あまりの間に、少なくとも瀬底島や座間味島の周辺では、生息密度は1/4ないしそれ以下になったと考えられる。
存続を脅かす要因
赤土の流入や造礁サンゴの白化、サンゴ礁の衰退ガレ場化、藻場化により、サンゴ礁魚類における多様性・生息密度の低下が生じることが、その卵を専食するイイジマウミヘビにとっての餌条件の悪化につながり、その存続を脅かす最大の要因となっている。
| 要因の区分 | (過去) | 海岸開発,気候変動 |
|---|---|---|
| (現在) | 海岸開発,気候変動 |
特記事項
魚卵専食の一方で、天敵はイタチザメくらいであり、したがって明らかにサンゴ礁における食物網の上位を占めている。そのため、本種の生息状況は、その海域のサンゴ礁生態系全体の健全さの指標ともなると考えられる。一年あたりの一腹子数は、出産頻度も考慮するとウミヘビ類としてはきわめて少なく、加えて移動性も低いため、一旦、生息密度が下がると、環境が改善されても個体群の回復に少なからず時間を要することが懸念される。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | イイジマウミヘビ | Emydocephalus ijimae | VU |
| 第4次 2019 | イイジマウミヘビ | Emydocephalus ijimae | VU |
| 第4次 2018 | イイジマウミヘビ | Emydocephalus ijimae | VU |
| 第4次 2017 | イイジマウミヘビ | Emydocephalus ijimae | VU |
| 第4次 2015 | イイジマウミヘビ | Emydocephalus ijimae | VU |
| 第4次 | イイジマウミヘビ | Emydocephalus ijimae | VU |
| 第3次 | イイジマウミヘビ | Emydocephalus ijimae | VU |
| 第2次 | ― | ― | ― |
| 第1次 | ― | ― | ― |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【鹿児島県】情報不足
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
指定なし
5. 参考⽂献
Masunaga, G. and H. Ota, 2003. Growth and reproduction of the sea snake, Emydocephalus ijimae, in the central Ryukyus, Japan: a mark and recapture study. Zoological Science, 20: 461–470. Masunaga, G., R. Matsuura, T. Yoshino, and H. Ota, 2003. Reproductive biology of the viviparous sea snake, Emydocephalus ijimae (Reptilia: Elapidae: Hydrophiinae), under a seasonal environment in the Northern Hemisphere. Herpetological Journal, 13: 113–118. Masunaga, G., T. Kosuge, N. Asai and H. Ota, 2008. Shark predation of sea snakes (Reptilia: Elapidae) in the shallow waters around the Yaeyama Islands of the southern Ryukyus, Japan. Marine and Freshwater Biodiversity, 1(e96): 1–4. 太田英利,1997.イイジマウミヘビ.日本の希少な野生水生生物に関する基礎資料(IV),pp. 331–337,345.日本水産資源保護協会,東京. 太田英利・増永元,2005.琉球のウミヘビ.矢野和成(編),南の島の自然誌,pp. 159–172.東海大学出版会,秦野.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Emydocephalus ijimae has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Emydocephalus ijimae is listed as EN under criteria B1ab.
B1. Extent of occurrence estimated to be less than 5,000 km², and estimates indicating at least two of a-c: a. Severely fragmented or known to exist at five or fewer locations. b. Continuing decline, observed, inferred or projected, in any of the following: (i) extent of occurrence (ii) area of occupancy (iii) area, extent and/or quality of habitat (iv) number of locations or subpopulations (v) number of mature individuals
| Habitat types | 【Marine area (Coastal area)_Surface water】Reef, Coral reef |
|---|---|
| Threat types | Coastal development, Climate change |
| Law designation status for conservation |
| 執筆者: | 太田英利(兵庫県立大学) |
| Author: | Hidetoshi Ota |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月
©山本拓海(東邦大学)
©山本拓海(東邦大学)