評価分科会名: 爬虫類・両生類分科会
1. 判定対象種情報 日本固有
| ⽬名 | 有鱗目 | 科名 | コブラ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Squamata | Family | Elapidae |
| 和名 | イワサキワモンベニヘビ | ||
| 学名 | Sinomicrurus iwasakii (Maki, 1935) | ||
2. カテゴリー判定: 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 判定基準: D2
| 基準A: ― | 基準B: ― | 基準C: ― | 基準D: VU | 基準E: ― |
D2.生息地面積あるいは分布地点が極めて限定されている。 【判断理由】 島嶼では、本種の脅威として想定される生息阻害要因(外来種、病原体、大規模な開発や自然災害等による生息環境の改変等)の影響が、比較的速やかに全体に及ぶ可能性がある。
3. 概要
八重山諸島の石垣島と西表島の固有亜種で、常緑広葉樹の自然林や回復の進んだ二次林の林床とその周辺に生息。湿潤な場所を好むことから、森林伐採や土地造成などが、生息地の縮小、分断を引き起こしていることが考えられる。このほかとくに石垣島では、外来性動物であるオオヒキガエルやキジ、インドクジャクなどが侵入・増加しており、それにともなう捕食圧の増加や競合の影響も懸念される。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
全長は普通300~500 mmほどで比較的小型だが、近年、全長800 mmという大型の個体も見つかっている。体鱗は滑らかでキールはなく、胴部のほぼ全域で13列に並ぶ。頭部は、前端は丸くて幅は頸部とほとんど変わらず、尾は比較的短くて後端はやや尖る。背面の地色は赤紫色で、頭部から尾部にかけて、黒色の環状紋が約40個ある。一つ一つの環状紋の前後には、幅の狭い白色ないしクリーム色の縁取りがあり、 さらに頭部にはこうした縁取りよりはるかに幅が広く良く目立つ白帯がある。腹面の地色はクリーム色。
【生活史】
これまでの発見例が極端に少なく、繁殖や生活史に関する知見はない。食性については、ブラーミニメクラヘビやサキシママダラ、飼育下ではタカチホヘビ類などを捕食するのが観察されており、他の亜種についての観察からも、爬虫類食、とくにヘビ類食の傾向が強いと考えられる。
【生息・生育環境】
常緑広葉樹の自然林や回復の進んだ二次林がおもな生息環境で、林床に堆積した落ち葉の中や、朽ちた倒木の下などで見つかっている。夜間には渓流周辺の灌木上などでも見つかっている。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_低標高地】森林 【陸域_平地部】森林 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (1)奥山自然地域,(7)島嶼地域 |
【分布域】
八重山諸島の石垣島と西表島に固有。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
ヤエヤマタカチホヘビなどと同様、分布の知られる2島それぞれの中でも、人間の居住地や畑地、牧草地、開けた二次林、海岸植生など土壌の乾燥した場所での生息は考えにくく、常緑広葉樹の自然林や回復の進んだ二次林とその周辺のみと思われる。
【生息・生育地の現況】
本種の分布する石垣島と西表島それぞれで、湿潤な土壌を有する場所はここ数十年の間に狭まってきており、その一方でとくに石垣島では潜在的な捕食者、競争相手である外来種オオヒキガエル、キジ、インドクジャクなどの侵入、増加が続いており、生息地の縮小、分断が進行中と思われる。
【個体数の現況】
近年は以前にも増して観察例が少なくなっており、個体数の減少は明らかであるが、具体的な数は不明。
存続を脅かす要因
居住地や耕作地の造成、森林の伐採などが土壌の乾燥化を招き、存在を脅かす主要因と考えられる。またとくに石垣島では、潜在的な捕食者であり競争相手とも考えられる外来種オオヒキガエル、キジ、インドクジャクの侵入、増加が大きなインパクトをもたらしていることが懸念される。
| 要因の区分 | (過去) | 森林伐採,土地造成,捕食(外来種による),競争/競合(外来種による) |
|---|---|---|
| (現在) | 森林伐採,土地造成,捕食(外来種による),競争/競合(外来種による) |
特記事項
ワモンベニヘビ(Sinomicrurus macclellandi)の4つある亜種のうちのひとつとされていたが、分類の見直しにより独立種とされた。本種を含むワモンベニヘビ類は八重山諸島を分布の東北限として、台湾や中国南部、インドシナ、南アジア北部などの広い範囲に分布しており、この地域の古地理・古環境履歴に関する情報を多くもたらすことが期待される。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | イワサキワモンベニヘビ | Sinomicrurus macclellandi iwasakii | VU |
| 第4次 2019 | イワサキワモンベニヘビ | Sinomicrurus macclellandi iwasakii | VU |
| 第4次 2018 | イワサキワモンベニヘビ | Sinomicrurus macclellandi iwasakii | VU |
| 第4次 2017 | イワサキワモンベニヘビ | Sinomicrurus macclellandi iwasakii | VU |
| 第4次 2015 | イワサキワモンベニヘビ | Sinomicrurus macclellandi iwasakii | VU |
| 第4次 | イワサキワモンベニヘビ | Sinomicrurus macclellandi iwasakii | VU |
| 第3次 | イワサキワモンベニヘビ | Sinomicrurus macclellandi iwasakii | VU |
| 第2次 | イワサキワモンベニヘビ | Hemibungarus macclellandi iwasakii | NT |
| 第1次 | イワサキワモンベニヘビ | Calliophis macclellandii iwasakii | R |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【沖縄県】準絶滅危惧(NT)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
指定なし
5. 参考⽂献
Castoe, T. A., E. N. Smith, R. M. Brown, and C. L. Parkinson, 2007. Higher-level phylogeny of Asian and American coralsnakes, their placement within the Elapidae (Squamata), and the systematic affinities of the enigmatic Asian coralsnake Hemibungarus calligaster (Wiegmann, 1834). Zool. J. Linn. Soc., 151: 809–831. 千木良芳範,2005.イワサキワモンベニヘビ.改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(動物編)-レッドデータおきなわ-,pp. 127.沖縄県文化環境部自然保護課,那覇. Maki, M., 1935. A new poisonous snake (Calliophis iwasakii) from Loo-Choo. Transact. Nat. Hist. Soc. Formosa, 25: 216–219. Ota, H., 1991. Systematics and biogeography of terrestrial reptiles of Taiwan. In: Y. S. Lin and K. -H. Chang (eds.), Proceedings of the First International Symposium on Wildlife Conservation, pp. 47–112. Council of Agriculture, Taipei, ROC. Slowinski, J. B., J. Boundy, and R. Lawson, 2001. The phylogenetic relationships of Asian coral snakes (Elapidae: Calliophis and Maticora) based on morphological and molecular characters. Herpetologica, 57(2): 233–245. Smart, U, M. J. Ingrasci, G. C. Sarker, H. Lalremsanga, R. W. Murphy, H. Ota, M-C. Tu, Y. Shouche, N. L. Orlov, and E. N. Smith. 2021. A comprehensive appraisal of evolutionary diversity in venomous Asian coralsnakes of the genus Sinomicrurus (Serpentes: Elapidae) using Bayesian coalescent inference and supervised machine learning. J. Zool. Syst. Evol. Res., 59(8): 2212–2277. 高良鉄夫,1962.琉球列島における陸棲蛇類の研究.琉球大学農家政工学部学術報告,9: 1–202,22pls.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Sinomicrurus iwasakii has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Sinomicrurus iwasakii is listed as VU under criteria D2.
D2. Population with a very restricted area of occupancy (typically less than 20 km²) or number of locations (typically five or fewer) such that it is prone to the effects of human activities or stochastic events within a very short time period in an uncertain future, and is thus capable of becoming Critically Endangered or even Extinct in a very short time period.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Low-altitude area】Forest 【Terrestrial/Freshwater area_Plain】Forest |
|---|---|
| Threat types | Logging and wood harvesting, Land development, Predation (by alien species), Competition (with alien species) |
| Law designation status for conservation |
| 執筆者: | 太田英利(兵庫県立大学) |
| Author: | Hidetoshi Ota |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月
©山本拓海(東邦大学)