評価分科会名: 爬虫類・両生類分科会
1. 判定対象種情報 日本固有
| ⽬名 | 有鱗目 | 科名 | トカゲ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Squamata | Family | Scincidae |
| 和名 | オキナワトカゲ | ||
| 学名 | Plestiodon marginatus Hallowell, 1861 | ||
2. カテゴリー判定: 準絶滅危惧(NT) 判定基準: ①
| 基準A: ― | 基準B: VU未満 | 基準C: ― | 基準D: ― | 基準E: ― |
生息状況の推移から見て、種の存続への圧迫が強まっていると判断されるもの。 具体的には、分布域の一部において、次の傾向が顕著であり、今後さらに進行するおそれがあるもの。 ①個体数が減少している。 【判断理由】 沖縄島のマングース拡散防止柵の南側での本種の減少は著しく、このままでは個体群が消滅してしまう可能性がある。また、中之島でも移入されたイタチの影響により、集落の近辺にしか生息しない可能性が高い。このうち沖縄島の名護市以南の地域は本種の潜在的生息地面積の半分以上を占めるが、その範囲の大多数の個体群が壊滅的な状況であることは重く受け止められるべきである。
3. 概要
沖縄諸島のほぼ全域と奄美諸島の与論島、沖永良部島、トカラ諸島の中之島に分布する。海岸植生や集落の周辺といった開けた環境を好み、主に昆虫やクモ類、ミミズなどの無脊椎動物を食べる。沖縄島の名護以南、座間味島、阿嘉島、慶留間島など外来食肉類がいる地域で生息密度が著しく低くなっており、地域個体群の存続が危ぶまれる。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
頭胴長60~90 mm。胴部の体鱗は24〜28列で26列のことが多い。後鼻板はない。幼体の背面には、暗褐色の地に5本の黄白縦条が走る。このうち背中寄りの3本が尾の中央か、それより尾端側まで伸びる点でオオシマトカゲと区別できるが、与論島、沖永良部島、中之島の個体群では、その範囲は基部寄りの1/3程度に留まる。与論島、沖永良部島の個体群は幼体時の尾が鮮やかな青色であることでオオシマトカゲと区別できる。また粟国島の個体群では幼体時の尾の青味がより鮮やかで、背面の縦条は尾の基部付近で終わる。
【生活史】
交尾期は3月下旬~5月下旬で、メスは5月中旬~下旬頃、石の下などに空所を造り5~8個の卵を産む。産卵後、メスはそのまま巣に留まり、卵が孵るまで転卵や卵殻表面の汚れの除去など、卵の世話をする。孵化幼体は7月の初め頃に現れ、雌雄ともに通常2年目の春から生殖に参加する。昆虫、クモ、ミミズなどの無脊椎動物を食べる。
【生息・生育環境】
海岸植生帯のなかやその周辺、集落の近辺や墓地、草地など、開けた環境に多い。自然度の高い森林内には生息せず、その出現は林道沿いなどに限られる。砂地や土手、石灰岩の岩場などでよく見かける。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_低標高地】森林,田地・畑地,耕作放棄地 【陸域_平地部 海岸部】森林,草地,田地・畑地,耕作放棄地,住宅地,市街緑地,砂地・礫地,砂浜・礫浜 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (2)里地里山・田園地域,(5)沿岸域,(7)島嶼地域 |
【分布域】
沖縄諸島と奄美諸島の与論島、沖永良部島、トカラ諸島の中之島に分布する。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
沖縄島では1980年代までは那覇市近郊なども含め、多くの場所で見られたが、その後減少し、現在、名護市以南の地域で本種が確認できる地点はわずかしかない。那覇や名護では、周囲を市街地に囲まれた一部の緑地に局在する状況となっている。周辺離島においては、海岸植生付近や集落の周辺などでしばしば高い密度で生息しているが、座間味島や中之島など、イタチが定着している島では明らかに数が少ない。
【生息・生育地の現況】
やんばるや離島では、集落や墓地、海岸風衝林など、比較的保存されやすい環境に多いため、生息地の多くが失われているとはいえない。しかし、畑地の減少や海岸の開発、道路整備などに伴い、好適な生息環境は徐々に減っている。沖縄島の名護以南の地域には外来種のマングースが多く、本種にとって大きな脅威となっている。また、同じく外来種のイタチが座間味島、阿嘉島、慶留間島、与論島、沖永良部島、中之島におり、本種を圧迫する大きな要因となっている。
【個体数の現況】
具体的な数字は不明であるが、イタチもしくはマングースがいる地域では明らかに数が少なく、特に沖縄島の名護市以南の地域では小さな個体群がそれぞれ孤立している状態に陥っていて、本来あるべきメタ個体群構造は崩壊しかかっていると考えられる。
存続を脅かす要因
イタチとマングースによる食害が、本種の存続を脅かす最大の要因と考えられる。沖縄島の北部に設置されたマングース北上防止策の北側ではマングースの密度が低い状態になっており、そこではオキナワトカゲが多く見つかるという調査結果がある。また、本種と近縁なトカゲ属の種がイタチの導入によって壊滅的になっている事例も知られている。このようにイタチとマングースが本種にとって大きな脅威となっていることはほぼ間違いない。
| 要因の区分 | (過去) | 捕食(外来種による) |
|---|---|---|
| (現在) | 捕食(外来種による) |
特記事項
沖縄島の中部を境に遺伝的な差異がみられ、離島のものもそれらの2群のどちらかに振り分けられる。中之島の集団は、沖縄島の北側の集団に近縁であることが示されている。近縁種のオオシマトカゲ(Plestiodon oshimensis)やイシガキトカゲ(Plestiodon stimpsonii)とともに南西諸島のなかで複雑な分散と多様化の歴史をもっていると考えられ、学術的に高い価値がある。また、面積がとても小さな島にも分布することから、小島嶼における集団維持や遺伝的多様性の維持機構の解明、あるいはいくつかの島でバーバートカゲと同所的に分布することから、島嶼における同属種との共存の仕組みを考えるうえでも貴重な研究対象となっている。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | オキナワトカゲ | Plestiodon marginatus | VU |
| 第4次 2019 | オキナワトカゲ | Plestiodon marginatus | VU |
| 第4次 2018 | オキナワトカゲ | Plestiodon marginatus | VU |
| 第4次 2017 | オキナワトカゲ | Plestiodon marginatus | VU |
| 第4次 2015 | オキナワトカゲ | Plestiodon marginatus marginatus | VU |
| 第4次 | オキナワトカゲ | Plestiodon marginatus marginatus | VU |
| 第3次 | オキナワトカゲ | Plestiodon marginatus marginatus | NT |
| 第2次 | ― | ― | ― |
| 第1次 | ― | ― | ― |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【鹿児島県】絶滅危惧Ⅱ類,地域個体群(消滅危惧Ⅰ類)(中之島個体群),【沖縄県】絶滅危惧Ⅱ類(VU)
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
都道府県条例指定種【鹿児島県】
5. 参考⽂献
Brandley, M., H. Ota, T. Hikida, A. Nieto Montes de Oca, M. Feria Ortiz, X. Guo, and Y. Wang, 2012. The phylogenetic systematics of blue-tailed skinks (Plestiodon) and the family Scincidae. Zool. J. Linn. Soc., 165: 163–189. Kato, J., H. Ota, and T. Hikida, 1994. Biochemical systematics of the latiscutatus species-group of the genus Eumeces (Scincidae: Reptilia) from East Asian Islands. Biochem. Syst. Ecol., 22: 491–500. Kurita, K., and T. Hikida, 2014. Divergence and long-distance overseas dispersals of island populations of the Ryukyu five-lined skink, Plestiodon marginatus (Scincidae: Squamata), in the Ryukyu Archipelago, Japan, as revealed by mitochondrial DNA phylogeography. Zool. Sci., 31: 187–194 栗田和紀・角田羊平,2010.沖縄島におけるオキナワトカゲの分布状況.Akamata,21: 39–43. Kurita, K., T. Hikida, M. Toda, 2017. An investigation for population maintenance mechanism in a miniature garden: Genetic connectivity or independence of small islet populations of the Ryukyu five-lined skink. J. Hered., 105: 773–783. 岡本卓・栗田和紀,2021.オキナワトカゲ.日本爬虫両棲類学会(編),新日本両生爬虫類図鑑,pp. 137.サンライズ出版,彦根. 笹井隆秀・大嶋大地,2010.座間味島におけるオキナワトカゲの再発見.Akamata,21: 33–35. 当山昌直,2005.オキナワトカゲ.沖縄県文化環境部自然保護課(編),改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(動物編)-レッドデータおきなわ-,pp. 120–121.沖縄県文化環境部自然保護課,那覇.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Plestiodon marginatus has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Plestiodon marginatus is listed as NT under criteria ①.
The species that is considered to be under increasing pressure for survival, as indicated by habitat status trends, specifically with the following notable tendencies in parts of its distribution that are likely to continue. ①The number of individuals is decreasing.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Low-altitude area】Forest, Farmland, Abandoned farmland 【Terrestrial/Freshwater area_Plain, Beach】Forest, Grassland, Farmland, Abandoned farmland, Residential area, Urban green area, Sandy area/Gravelly area, Sandy beach/Pebble beach |
|---|---|
| Threat types | Predation (by alien species) |
| Law designation status for conservation | Prefectural Ordinance-Designated Species【Kagoshima】. |
| 執筆者: | 戸田守(琉球大学) |
| Author: | Mamoru Toda |
| 協力者: |
公開年月:2026年3月