評価分科会名: 爬虫類・両生類分科会
1. 判定対象種情報 日本固有
| ⽬名 | 有鱗目 | 科名 | カナヘビ科 |
|---|---|---|---|
| Order | Squamata | Family | Lacertidae |
| 和名 | アオカナヘビ | ||
| 学名 | Takydromus smaragdinus Boulenger, 1887 | ||
2. カテゴリー判定: 準絶滅危惧(NT) 判定基準: ①
| 基準A: VU未満 | 基準B: VU未満 | 基準C: VU未満 | 基準D: VU未満 | 基準E: ― |
生息状況の推移から見て、種の存続への圧迫が強まっていると判断されるもの。 具体的には、分布域の一部において、次の傾向が顕著であり、今後さらに進行するおそれがあるもの。 ①個体数が減少している。 【判断理由】 徳之島、沖永良部島、沖縄島、渡嘉敷島において明らかに個体数が減少しているか、減少していることの聞き取りがある。また、伊江島については近年の生息確認が得られていない。奄美大島においても調査記録のある地点での明らかな個体数減少がみられる。
3. 概要
沖縄諸島と奄美諸島等に分布する日本固有種。細長い体型と長い尾をもち、体色は緑色系。草むらや藪を生息場所とし、昼行性で日なたで活動する。以前は、草むらで普通に見られたが、近年ほとんどの島嶼で激減している。特に、徳之島と沖永良部島では島内のほとんどの地域で確認できない状況となっており、絶滅が危惧される。要因としては、土地造成や農薬散布、移入天敵の増加が考えられるが、島によって状況は異なる。
4. 掲載種の情報
基礎情報
【形態】
体形は細長く、尾が長い。全長200~300 mm、頭胴長50~70 mm。メスは背面と体側部が若草色で頭側から腹側部まで細い白条が通る。オスは背部が緑色で、側面は帯状に褐色が入り、メスと同様頭側から腹側まで細い白条が通る。腹面は白色ないし緑がかった白色ないし黄色。尾部から腰部は茶色がかっているものが多い。徳之島個体群は、オスもメスと同様の体色である。徳之島個体群はふ化個体および成体の体サイズが他より大きい。体鱗は背部の鱗が角形でやや大きく、キール(条線)がある。腹面の鱗も角形で大きい。体側部の鱗は小さく粒状。顎下の咽頭板は3対。総排出口のわきにある鼠径孔は1対、胴部腹面の腹板は6列。
【生活史】
4~8月初旬にかけて数回、普通1回に2卵を産卵する。卵は1ヶ月ほどでふ化する。草の根元や浅い土中に産卵し、産卵後の親の世話などは行わない。縄張りなどの行動は知られていない。ふ化の翌年に成熟し繁殖する。寿命はよく分かっていないが、成熟した年の繁殖後も生存して経年的に繁殖を繰り返す。昼行性。明るい草むらと藪が混在した場所に生息し、日なたで体温調節を行って活発に活動する。地面に降りることもあるが、おもに草の上や低木の枝の上で行動する。冬眠はしないが、冬季は不活発になる。昆虫やクモなどの小節足動物をおもに補食する。
【生息・生育環境】
草地や明るい林の周辺に生息する。以前はサトウキビ畑や耕作地周辺の草むら、人家の庭にも多く生息していたが、近年はそのような環境では見られなくなりつつある。山地や丘陵の林道周辺では草むらと樹林を利用して行動する。
| 生息・生育環境区分 | 【陸域_低標高地】草地,田地・畑地,耕作放棄地 【陸域_平地部】草地,田地・畑地,耕作放棄地 |
|---|---|
| 国土地域区分 | (2)里地里山・田園地域,(7)島嶼地域 |
【分布域】
南西諸島のトカラ列島の宝島から奄美諸島、沖縄諸島にかけて分布する。
現在の生息・生育状況
【分布域の現況】
種の分布域に大きな変化はないが、各島における目撃地域や目撃数は大きく減少している。とくに徳之島では、生息が確認されない地域が拡大している。沖永良部島では近年ほとんど見られないが、2007年と2017年に標本採集をともなう本種の生息確認記録が得られており、生息が継続していることが確認されている。
【生息・生育地の現況】
徳之島では、耕作地周辺の平地部で生息が確認されない地域が拡大している。海岸に近い草むらなどでも生息が確認できる範囲は縮小している。山地の山林地域では生息が確認できるがその範囲は限定されつつある。移入天敵は知られておらず、また草むらや樹林などの植生の状況に目立った変化はないが、耕作地周辺で減少が急激に生じていることから農薬散布などの人為影響が減少要因と考えられる。沖永良部島では、1940年頃には畑周辺にも生息していたという聞き取り情報があることから以前は普通に島内で見られた可能性があるが、近年ほとんど見られなくなった。イタチの移入後に本種が減少した可能性が高い。イタチの目撃頻度は現在でも高く、イタチが減少要因である場合には、その影響は継続していると考えられる。
【個体数の現況】
沖永良部島では、本種の確認自体が限定的な情報しか得られていないために個体数の状況は不明である。しかし、研究調査での確認状況や住民の本種の認知の低さから、個体数がきわめて低密度であるか、生息する場所が限定的であることが推定できる。徳之島は、最近10年程度の期間においても生息が見られなくなった地点が増えている。林道周辺で比較的多くの個体数が見られる地点があるが、そのような地点は少ない。
存続を脅かす要因
種としては、土地開発による生息地の減少のほか、畑周辺等の草むらの環境悪化、農薬散布の影響や人為移入されたマングースやイタチといった外来捕食者の影響によって各島嶼で減少が見られている。とくに減少が著しい沖永良部島と徳之島の個体群について存続を脅かす要因の判定を行った。沖永良部島では、イタチによる捕食が要因として大きいと推定できる。徳之島では耕作地域での減少が著しく、農薬などの人為影響が大きいと推定できる。両地域とも減少要因を取り除くことができる状況にはない。
| 要因の区分 | (過去) | 圃場整備,草地開発,土地造成,農薬汚染/化学物質汚染,捕食(外来種による) |
|---|---|---|
| (現在) | 圃場整備,草地開発,土地造成,農薬汚染/化学物質汚染,捕獲・狩猟/園芸採取,捕食(外来種による) |
特記事項
特になし。
旧レッドリストカテゴリーと掲載名
| 第4次 2020 | 沖永良部島、徳之島のアオカナヘビ | Takydromus smaragdinus | LP |
| 第4次 2019 | 沖永良部島、徳之島のアオカナヘビ | Takydromus smaragdinus | LP |
| 第4次 2018 | 沖永良部島、徳之島のアオカナヘビ | Takydromus smaragdinus | LP |
| 第4次 2017 | 沖永良部島、徳之島のアオカナヘビ | Takydromus smaragdinus | LP |
| 第4次 2015 | 沖永良部島、徳之島のアオカナヘビ | Takydromus smaragdinus | LP |
| 第4次 | 沖永良部島、徳之島のアオカナヘビ | Takydromus smaragdinus | LP |
| 第3次 | 沖永良部島、徳之島のアオカナヘビ | Takydromus smaragdinus | LP |
| 第2次 | ― | ― | ― |
| 第1次 | ― | ― | ― |
都道府県レッドリストデータブック掲載状況(令和6年度末時点)
【鹿児島県】地域個体群(消滅危惧Ⅱ類)(沖永良部島・徳之島),分布特性上重要
保護に係る法令指定状況(令和7年度末時点)
指定なし
5. 参考⽂献
小林海瑠,2018.沖永良部島におけるアオカナヘビの記録と生息状況.AKAMATA,28: 29-33. 中村泰之,2008.沖永良部島におけるアオカナヘビの生息分布の標本にもとづく初記録.AKAMATA,19: 20-22. 日本爬虫両棲類学会(編),2021.新日本両生爬虫類図鑑.サンライズ出版,彦根.232pp. 竹中践,2006.沖永良部島のアオカナヘビについて.爬虫両棲類学会報,2006: 24-26. 竹中践・森口一・林聡彦,2004.奄美諸島におけるアオカナヘビの生息分布の現状(講演要旨).爬虫両棲類学会報,2004: 38 . 戸田守・高橋洋生,2002.アオカナヘビの与論島からの記録.AKAMATA,16: 25-26. 当山正直・倉本満・森田忠義・前田憲男,1989.奄美大島における両生・爬虫類の分布:南西諸島における野生生物の種の保存に不可欠な諸条件に関する研究.環境庁自然保護局(編),昭和63年度奄美大島調査報告書,pp. 163-171.環境庁自然保護局,東京.
6. アセスメントサマリー(Assessment summary)
Takydromus smaragdinus has been assessed for threatened wildlife of Japan Red List 5th edition. Takydromus smaragdinus is listed as NT under criteria ①.
The species that is considered to be under increasing pressure for survival, as indicated by habitat status trends, specifically with the following notable tendencies in parts of its distribution that are likely to continue. ①The number of individuals is decreasing.
| Habitat types | 【Terrestrial/Freshwater area_Low-altitude area】Grassland, Farmland, Abandoned farmland 【Terrestrial/Freshwater area_Plain】Grassland, Farmland, Abandoned farmland |
|---|---|
| Threat types | Field preparation, Grassland development, Land development, Pesticide/Toxic chemical pollution, Hunting and collecting animals/Gathering plants, Predation (by alien species) |
| Law designation status for conservation |
| 執筆者: | 竹中践(東海大学) |
| Author: | Sen Takenaka |
| 協力者: | 安里瞳(沖縄美ら島財団)・森口一(日本蛇族学術研究所) |
公開年月:2026年3月
©竹中践(東海大学)