いきものログ

第4次レッドリストとりまとめ時の見直しで明らかになった点について(各種分類群)

哺乳類レッドリスト見直しで明らかになった点

【1】 絶滅のおそれのある種の総数は、前回見直し(2007年)では42種でしたが、今回は34種(絶滅危惧IA類(CR)12種、絶滅危惧IB類(EN)12種、絶滅危惧Ⅱ類(VU)10種)となり、8種減少しました。哺乳類の評価対象分類群は160種であり、今回、その21%に絶滅のおそれがあることが明らかとなりました(前回は23%)。

【2】 本見直しでは、これまで絶滅危惧IA類(CR)であったニホンカワウソ(北海道亜種)、ニホンカワウソ(本州以南亜種)、及びミヤココキクガシラコウモリの3種について、生息確認調査等でも長期にわたり確認されていないことから、新たに絶滅(EX)と判断しました。

【3】 絶滅のおそれのある種の総数が減少した主な理由は、a)上記の新たな絶滅種3種が絶滅のおそれのある種から削除されたこと、b)評価対象分類群の整理(亜種の統合)によるもの(例:亜種イリオモテコキクガシラコウモリ(前回EN)と亜種ヤエヤマコキクガシラコウモリ(前回EN)が種ヤエヤマコキクガシラコウモリ(VU)に統合)、c)調査によって生息状況に関する情報量が増加したもの(例:テングコウモリ(VU→削除))であり、一概に哺乳類の生息状況が改善されたことの反映であるとはいえません。

【4】 海棲哺乳類のゼニガタアザラシとトドは、最近の調査によって個体数の増加傾向が認められることから、本見直しでは両種ともランクを下げました(ゼニガタアザラシ(EN→VU)、トド(VU→準絶滅危惧NT))。


個体数が増加傾向にあり、ランクを下げたゼニガタアザラシ(EN→VU)とトド(VU→NT)

鳥類レッドリスト見直しで明らかになった点

【1】 絶滅のおそれのある種の総数は、前回見直し(2006年)では92種でしたが、今回は97種(絶滅危惧IA類(CR)23種、絶滅危惧IB類(EN)31種、絶滅危惧Ⅱ類(VU)43種)となり5種増加しました。鳥類の評価対象分類群は約700種であり、今回、その約14%に絶滅のおそれがあることが明らかとなりました(前回は13%)。

【2】 本見直しでは、これまで絶滅危惧IA類(CR)であったダイトウノスリについて、生息確認調査等でも長期にわたり確認されていないことから、新たに絶滅(EX)と判断しました。

【3】 今回の見直しで絶滅のおそれのある種にランクを上げた種(新規に選定した種、情報不足(DD)から変更した種を除く)は、オガサワラカワラヒワ(EN→CR)、オオヨシゴイ(EN→CR)、オーストンヤマガラ(VU→EN)など9種で、これらは生息環境のさらなる悪化や、知見の蓄積によってさらに厳しい生息状況が明らかになったことなどによるものです。

【4】 これに対して、今回絶滅のおそれのある種からランクを下げた種(情報不足(DD)に変更した種を除く)は、クロツラヘラサギ(CR→EN)、オジロワシ(EN→VU)、ツクシガモ(EN→VU)など8種で、これらは知見の蓄積によって個体数の回復が続いていることが分かったことや、新たな調査で多くの個体数の生息が明らかになったことなどによるものです。これらの現状から、さらなる鳥類の保全努力が必要とされているといえます。


知見の蓄積により個体数の回復が見られ、ランクを下げた3種
(左からクロツラヘラサギ(CR→EN)、オジロワシ(EN→VU)、ツクシガモ(EN→VU))

【5】 シギ・チドリ類について、環境省などが実施してきたモニタリング調査の結果により個体数の減少傾向が明らかになったシロチドリ、ツルシギ等の5種を新たに絶滅危惧Ⅱ類(VU)に選定しました。

【6】トキは、佐渡島での野生復帰が進められ、今年の春に初めて野外の繁殖に成功しましたが、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストカテゴリー基準では下位のカテゴリー(ランク)への変更には5年以上の状況の継続が必要であるとされていることを参考とし、前回と同じ野生絶滅(EW)としました。


平成24年の繁殖期において、
36年ぶりに野生下でヒナが誕生したトキ(EW)

爬虫類レッドリスト見直しで明らかになった点

【1】絶滅のおそれのある種の総数は、前回見直し(2006年)では31種でしたが、今回は36種(絶滅危惧ⅠA類(CR)4種、絶滅危惧ⅠB類(EN)9種、絶滅危惧Ⅱ類(VU)23種)に増加しました。爬虫類の評価対象種は98種であり、今回、その37%に絶滅のおそれがあることが明らかとなりました(前回は31%)。
また、今回ランクを上げた種及び新たにリストに掲載された種は10種であったが、その一方でランクを下げた種が1種もなかったことから、我が国の爬虫類のおかれている状況は依然として改善されていないことが示されました。

【2】南西諸島に生息するオキナワトカゲ(NT→VU)、ミヤコカナヘビ(EN→CR)、タシロヤモリ(DD→VU)、ヤクヤモリ(新規VU)、ヤエヤマタカチホヘビ(NT→VU)等の多くの種のランクを上げました。 これらの種では、人為的な生息環境の改変や、インドクジャクやマングースなどの外来生物による捕食などの影響等、生息状況の悪化が懸念されています。

【3】江戸時代から「銭亀」として人々に親しまれてきたニホンイシガメについて、新たな知見の蓄積により絶滅のおそれが高まっていると判断され、情報不足(DD)から準絶滅危惧(NT)にランクを変更しました。


生息状況の悪化が懸念される
ミヤコカナヘビ(EN→CR)


絶滅のおそれが高まっている
ニホンイシガメ(DD→NT)


両生類レッドリスト見直しで明らかになった点

【1】絶滅のおそれのある種の総数は、前回見直し(2006年)では21種でしたが、今回の見直しでは22種(絶滅危惧ⅠA類(CR)1種、絶滅危惧ⅠB類(EN)10種、絶滅危惧Ⅱ類(VU)11種)となりました。両生類の評価対象種は66種であり、今回、その33%に絶滅のおそれがあることが明らかとなりました(前回は34%)。
また、今回新たにリストに掲載された種には、前回見直し以降に新たに別種として分けられ評価された種(オキナワイシカワガエル(EN)、アマミイシカワガエル(EN)、イシヅチサンショウウオ(NT)、コガタブチサンショウウオ(NT)等)が多く含まれています。


新たに別種として評価された3種
(左からアマミイシカワガエル(EN)、イシヅチサンショウウオ(NT)、コガタブチサンショウウオ(NT))

【2】田んぼや水路に生息し、一般的にもなじみ深いトノサマガエルを新たに準絶滅危惧(NT)として選定しました。このことから、日本に広く分布する両生類においても絶滅のおそれが高まっていることが明らかとなりました。


新たに準絶滅危惧(NT)に選定されたトノサマガエル

【3】島しょの渓流域に生息するオキタゴガエル及びヤクシマタゴガエルは、もともと限られた地域にのみ分布し生息に適した環境も限られている種ですが、近年ではその生息地周辺の開発や観光地化が進み環境悪化が懸念されており、新たに準絶滅危惧(NT)に選定しました。


島しょ渓流域に生息するオキタゴガエル(左、新規NT)、ヤクシマタゴガエル(右、新規NT)

汽水・淡水魚類レッドリスト見直しで明らかになった点

【1】絶滅のおそれのある種の総数は、前回見直し(2007年)では144種であったが、今回は167種(絶滅危惧IA類(CR)69種、絶滅危惧IB類(EN)54種、絶滅危惧Ⅱ類(VU)44種)となり、23種増加した。汽水・淡水魚類の評価対象種は約400種であり、日本に生息する汽水・淡水魚類の約42%に絶滅のおそれがあることが明らかとなった(前回は約36%)。

【2】すでに絶滅(EX)と考えられていたクニマスについて、2010年に山梨県西湖において生息していることが報告された。このことを受け評価の見直しを行った。汽水・淡水魚類分科会では、一部の委員からこの集団を「クニマス」と見なすことに対して異論も出されたが、その後明らかにされた形態や遺伝子解析等の科学的事実から総合的に判断し、クニマスであると結論づけた。本種は本来の生息地である秋田県田沢湖では絶滅し、移殖地の西湖で再発見されたため、「過去の分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ生存している場合は野生絶滅」とするIUCNの基準を参考に「環境省レッドリストカテゴリーと判定基準(2012)」を修正し、今回の見直しでは野生絶滅(EW)に選定した。

【3】これまで生態に不明な点が多いことから情報不足(DD)としていたニホンウナギ(旧掲載和名:ウナギ)について、最近になり生態に関する新知見が明らかにされたことから、改めて漁獲量データに基づき評価を行い、絶滅危惧IB類(EN)と判断した。

【4】今回の見直しでは分類研究の進展により、前回レッドリストに掲載していた種の特定の集団が別種・別亜種に細分化され評価される事例が多く認められた。  例えば、前回見直しではアカヒレタビラ(EN)として評価されていた集団が最新の知見に基づき3亜種に分けられ、今回の見直しでは、それぞれが個別に評価された(アカヒレタビラ(関東・東北地方の太平洋側に分布(新規EN))、キタノアカヒレタビラ(信越・東北地方の日本海側に分布(新規EN))、ミナミアカヒレタビラ(北陸・山陰地方に分布(新規CR))。


山梨県西湖で再発見され
野生絶滅にランクを変更したクニマス(EX→EW)


生態に関する知見が集まり、改めて漁獲量データを
評価したことで絶滅危惧ⅠB類と判定された
ニホンウナギ(DD→EN)


昆虫類レッドリスト見直しで明らかになった点

【1】 絶滅のおそれのある種の総数は、前回見直し(2007年)では239種でしたが、今回は358種(絶滅危惧ⅠA類※(CR)65種・絶滅危惧ⅠB類(EN)106種・絶滅危惧Ⅱ類(VU)187種)となり、119種増加しました。今回の見直しでは、特にガ類や甲虫類等の評価が進んだことにより、336種が新たにリストに掲載され、そのうち91種を新たに絶滅のおそれのある種に選定しました。
我が国の昆虫類のおかれている状況が依然として改善されていないことが示されているほか、これまで情報が不足していた種について生息状況等の新たな知見が蓄積されたことで評価が進んだといえます。
※今回の見直しでは、昆虫類についても絶滅危惧Ⅰ類をさらにⅠA類(CR)とⅠB類(EN)に区分して評価を行いました(前回は、絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)としてまとめて評価)。

【2】 かつては本州(関東以西)~南西諸島(トカラ中之島)にかけて広く分布していたゲンゴロウ科のスジゲンゴロウが、生息確認調査等でも長期にわたり確認されていないことから、新たに絶滅(EX)と判断しました。

【3】 草原や河川敷に生息する種でランクを上げたものが多く(例:ツマグロキチョウVU→EN)、また湿地や草原性のゴミムシ類、ガ類でも多くの種を新たにリストに掲載しました。これらのことから、平地の森林以外の生息環境(草原・河川敷・湿地など)がいずれも悪化していることが指摘されました。

【4】 水生昆虫類においてランクを上げた種、新規に選定した種が多く深刻な状況にあることが明らかになりました。中でもゲンゴロウ類やミズスマシ類等の水生甲虫類において、特に多くの種を選定しました(例:ゲンゴロウNT→VU)。これらが選定された理由として、里地里山における水田・ため池等の身近な水辺環境の変化や減少による生息環境の悪化、オオクチバスやアメリカザリガニ等の外来生物による捕食や植生破壊、また乱獲による影響が指摘されました。

【5】 小笠原諸島固有のオガサワライナゴ(新規CR)やオガサワラセイボウ(VU→CR)等の多くの種においてランクが上がり、小笠原諸島の昆虫類が依然として深刻な状況にあることが明らかになりました。この要因として、グリーンアノール、オオヒキガエル等の外来生物による捕食や、アカギ等の外来樹の侵入による生息環境の悪化が指摘されました。


新たに絶滅(EX)と判断された
スジゲンゴロウ(CR+EN→EX)


生息環境の悪化等でランクを上げた
ツマグロキチョウ(VU→EN)


水辺環境の変化や減少により絶滅危惧Ⅱ類に選定されたゲンゴロウ(NT→VU)


貝類レッドリスト見直しで明らかになった点

【1】 絶滅のおそれのある種の総数は、前回見直し(2007年)では377種でしたが、今回は563種(絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)244種、絶滅危惧Ⅱ類(VU)319種)となり、186種増加しました。これらの種の多くは、前回まで評価対象としてきた陸域及び淡水域から汽水域に生息する種に加えて、今回の見直しから内湾の干潟等に生息する種も評価の対象としたことに伴い、新たに掲載されたものです(内湾の干潟等に生息する371種を新たにリストに掲載し、そのうち170種を新たに絶滅のおそれのある種に選定)。

【2】 今回評価の対象とした内湾の干潟等に生息する種のうち、リュウキュウカワザンショウを新たに絶滅(EX)と判断しました。本種はかつて沖縄本島、与那国島に分布し、過去に採集された複数の標本が存在していますが、その後の調査等ではまったく生息が確認されていないことから、絶滅と判断しました。

【3】 2011年6月に世界自然遺産に登録された小笠原諸島については、近年、陸産貝類の調査が進められた結果、外来生物による捕食の影響で小笠原固有の陸産貝類が危機的な状況にあることが明らかとなり、カタマイマイ属のカタマイマイやアニジマカタマイマイ(共にVU→CR+EN)をはじめ、多くの陸産貝類の種のランクを上げました。一方、今まで絶滅(EX)とされていた小笠原固有の陸産貝類のうちの4種(ヒラセヤマキサゴ、ハゲヨシワラヤマキサゴ、キバオカチグサ、ナカタエンザガイ)が再発見され、それぞれ絶滅(EX)から絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)にランクを変更しました。

【4】 古くから日本人に親しまれ、食用として利用されてきた種(アゲマキ(新規CR+EN)、ハマグリ(新規VU)、ミルクイ(新規VU)等)が新たに絶滅のおそれのある種として選定されるなど、人間生活に直結した干潟に生息する種の多くが危機に瀕していることが示されました。また、干潟に生息する種は、地理的にみると九州や奄美以南に分布する種が多く選定され、これらの地域での存続が深刻な状況であるこ


外来生物による捕食の影響により
ランクが上がったカタマイマイ(VU→CR+EN)


新規に絶滅危惧Ⅱ類(VU)に選定された
ハマグリ


その他無脊椎動物レッドリスト見直しで明らかになった点

【1】 絶滅のおそれのある種の総数は、前回見直し(2006年)では56種でしたが、今回は61種(絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)20種、絶滅危惧Ⅱ類(VU)41種)となり、5種増加しました。これらは寄生性の種(例:クロウサギワルヒツツガムシ(新規CR+EN))と、南西諸島のエビ・カニ類を新たに選定したことによるものです。一方、新たな生息地が発見されたこと等により3種のランクを準絶滅危惧(NT)に下げました。これらは知見の蓄積が進んだ結果といえます。

【2】 南西諸島に生息するカクレサワガニ(新規CR+EN)やトカシキミナミサワガニ(新規VU)など計7種を新たに絶滅のおそれのある種に選定し、南西諸島に生息するエビ・カニ類の多くが危機的な状況にあることが明らかになりました。


新たに絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)に選定された、
南西諸島に生息するカクレサワガニ

植物Ⅰ(維管束植物)レッドリスト見直しで明らかになった点

【1】絶滅のおそれのある種の総数は、前回見直し(2007年)では1690種だったが、今回は1779種(絶滅危惧IA類(CR)519種、絶滅危惧IB類(EN)519種、絶滅危惧Ⅱ類(VU)741種)となり、89種増加しました。これらの要因は、シカの食害によるものや、湿地や草地の植生遷移が進み生育環境が変化したものが主です。


絶滅状態と推定される絶滅危惧ⅠA類(CR)の2種
(左がシンチクヒメハギ、右がタチミゾカクシ)

【2】本見直しでは、コバヤシカナワラビ(前回CR)、ツクシサカネラン(前回CR)の2種が新たに絶滅(EX)と判定されました。一方、これまで絶滅(EX)とされていたシビイタチシダ、ハイミミガタシダの2種は、栽培下での生育が判明し、野生絶滅(EW)に変更しました。また、これまで絶滅(EX)とされていたタイヨウシダは、野生個体群が再発見されたことから、絶滅危惧IA類(CR)に変更しました。

【3】絶滅危惧IA類(CR)と評価された種のうち、今回の見直しに係る現地調査において、過去に知られていた生育地から絶滅又は未発見の報告のみしか得られておらず、ほぼ絶滅状態と推定される種が、15種ありました(種名は以下のとおり:キクバイズハハコ、ツツイイワヘゴ、シンチクヒメハギ、ヒュウガヒロハテンナンショウ、ヤチシャジン、オオバナオオヤマサギソウ、タチミゾカクシ、ニッコウコウモリ、ハイルリソウ、ヒナノボンボリ、ヌマスゲ、クモマキンポウゲ、センジョウスゲ、トゲヤマイヌワラビ、ヒナリンドウ)。特にツツイイワヘゴは、わずかに残された個体群にもシカの食害が及び、現在は確認できなくなっており、シカ食害を防ぐ対応が早急に必要であると指摘されました。

【4】シカの食害により、屋久島のほか西日本を中心とした地域で多くの種が影響を受けていることが明らかになりました。ランクを上げた種としては、テバコワラビ(NT→VU)、ウバタケニンジン(VU→EN)がありました。また、ヒロハナライシダ(新規EN)、ツクシトウヒレン(新規EN)、ナンゴククガイソウ(新規VU)などを、新たに絶滅のおそれのある種に選定しました。

【5】減少要因として最も多く挙げられたのは自然遷移であり、湿地や草地の植生遷移を中心として多くの種が影響を受けていることが明らかになりました。ランクを上げた種としては、ノカラマツ(NT→VU)、エンシュウツリフネソウ(VU→EN)、ミズスギナ(EN→CR)、ホソバハナウド(EN→CR)、アキノハハコグサ(VU→EN)などがありました。また、ウゼンヒメアザミ(新規CR)、イヨクジャク(新規EN)、サナギイチゴ(新規VU)などを、新たに絶滅のおそれのある種に選定しました。

【6】保全のための努力がなされた結果、絶滅のおそれが低下したと判断されランクを下げた種として、小笠原諸島のウラジロコムラサキが挙げられます。前回リストでは絶滅危惧IA類(CR)でしたが、小笠原諸島でのノヤギ駆除の取組によって野生個体群が回復したことから、本見直しでは絶滅危惧IB類(EN)にランクを下げました。


ノヤギ駆除の取り組みにより野生個体群の回復が
見られたウラジロコムラサキ(CR→EN)

【7】新たな知見の蓄積により、絶滅のおそれがなくなったと判断した種は、ミヤコミズ(前回VU→削除)、トサチャルメルソウ(前回VU→削除)、オオニガナ(前回NT→削除)、リュウキュウクロウメモドキ(前回NT→削除)の4種でした。これらの種は、減少する傾向になく、個体数も十分大きいことが分かったため、リストから削除しました。

植物Ⅱ(維管束植物以外)レッドリスト見直しで明らかになった点

【1】絶滅のおそれのある種の総数は、前回見直し(2007年)では463種でしたが、今回は480種(絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)313種、絶滅危惧Ⅱ類(VU)167種)となり、17種増加しました。これらの種の生育状況の悪化が進んでいることが明らかとなった一方で、蘚苔類、藻類、地衣類、菌類のすべてにおいて1種ずつ、絶滅したと思われていた種が再発見され、それぞれ絶滅(EX)から絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)にランクを変更しました。

【2】蘚苔類では、絶滅のおそれのある種は229種から241種に増加しましたが、これは主に知見の蓄積が進んだことによるものです。また、イリオモテウロコゼニゴケ等の12種を絶滅危惧Ⅱ類(VU)から絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)へランクを上げました。

【3】藻類では、絶滅のおそれのある種は110種から116種に増加しました。9種を新たにリストに掲載し、うち2種を絶滅のおそれのある種に選定しました。また、特に車軸藻類(形態が種子植物の水草に似た、シャジクモ類やフラスコモ類等の主に湖沼やため池等に生育する種)においては深刻な状況が続いていることが確認され、生育地の情報が蓄積されてきた4種のランクを変更しました(例:ジュズフサフラスコモ(DD→CR+EN))。

【4】地衣類では、絶滅のおそれのある種数は前回見直し時の60種から61種となり、全体として大きな種数の変化はありませんでした。しかし、絶滅したと思われていたコバノシロツノゴケ(EX→CR+EN)が再発見されるなど、新たな分布情報が得られた3種のランクを変更し(例:ナガヒゲサルオガセ(DD→VU))、さらに1種を新たにリストに掲載しました(ナガサルオガセ(新規NT))。


再発見されたコバノシロツノゴケ(EX→CR+EN)

【5】菌類では、絶滅のおそれのある種数は前回見直し時の64種から62種に減少しました。これらは、特に基準標本調査に基づいた研究結果を取り入れ、生物学的な実体が不明瞭と考えられた6種をリストから削除したことが影響しています。また、全国の博物館関連施設の協力を得て各地の標本情報と現地調査に基づく標本検討を行った結果、新規分布地が明らかになるなどの情報が得られた5種についてはランクを下げました。